7月15日。クアラルンプール入りして2日目は時折日が差すが朝から殆ど雨だ。この日はイラン対中国の試合があった。この雨はどちらに有利に働くのだろう?
思い出すのは1997年大連で行われた中国対イランのワールドカップ予選。2点の先行を許したホームの中国に対し、イランは4連続ゴールを叩き込み豪快に中国をねじ伏せた。また前回のアジアカップの準決勝でも両国は対決しPK戦で中国がイランを退けた。この中国の対イラン戦の勝利(公式にはPK勝は引き分けだけど)1994年のアジア大会以来10年振りの勝利だった。
中国は初戦地元のマレーシアを 5-1 で粉砕している。イランはウズベキスタンに先制されるも2-1と 逆点勝利を収めた。この組の本命はイラン。2位争いを中国とウズベキスタンが争うと見られていただけに、中国が引き分け以上だと次のウズベキスタン戦が非常に有利立場になるところであった。
試合開始前には雨も上がり、競技場は中国、イランの大サポーターの声援が雰囲気を盛り上げる。イランサポーターの声には力があり、昨年ワールドカップで聴いたあのイランサポーター達の応援のリズムがここでも聴かれた。中国サポーター達は若者が多いせいか統制がとれている。中国はマレーシア戦と同じスタメン。警告を受けたDFの李偉鋒、鄭智 の二人は警告を受けない様にせねばならないが、なぜマレーシア戦では大量リードした後に警告を貰うような愚行をしたのだろう?一方のイランはウズベキスタン戦スタメンの UAE Al Emarat でプレーするRasoul Khatibi に替わり MF 登録の Hossein Kaebi が起用された。 Kaebi は2002年当時16歳で代表デビューを飾った22歳の選手。またウズベキスタン戦で逆転ゴールを決めた Kazemian もベンチスタートだった。
試合は開始早々から中国が圧倒する展開。開始20秒には早くも韓鵬が強烈なシュートを放ち、その後のCKでもショートコーナーからあわやのシーンが。3分には左のCKからイランGK Rodbarian がこぼした所を韓鵬が拾い、張耀坤に繋ぐが最後はミスキック。完全に1点ものだったが。中国の立ち上がりの猛攻撃は相手が同格かそれ以下なら、いつものことだ。1987年広州で行われたソウル五輪予選、1992年北京でのダイナスティカップ、立ち上がりから日本を徹底的に攻め続けながら最後のフィニッシュが悪くチャンスをつぶし続ける間に日本が先制をするとそのままずるずる土俵を割ってしまった。2002年のワールドカップでも初戦のコスタリカ戦も立ち上がり総攻撃を見せながらゴールを割れずに、失点を喫し試合を落とし、結局1次リーグ3試合3連敗、無得点に終わった。
そんな事を思い出していると6分、中国サポーター達の大歓声が。ゴール正面やや左で得たFKを邵佳一がイランゴールに叩き込み先制点を挙げたのだ。これは“予想外”の展開。中国サポ達の“加油 ! 中国隊”のボルテージも更に上がる。更に左サイドの孫祥が素晴らしいクロスを入れるがGK Rodbarian が何とかキャッチ。イランDFラインは右サイドバックが Kaebi, CB はHosseini とイタリア Livorno でプレーする Rezaie そして左サイドが Ferydoon Zandi 。Zandi はワールドカップ予選の日本戦でも出場し御馴染のドイツ生まれの選手。Bundesliga の Kaiserslautern でもプレーしたが今はキプロスの Apollon Limassol に所属する。このDFラインが中国の自信を持ったボールキープに後手を踏む。ドリブルで突破されても最初の一歩が遅れている。イランの攻撃は Mahadavikia のドリブル突破頼り。ワールドカップのメキシコ、ポルトガル戦では低い位置で守備に腐心していたが、アジア諸国が相手だと高い位置に張っている。しかし、この押されていた時間帯ではもう少し下がっても… と思うも、彼がいないと前線でためが出来ない。9分ようやく高い位置でボールを受けた Mahadavikia がドリブルで右サイドを上がって最初のチャンスを作った。
