Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

もう1つのカップ戦 ラレベデーレ ブカレスト

2006-05-15 | EURO Football
5月10日、商用先のバンコックから帰途に着く途中のドン・アン空港のパスポートコントロール。私の後ろに並んでいた老夫婦から聞き慣れた単語が二つ、三つ、四つ。声を掛ければやはり、彼らはルーマニアからの旅行者であった。憶えているルーマニア語の単語と僅かに話せる奥方の英語とを合わせて、12年前にブカレストに住んでいたこと、そして昔から名門FC Steaua Bucuresti が好きで合った事を私のアタッシュケースに貼られているステアウアのラベルを指しながら話をして盛り上がった。その老夫婦の方からもう1つの欧州カップ戦, UEFA Cupの準決勝でステアウアが England Premier の Middlesbrough に敗れた事を言ってきた。本当に惜しい試合であった。勝っていれば新時代の快挙だったのに。と語っていた。1985-86 Europe Champions Cup で優勝した時はチャウセスク独裁時代の終盤。彼らの中ではチャウセスク前、チャウセスク後と言う時代の分け方をしているのであろう。 私が始めて当地を訪れたのは1990年の5月。革命から半年も経っていない時であった。独裁政権というものはこれほど国を崩壊させてしまうものなのかと驚いたものだ。建物は未だ弾痕が残っており、焼け焦げた後も。だが人々はこれから民主化の時代と深夜になっても集会の声が鳴り響いていた。しかし、その深夜になると更に独裁時代の爪あとが浮き彫りとなる。街灯が消えたままなので真っ暗なのだ。それでも人々の顔は希望に溢れていた様に思える。翌月に控えたワールドカップイタリア大会にルーマニアが20年ぶりに出場をするからだ。前年の地区予選では最終戦、首都ブカレストで行われたこの組の最有力候補デンマークを 3-0 で破り本大会出場を決めた。革命勃発のわずか1ヶ月前だった。その時代、英雄ハジ、ラカトシュ(94年大会は選ばれず)ベロデディッチ ( 90年大会は国籍問題で選ばれず) ラドチョイ、ドミトレスク、ペトレスク、ポペスクら才能に溢れる選手が輩出され日本でもルーマニアと言えば女子体操のナディア=コマネチしか馴染みが無かったが、欧州にルーマニア有り、とサッカーファンの知るところとなる。私も当地に滞在中に何度かステアウアの Champions League のゲームを観戦したことがある。ベテラン、ラカトシュやアドリアン=イリェ、TOYOTA CUPにも来日したGKスティンガチョ、そしてパンドゥール、パナイらがいた。試合前のスタンドではよく1986年12月東京で行われたリ-ベル・プレートとの TOYOTA Cup 戦でのベロデディッチのオフサイドゴールをよく突っ込まれた。 それから20年も経った。2000年の欧州選手権以来、ワールドカップ、欧州選手権では本大会に進めない。2年後の欧州選手権に向けて、UEFA Cup にルーマニアからこのステアウアとラピッド・ブカレストがベスト8以上に進んだ快進撃は非常に明るい材料と言われている。私も Champions League 以上にステアウアの結果が気になっていたのだが。 

