投稿者：鈴木小太郎 投稿日：2016年 2月13日(土)10時39分16秒
地方公共団体が出している市町村史の類は、私の印象では1960年代くらいまでは本当に玉石混淆で、大学できちんと歴史学を学んでいない地方史家、あるいは好事家みたいな人が書いているのも結構ありますね。
しかし、1980年代にもなれば大学院を出た歴史学の専門研究者が執筆するのが当たり前になっているはずですが、1987年の『富山市史 通史<下巻>』の場合、ちょっと微妙な味わいがありますね。
ま、事実関係の確認のため、もう少し同書を利用させてもらうことにします。（ｐ85以下）
さて、合寺令の布告を受け、「新しい真宗合併所主事で、常楽寺塔中明徳寺住職であった林龍音」は、「北陸道・奥羽門末教諭執事」の京都常楽台に事情を報告します。
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先の閏十月二十九日付書状が京都常楽台に届くと、西本願寺は十一月十九日、東京築地本願寺で諸宗同徳会盟の臨時会を開いて政府への嘆願を決し、十二月富山の事態容易ならずとして、真宗西派佐田介石・同東派松本厳護が富山に派遣され藩庁と掛け合う。
これらが漸次功を奏し、四年五月左の沙汰（前掲「旧富山藩管内寺院合併諸達等」）が藩に下った。
富山藩
先般その藩、各宗の寺院合併におよび候については、すこぶる下情怨屈のおもむきあい聞こえ、不都合のことにつき、さらに穏当の所置かた取り調べ、伺い出づべき事
辛未五月八日 太政官
東本願寺
別紙のとおり富山藩へ御沙汰あいなり候条、そのむね門末どもえ教諭いたすべき事
辛未五月八日 太政官
これにつき、「同時に藩主は謹慎を命ぜられ、富山藩のろうばい全く言語に絶するものがあった」（「富山藩の合寺と香岳院」一三頁）とする。
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ということで、合寺令の布告から約半年後、太政官が富山藩を譴責する訳ですが、これも別に合寺を取り消すのではなく、もっと穏当な処置をせよ、と命じているだけですね。
そして、
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林太仲は事後処理を立石大参事等にゆだね、富山を去るが、上京後奈良県視学、文部省大視学を経て、明治六年（一八七三）官界を退き、大正五年（一九一六）七十六歳で没する。
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のだそうですが、官界を退いてから死ぬまで43年間の空白はちょっと不親切で、もう少し調べて書いてほしいような感じもします。
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明治四年七月十四日廃藩置県、八月神祇官の神祇省への格下げに勢いづく真宗両派は、東派専琳寺渡辺香岳（法秀）を総代に選び、合寺の解除を上京嘆願することになった。彼は七十歳の老齢で、合寺の年、前住職に先立たれ二重の不運にあうが、孫の現住職華岳と水杯をくみかわし、十二月十六日決然、富山を出立、嘆願の途に上った。
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ここで渡辺香岳のエピソードが妙に詳細に記されますが、どーでもいいような話にも思えます。
もしかしたら執筆者はこの人のご親族なのでしょうか。
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新時代の波は急速に進み、同五年三月十日、横浜に日本最初のプロテスタント（キリスト教新教）の教会、日本基督教会が創立する。合寺も空洞化し、同年十月二十七日、檀家七〇戸以上を有する寺院に限り再興を許す第一次解寺が実現した。
同六年二月二十四日「切支丹禁制、邪宗門禁止」の高札も撤去され、日本の新旧キリスト教は新しい発展の時代を迎え、浦上キリシタンもようやく釈放される。
同九年、檀家七〇戸未満の寺院も再興を許され、翌十年合寺前スキャンダルありとして廃寺とされた専福寺も再興の列に加わる。
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「浦上キリシタンもようやく釈放される」とありますが、加賀藩とその支藩の大聖寺・富山藩には浦上四番崩れのキリシタンの一部が配流され、浄土真宗は藩から委嘱されてその教諭にあたっていたんですね。
浄土真宗があまり好きではない私にとって、他の宗教を弾圧する側だった浄土真宗が、合寺令によって一転弾圧される側に回ってしまったところも若干笑えるポイントなのですが、上記部分はまるで他人事のような書き方ですね。
富山藩に配流された浦上キリシタンがいつまで富山にいたのか、後で確認してみます。