しかし、以降中国が更に押し込む展開が。13分には CK から張耀坤がヘッドで、14分にもCKからネアサイドに走り込んだ毛剣卿がそれぞれ惜しいシュートを放つ。更に邵佳一のドリブル突破からチャンスを作り波状攻撃から周海濱がおしいミドルを放ち、今度は左サイドから逆サイドの毛剣卿にボールが渡りピンチを招くが、 Makhadavikia が何とか戻ってコーナーに逃れる。中国は4バック、右から孫祥、李偉鋒、張耀坤、孫継海 。左サイドバックの孫継海の攻撃参加が効果的だ。そして左サイドはもう一人鄭智がいる。昨シーズン Premiership の Charlton Athletics でデビューを飾ったがチームが降格した事もあり山東魯能に戻って来た。もう少し早ければ Asian Champions League でベスト8を逃す事は無かったろうに…. 20分を過ぎるとようやくイランにエンジンがかかって来たのか、中国がスローダウンしたのか、中国ゴールに迫るシーンが見られるように。22分には Makhadavikia のドリブル突破から上げたクロスを Gholam Enayati がオーバーヘッドで狙うが中国DFに当たる。その直後にも左サイドを突破し Hashemian, Zandi と繋ぎ最後は戻ったFWの韓鵬があわやオウンゴールを演じてしまうところだった。その後もCKから Hashemian がヘッドを放つが惜しくも外れる。ようやく Bundesliga Hanover 96 所属のFWが… と思うが、対峙する中国 DF 孫祥もタフな守備を見せる。孫祥は攻撃時も上がってきて前半は効果的な動きを見せた。30分を過ぎると今度は中国が徐々に挽回をする。DF李偉鋒がドリブルで突破してくるがなんとか Hosseinn がファールで止める。そのFKから邵佳一、鄭智と繋ぎ最後は周海濱が豪快なミドルを放つが惜しくも外れる。鄭智、周海濱は山東魯能の選手だが、今大会は他にもGK李雷雷、FW韓鵬の二人も同じ山東魯能の選手。上海申花の選手が孫祥、杜威、李偉鋒、毛剣卿と同じく4人選ばれており、日本でもなじみのある大連実徳からも張耀坤ら4人が選ばれている。
33分、中国に追加点が入る。右サイドから鄭智がクロスを上げるが中にいた邵佳一はそれを被ってしまう、しかしこぼれたところを毛剣卿がボレーでイランゴールに叩き込んだ。この一連は見事だった。更に大歓声が中国サポ達から上がる。そして“三比零 ! 中国隊 “と言う大コールが起こる。3点目が入ればもう試合は決定的だろうし、イランの攻撃力を考えれば2点差では追い付かれるかも知れない。だがイランは相変わらず Makhadavikia と Hashemian のブンデスリーがコンビしか攻撃を作れない。36分には Makhadavikia のクロスを Hashemian がヘッドを放つが GK 李雷雷がパンチで防ぐ。37分、42分もこの二人でシュートに持ち込む。43分には Makhadavikia 自らがミドルを撃つ。イランはもう一人のFW Enayati が孫祥の上がりを反対にケアーしている形なので左からの攻撃で形が作れない。
このまま無得点で前半が終わろうかとする44分にセットプレーから Makhadavikia が上げたところを Zandi が中国ゴールに蹴り込んで1点を返した。Zandi の力ある素晴らしいゴールだった。この時間帯で1点を返した事はイランにとっては1点以上の価値があっただろう。イランサポーター達の大歓声が残る中前半が終わった。
後半に入って中国は交替選手が無かった。前半終了直前のイランの得点により両チームのゲームプランは大きく替わったに違いない。特に中国は2点差で後半に臨んでしっかりと逃げ切りをと考えたか?しかし、リードは保っていた。中盤から後ろをしっかり守り、イランの裏をつく方策をとると思ったのだが。
一方のイランは Karimi , Kaebi を下げて Iman Mobali そして Javad Kazemian を投入して来た。Bundesliga の Bayern Munchen に所属する Karimi は来シーズンこそLiga の試合にコンスタントに出られるのだろうか?今大会の Asian Cup では欧州でプレーする選手達が比較的多く、その選手達のプレーを楽しみにしていた。日本の中村俊輔、高原はさすがと思わせるプレーであったが、他国の欧州組は今一つ… この日の中国代表も5人の選手が昨シーズン欧州のクラブチームに所属したが孫継海 ( Manchester City ) 鄭智 ( Charlton Athletic ) 、邵佳一 ( Energen Cottbu s ) はまずまずのパフォーマンスだったが、Sheffield United に所属したMF李鉄は Premier ではほとんど出場機会が無くこの Asian Cup もスタメン出場はなかった。FWの董方卓もマレーシア戦そしてイラン戦はベンチスタートだった。