書名「ピエロがいる街」
著者 横関大 出版社 講談社(講談社文庫) 出版年 2021
電車の中で読む本を探すために書店に入り、いろいろ物色していたなかで、ピエロという言葉が目に入り、購入したもの。作家のこともまったく知識がなかったが、本自体はわりと目立つところに、しかもビニールでしっかり中が見れないようになっていた。本が出たのは2017年、文庫になったのも3年前なのにこの扱いは、どうやら最近この著者の作品がテレビ化(ルパンの娘)されたからのようだ。
ピエロものはいろいろあるので、正直まったく期待してなく、一応読んでおくかぐらいの気持ちだったが、なかなか面白かった。なによりもタイトルだけでなく、ピエロがきちんと主人公になっていて、しかもいい奴だったのが良かった。古くは、スティーブ・キングの「IT」、そしてなにより「ジョーカー」(続編がカンヌだかベネチアの映画祭に出品されたとのこと、これはこれで楽しみ)により、ピエロは怖い奴というイメージが定着されそうな中、この著者はいいやつにしている、それも底抜けのいい奴、人のためになんでもやろう、自分の故郷である街のために自分を犠牲にしてまで、尽くそうという男に描かれているのに、限りなく共感をもってしまった。ストーリー自体も起伏にとみ、物語としても楽しく読めた。最後のどんでん返し(もちろんネタばれはしないが)には正直びっくりしてしまった。エピローグもとても良かったと思う。
人助けの本というのはなかなかいいものだと改めて思った。主人公のピエロはかつてお父さんが大道芸でクラウンを演じていたようだが、著者は子供の頃もしかしたら大道芸でクラウンを見て、とても楽しいという思い出があったのではないだろうかなどと思ってしまった。
仙台から常磐線特急ひたちで読んだのだが、一気に読み、水戸到着前には読了してしまった。それだけ面白い本だった。