地方公共団体が出している市町村史の類は、私の印象では1960年代くらいまでは本当に玉石混淆で、大学できちんと歴史学を学んでいない地方史家、あるいは好事家みたいな人が書いているのも結構ありますね。
しかし、1980年代にもなれば大学院を出た歴史学の専門研究者が執筆するのが当たり前になっているはずですが、1987年の『富山市史 通史<下巻>』の場合、ちょっと微妙な味わいがありますね。
ま、事実関係の確認のため、もう少し同書を利用させてもらうことにします。（ｐ85以下）
さて、合寺令の布告を受け、「新しい真宗合併所主事で、常楽寺塔中明徳寺住職であった林龍音」は、「北陸道・奥羽門末教諭執事」の京都常楽台に事情を報告します。
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先の閏十月二十九日付書状が京都常楽台に届くと、西本願寺は十一月十九日、東京築地本願寺で諸宗同徳会盟の臨時会を開いて政府への嘆願を決し、十二月富山の事態容易ならずとして、真宗西派佐田介石・同東派松本厳護が富山に派遣され藩庁と掛け合う。
これらが漸次功を奏し、四年五月左の沙汰（前掲「旧富山藩管内寺院合併諸達等」）が藩に下った。
富山藩
先般その藩、各宗の寺院合併におよび候については、すこぶる下情怨屈のおもむきあい聞こえ、不都合のことにつき、さらに穏当の所置かた取り調べ、伺い出づべき事
辛未五月八日 太政官
東本願寺
別紙のとおり富山藩へ御沙汰あいなり候条、そのむね門末どもえ教諭いたすべき事
辛未五月八日 太政官
これにつき、「同時に藩主は謹慎を命ぜられ、富山藩のろうばい全く言語に絶するものがあった」（「富山藩の合寺と香岳院」一三頁）とする。
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ということで、合寺令の布告から約半年後、太政官が富山藩を譴責する訳ですが、これも別に合寺を取り消すのではなく、もっと穏当な処置をせよ、と命じているだけですね。
そして、
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林太仲は事後処理を立石大参事等にゆだね、富山を去るが、上京後奈良県視学、文部省大視学を経て、明治六年（一八七三）官界を退き、大正五年（一九一六）七十六歳で没する。
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のだそうですが、官界を退いてから死ぬまで43年間の空白はちょっと不親切で、もう少し調べて書いてほしいような感じもします。
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明治四年七月十四日廃藩置県、八月神祇官の神祇省への格下げに勢いづく真宗両派は、東派専琳寺渡辺香岳（法秀）を総代に選び、合寺の解除を上京嘆願することになった。彼は七十歳の老齢で、合寺の年、前住職に先立たれ二重の不運にあうが、孫の現住職華岳と水杯をくみかわし、十二月十六日決然、富山を出立、嘆願の途に上った。
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ここで渡辺香岳のエピソードが妙に詳細に記されますが、どーでもいいような話にも思えます。
もしかしたら執筆者はこの人のご親族なのでしょうか。
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新時代の波は急速に進み、同五年三月十日、横浜に日本最初のプロテスタント（キリスト教新教）の教会、日本基督教会が創立する。合寺も空洞化し、同年十月二十七日、檀家七〇戸以上を有する寺院に限り再興を許す第一次解寺が実現した。
同六年二月二十四日「切支丹禁制、邪宗門禁止」の高札も撤去され、日本の新旧キリスト教は新しい発展の時代を迎え、浦上キリシタンもようやく釈放される。
同九年、檀家七〇戸未満の寺院も再興を許され、翌十年合寺前スキャンダルありとして廃寺とされた専福寺も再興の列に加わる。
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「浦上キリシタンもようやく釈放される」とありますが、加賀藩とその支藩の大聖寺・富山藩には浦上四番崩れのキリシタンの一部が配流され、浄土真宗は藩から委嘱されてその教諭にあたっていたんですね。
浄土真宗があまり好きではない私にとって、他の宗教を弾圧する側だった浄土真宗が、合寺令によって一転弾圧される側に回ってしまったところも若干笑えるポイントなのですが、上記部分はまるで他人事のような書き方ですね。
富山藩に配流された浦上キリシタンがいつまで富山にいたのか、後で確認してみます。