欧州に所属するだけでレギュラーポジションを保証されるほどアジアのレベルは甘くはなっていないと言うことだろうが同様の事はイランにも言えた。後半は立ち上がりからイランが攻めこむ。中国の中盤は攻撃力のあるイランの侵入に耐えきれないといった感じだ。59分に DF李偉鋒にイエローカードが出る。前半にも鄭智が警告を受けており、これで次戦のウズベキスタン戦は守備の要の二人が累積警告で出場出来なくなる事に。これで中国はこのリードを守る必要が強くなってきた。 61分にMF 王棟に替って22歳の趙旭日を投入した。趙旭日は攻撃力で定評のある選手、王棟は中盤で攻守に渡って能力を発揮する選手なので彼は残して置いた方が良かったのではないか?68分にはMF 毛剣卿 を下げて朱挺を入れた。毛剣卿は20歳の若い選手だが17歳の時に Feynoord のトライアルキャンプに参加した事がある。北京五輪の有望選手だろう。朱挺も大連実徳所属の21歳の守備的MF 。北京五輪にも出て来るだろう。そしてこの交替で守備を強化しようという意図だろう。こう言う交代なら選手達も納得するか?この交代以降孫継海が右サイドにまわって来てイランの左からの上がりを抑える。追い付きたいイランは攻めはしているが起点は相変わらず Makhadavikia だ。
71分に Enayati が張耀坤に倒されFKを得る。そのFKを交替出場の Mobali が上げ Rezaei がフリーで撃つが外してしまう。絶好の同点機だった。
しかし、73分。CKから Nekonam が頭で合わせてついにイランが追い付く。イランサポーターは狂喜乱舞だ。1点目もそうだったが中国はセットプレーからの失点だ。マークの確認が甘いのか?だが Liga Espanola の Osasuna 所属の Nekonamu のヘッドは打点が高く、ちょっとアジアレベルでは容易に止められそうになかった。 76分にも Nekonamu は左サイドを突破しクロスを入れる、ボレーで狙った J.Hosseni のショットは惜しくも外れた。
ここで中国ベンチは韓鵬に替って杜威を入れた。杜威は2005年のシーズンGlasgow Celtic に所属した。しかし所属期間は4か月間、Scotland Premier League には1試合出場したのみで帰国した。この交替で趙旭日がトップに入り、杜威は2列目の右に入った。ここで3点目を取りに行くのだろうか?ならばなぜ2失点目を防ぐ布陣に、方策を取らなかったのか? 82分PAやや外、そして真正面でイランはFKのチャンスを得る。しかしそのFKは大きく外れる。イランサポーターからは大きな溜息が。中国はイランゴールになかなか届かない。イランが同点に追い付いてから両国サポーター達の声援はさらにボルテージが上がった。89分にイランは Zandi を下げて Madanchi を投入した。 Madanchi は昨年のワールドカップメンバーではあったが、今大会は Nikhabakht が怪我の為に招集された左のウィングバックだとか。 90分を過ぎロスタイム3分と表示される。中国サポーター達は国歌を歌い出した。
イランも大声援を送る中試合終了のホイッスルが響き渡った。中国はいつもと違い序盤のチャンスを得点に結びつけるなど折角2点のリードを奪いながらの試合運びはのまずさで追いつかれてしまった。せめて後半の戦い方を変えておけばと思う。守備を固めてイランの焦りを誘い、裏を突くという方策を取っておればと。
一方のイラン、2点のリードを中国相手の追い付くとはさすがの攻撃力だ。しかしもう少し決定力があれば逆転も可能だった。だが序盤の守備の乱れを修正しないと例えベスト8に進出してもその後は…. この時点でイラン、中国が勝点4で並び、ウズベキスタンが勝点3で続く展開に。イランは次節マレーシア戦なので勝点は堅い。中国は引き分けたがウズベキスタンとの直接対決を引き分ければ準々決勝進出だ。しかしDFが二人出場停止な上にウズベキスタンには Shatskikh ら強力なFWがいる。
競技場の外ではいつまでもイランサポーター達の宴が続いく中、私はタクシーを探さねばならなかった。
結局中国は次戦のウズベキスタンに 0-3 で敗れ1次リーグで大会をあとにする事に。優勝候補と考えていたイランは準々決勝で韓国と対戦。主導権を握る時間が続きながら決定力に欠け、PK戦に持ち込まれて前回の3位を下回る結果となった。
この中国対イランの試合が終わった時点でイラクが優勝するとはとても想像できなかった。それがサッカーなのかもしれない。
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思い出すのは1997年大連で行われた中国対イランのワールドカップ予選。2点の先行を許したホームの中国に対し、イランは4連続ゴールを叩き込み豪快に中国をねじ伏せた。また前回のアジアカップの準決勝でも両国は対決しPK戦で中国がイランを退けた。この中国の対イラン戦の勝利(公式にはPK勝は引き分けだけど)1994年のアジア大会以来10年振りの勝利だった。
中国は初戦地元のマレーシアを 5-1 で粉砕している。イランはウズベキスタンに先制されるも2-1と 逆点勝利を収めた。この組の本命はイラン。2位争いを中国とウズベキスタンが争うと見られていただけに、中国が引き分け以上だと次のウズベキスタン戦が非常に有利立場になるところであった。
試合開始前には雨も上がり、競技場は中国、イランの大サポーターの声援が雰囲気を盛り上げる。イランサポーターの声には力があり、昨年ワールドカップで聴いたあのイランサポーター達の応援のリズムがここでも聴かれた。中国サポーター達は若者が多いせいか統制がとれている。中国はマレーシア戦と同じスタメン。警告を受けたDFの李偉鋒、鄭智 の二人は警告を受けない様にせねばならないが、なぜマレーシア戦では大量リードした後に警告を貰うような愚行をしたのだろう?一方のイランはウズベキスタン戦スタメンの UAE Al Emarat でプレーするRasoul Khatibi に替わり MF 登録の Hossein Kaebi が起用された。 Kaebi は2002年当時16歳で代表デビューを飾った22歳の選手。またウズベキスタン戦で逆転ゴールを決めた Kazemian もベンチスタートだった。
試合は開始早々から中国が圧倒する展開。開始20秒には早くも韓鵬が強烈なシュートを放ち、その後のCKでもショートコーナーからあわやのシーンが。3分には左のCKからイランGK Rodbarian がこぼした所を韓鵬が拾い、張耀坤に繋ぐが最後はミスキック。完全に1点ものだったが。中国の立ち上がりの猛攻撃は相手が同格かそれ以下なら、いつものことだ。1987年広州で行われたソウル五輪予選、1992年北京でのダイナスティカップ、立ち上がりから日本を徹底的に攻め続けながら最後のフィニッシュが悪くチャンスをつぶし続ける間に日本が先制をするとそのままずるずる土俵を割ってしまった。2002年のワールドカップでも初戦のコスタリカ戦も立ち上がり総攻撃を見せながらゴールを割れずに、失点を喫し試合を落とし、結局1次リーグ3試合3連敗、無得点に終わった。
そんな事を思い出していると6分、中国サポーター達の大歓声が。ゴール正面やや左で得たFKを邵佳一がイランゴールに叩き込み先制点を挙げたのだ。これは“予想外”の展開。中国サポ達の“加油 ! 中国隊”のボルテージも更に上がる。更に左サイドの孫祥が素晴らしいクロスを入れるがGK Rodbarian が何とかキャッチ。イランDFラインは右サイドバックが Kaebi, CB はHosseini とイタリア Livorno でプレーする Rezaie そして左サイドが Ferydoon Zandi 。Zandi はワールドカップ予選の日本戦でも出場し御馴染のドイツ生まれの選手。Bundesliga の Kaiserslautern でもプレーしたが今はキプロスの Apollon Limassol に所属する。このDFラインが中国の自信を持ったボールキープに後手を踏む。ドリブルで突破されても最初の一歩が遅れている。イランの攻撃は Mahadavikia のドリブル突破頼り。ワールドカップのメキシコ、ポルトガル戦では低い位置で守備に腐心していたが、アジア諸国が相手だと高い位置に張っている。しかし、この押されていた時間帯ではもう少し下がっても… と思うも、彼がいないと前線でためが出来ない。9分ようやく高い位置でボールを受けた Mahadavikia がドリブルで右サイドを上がって最初のチャンスを作った。
しかし、以降中国が更に押し込む展開が。13分には CK から張耀坤がヘッドで、14分にもCKからネアサイドに走り込んだ毛剣卿がそれぞれ惜しいシュートを放つ。更に邵佳一のドリブル突破からチャンスを作り波状攻撃から周海濱がおしいミドルを放ち、今度は左サイドから逆サイドの毛剣卿にボールが渡りピンチを招くが、 Makhadavikia が何とか戻ってコーナーに逃れる。中国は4バック、右から孫祥、李偉鋒、張耀坤、孫継海 。左サイドバックの孫継海の攻撃参加が効果的だ。そして左サイドはもう一人鄭智がいる。昨シーズン Premiership の Charlton Athletics でデビューを飾ったがチームが降格した事もあり山東魯能に戻って来た。もう少し早ければ Asian Champions League でベスト8を逃す事は無かったろうに…. 20分を過ぎるとようやくイランにエンジンがかかって来たのか、中国がスローダウンしたのか、中国ゴールに迫るシーンが見られるように。22分には Makhadavikia のドリブル突破から上げたクロスを Gholam Enayati がオーバーヘッドで狙うが中国DFに当たる。その直後にも左サイドを突破し Hashemian, Zandi と繋ぎ最後は戻ったFWの韓鵬があわやオウンゴールを演じてしまうところだった。その後もCKから Hashemian がヘッドを放つが惜しくも外れる。ようやく Bundesliga Hanover 96 所属のFWが… と思うが、対峙する中国 DF 孫祥もタフな守備を見せる。孫祥は攻撃時も上がってきて前半は効果的な動きを見せた。30分を過ぎると今度は中国が徐々に挽回をする。DF李偉鋒がドリブルで突破してくるがなんとか Hosseinn がファールで止める。そのFKから邵佳一、鄭智と繋ぎ最後は周海濱が豪快なミドルを放つが惜しくも外れる。鄭智、周海濱は山東魯能の選手だが、今大会は他にもGK李雷雷、FW韓鵬の二人も同じ山東魯能の選手。上海申花の選手が孫祥、杜威、李偉鋒、毛剣卿と同じく4人選ばれており、日本でもなじみのある大連実徳からも張耀坤ら4人が選ばれている。
33分、中国に追加点が入る。右サイドから鄭智がクロスを上げるが中にいた邵佳一はそれを被ってしまう、しかしこぼれたところを毛剣卿がボレーでイランゴールに叩き込んだ。この一連は見事だった。更に大歓声が中国サポ達から上がる。そして“三比零 ! 中国隊 “と言う大コールが起こる。3点目が入ればもう試合は決定的だろうし、イランの攻撃力を考えれば2点差では追い付かれるかも知れない。だがイランは相変わらず Makhadavikia と Hashemian のブンデスリーがコンビしか攻撃を作れない。36分には Makhadavikia のクロスを Hashemian がヘッドを放つが GK 李雷雷がパンチで防ぐ。37分、42分もこの二人でシュートに持ち込む。43分には Makhadavikia 自らがミドルを撃つ。イランはもう一人のFW Enayati が孫祥の上がりを反対にケアーしている形なので左からの攻撃で形が作れない。
このまま無得点で前半が終わろうかとする44分にセットプレーから Makhadavikia が上げたところを Zandi が中国ゴールに蹴り込んで1点を返した。Zandi の力ある素晴らしいゴールだった。この時間帯で1点を返した事はイランにとっては1点以上の価値があっただろう。イランサポーター達の大歓声が残る中前半が終わった。
後半に入って中国は交替選手が無かった。前半終了直前のイランの得点により両チームのゲームプランは大きく替わったに違いない。特に中国は2点差で後半に臨んでしっかりと逃げ切りをと考えたか?しかし、リードは保っていた。中盤から後ろをしっかり守り、イランの裏をつく方策をとると思ったのだが。
一方のイランは Karimi , Kaebi を下げて Iman Mobali そして Javad Kazemian を投入して来た。Bundesliga の Bayern Munchen に所属する Karimi は来シーズンこそLiga の試合にコンスタントに出られるのだろうか?今大会の Asian Cup では欧州でプレーする選手達が比較的多く、その選手達のプレーを楽しみにしていた。日本の中村俊輔、高原はさすがと思わせるプレーであったが、他国の欧州組は今一つ… この日の中国代表も5人の選手が昨シーズン欧州のクラブチームに所属したが孫継海 ( Manchester City ) 鄭智 ( Charlton Athletic ) 、邵佳一 ( Energen Cottbu s ) はまずまずのパフォーマンスだったが、Sheffield United に所属したMF李鉄は Premier ではほとんど出場機会が無くこの Asian Cup もスタメン出場はなかった。FWの董方卓もマレーシア戦そしてイラン戦はベンチスタートだった。欧州に所属するだけでレギュラーポジションを保証されるほどアジアのレベルは甘くはなっていないと言うことだろうが同様の事はイランにも言えた。後半は立ち上がりからイランが攻めこむ。中国の中盤は攻撃力のあるイランの侵入に耐えきれないといった感じだ。59分に DF李偉鋒にイエローカードが出る。前半にも鄭智が警告を受けており、これで次戦のウズベキスタン戦は守備の要の二人が累積警告で出場出来なくなる事に。これで中国はこのリードを守る必要が強くなってきた。 61分にMF 王棟に替って22歳の趙旭日を投入した。趙旭日は攻撃力で定評のある選手、王棟は中盤で攻守に渡って能力を発揮する選手なので彼は残して置いた方が良かったのではないか?68分にはMF 毛剣卿 を下げて朱挺を入れた。毛剣卿は20歳の若い選手だが17歳の時に Feynoord のトライアルキャンプに参加した事がある。北京五輪の有望選手だろう。朱挺も大連実徳所属の21歳の守備的MF 。北京五輪にも出て来るだろう。そしてこの交替で守備を強化しようという意図だろう。こう言う交代なら選手達も納得するか?この交代以降孫継海が右サイドにまわって来てイランの左からの上がりを抑える。追い付きたいイランは攻めはしているが起点は相変わらず Makhadavikia だ。
71分に Enayati が張耀坤に倒されFKを得る。そのFKを交替出場の Mobali が上げ Rezaei がフリーで撃つが外してしまう。絶好の同点機だった。
しかし、73分。CKから Nekonam が頭で合わせてついにイランが追い付く。イランサポーターは狂喜乱舞だ。1点目もそうだったが中国はセットプレーからの失点だ。マークの確認が甘いのか?だが Liga Espanola の Osasuna 所属の Nekonamu のヘッドは打点が高く、ちょっとアジアレベルでは容易に止められそうになかった。 76分にも Nekonamu は左サイドを突破しクロスを入れる、ボレーで狙った J.Hosseni のショットは惜しくも外れた。
ここで中国ベンチは韓鵬に替って杜威を入れた。杜威は2005年のシーズンGlasgow Celtic に所属した。しかし所属期間は4か月間、Scotland Premier League には1試合出場したのみで帰国した。この交替で趙旭日がトップに入り、杜威は2列目の右に入った。ここで3点目を取りに行くのだろうか?ならばなぜ2失点目を防ぐ布陣に、方策を取らなかったのか? 82分PAやや外、そして真正面でイランはFKのチャンスを得る。しかしそのFKは大きく外れる。イランサポーターからは大きな溜息が。中国はイランゴールになかなか届かない。イランが同点に追い付いてから両国サポーター達の声援はさらにボルテージが上がった。89分にイランは Zandi を下げて Madanchi を投入した。 Madanchi は昨年のワールドカップメンバーではあったが、今大会は Nikhabakht が怪我の為に招集された左のウィングバックだとか。 90分を過ぎロスタイム3分と表示される。中国サポーター達は国歌を歌い出した。
イランも大声援を送る中試合終了のホイッスルが響き渡った。中国はいつもと違い序盤のチャンスを得点に結びつけるなど折角2点のリードを奪いながらの試合運びはのまずさで追いつかれてしまった。せめて後半の戦い方を変えておけばと思う。守備を固めてイランの焦りを誘い、裏を突くという方策を取っておればと。
一方のイラン、2点のリードを中国相手の追い付くとはさすがの攻撃力だ。しかしもう少し決定力があれば逆転も可能だった。だが序盤の守備の乱れを修正しないと例えベスト8に進出してもその後は…. この時点でイラン、中国が勝点4で並び、ウズベキスタンが勝点3で続く展開に。イランは次節マレーシア戦なので勝点は堅い。中国は引き分けたがウズベキスタンとの直接対決を引き分ければ準々決勝進出だ。しかしDFが二人出場停止な上にウズベキスタンには Shatskikh ら強力なFWがいる。
競技場の外ではいつまでもイランサポーター達の宴が続いく中、私はタクシーを探さねばならなかった。
結局中国は次戦のウズベキスタンに 0-3 で敗れ1次リーグで大会をあとにする事に。優勝候補と考えていたイランは準々決勝で韓国と対戦。主導権を握る時間が続きながら決定力に欠け、PK戦に持ち込まれて前回の3位を下回る結果となった。
この中国対イランの試合が終わった時点でイラクが優勝するとはとても想像できなかった。それがサッカーなのかもしれない。
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