立ち上がりの猛攻撃
アウェィの Liverside 競技場に乗り込んだステアウア。オラローユ監督は累積警告で出場停止のニコリータの代役にフローリン=ロビン、それからパラシフに替えてヤコブを入れて来た。一方のミドルスブラ、マックラーレン監督は負傷のGKシュヴァルツァーに替えて同じくオーストラリア人GKブラッドリー=ジョーンズを。 Socceroo の重鎮 Dukeマーク=ヴィドゥーカそしてベテランサウスゲートの2人をそれぞれ故障を押しての起用。またDFクリス=リゴット、FWアンドリュー=テイラーをこの試合には起用した。 ゲームは立ち上がり3分にはコーナーからのチャンスにディカが放つがゴールの枠の外に。しかし、その後はミドルスブラが攻撃に転じる。ステアウアGKフェルナンデスが何度も映し出される。しかし先制点はステアウアに。16分ピーター=マリンのロングシュートをGKジョーンズが弾くとそのこぼれ球がニコラエ=ディカの正面にそれを難なくディカが蹴り込みステアウアにとっては願っても無い立ち上がり。その直前にマリンのシュートをジョーンズに好セーブされていただけに値千金の先制点となった。ディカはブカレストでの初戦に続いて連続得点。さらに8分後にはゴイアンが追加点を挙げる。コーナーキックのチャンスからゴイアンがヘッド。一度はGKジョーンズが掴むがファンブル。そのこぼれ球を再びゴイアンが押し込み開始24分でステアウアが2点のリードという誰もが予想しない展開に。 これでミドルスブラは少なくとも残り66分であと4点取らねばならなくなった。 

マッシモ=マッカローネ投入 そして流れはホームチームに
26分、マックラーレン監督はたまらず、足首に不安のあるベテラン、サウスゲートに替えてイタリア人FWマッシモ=マッカローネを投入。この当時はまだFAはブラジル人でポルトガル代表監督のスコーラリ氏に次期イングランド代表監督のオファーを出したとか報道されており、マックラーレン氏が次の代表監督になるとはまだだれも確信が無かったが、代表の試合でもこういう状況は今後出て来るかもしれないか? このマッカローネ投入が吉と出る。33分。ヴィドゥーカからのパスを受けたマッカローネがペナルティーエリアの右端からファーポスト側のゴール上隅に蹴り込んで1点を返す。 すると試合再開後はさらにミドルスブラの猛攻が続き、ヴィドゥーカ、オランダ人MFボーテングそしてティラーが次々とシュートを放つ。 
前半は何とか1点で凌いだステアウアDF陣であるが、こうも波状攻撃を受けると後半のスタミナが心配だ。ここで昨シーズンの Champions League の決勝戦の Liverpool の3連続得点を、いやミドルスブラ自身が準々決勝の F.C. Basel 戦で演じた大逆転を再現するとはまだこの時点では誰も予想だにしなかっただろう。55分、ティラーに替えてナイジェリア人FWアイェグェニ=ヤクブが入り、更にパワーが増す。 64分、ダウニングからのセンタリングにヴィドゥーカが合わせてゴールを割り 2-2 の同点に。いや、まだ実質ステアウアの2点リードだ。猛攻を受けるGK フェルナンデスも表情がやや不安げだ。まだ2点あると考えればよかったのだが。そしてステアウア、オラローユ監督はFWヤコブに替えてバランを入れて守備を厚くするが、パーナビィー、ヴィドゥーカそしてバルセロナから移籍してきたブラジル人MFロッケンバックらにシュートを撃たれる。そして73分、ステアウアDFの不十分なクリアーを拾ったダウニングが低いショットを放つ。ポルトガル人GKフェルナンデスが一旦は弾いたのだがそのこぼれ球を詰めていたリゴットがゴールに蹴り込み、ついに3点目を挙げた。マッカローネが投入されて18分で2得点が入り、Liverside はもう大騒ぎ。アナウンサーも Amazing を連発。しかし、まだ1点のビハインドだ。

連続して奇跡は起こった ステアウアのフィナーレ
ポルトガル人のステアウアGKフェルナンデスは何を思っていたのだろう?ポルトガルはワールドカップ予選で2人のGK、リカルド=ペレイラ、キムと2人のGKしか登用されていなかった。もしステアウアがUEFA CUPの決勝に進出出来れば第三GKとしてスコーラリ監督の目に留まったかもしれない。だがルーマニアに外国人選手が、それも格上のポルトガルから来る事も私にとっては隔世の思いだ。 20年ぶりの欧州カップ戦での決勝進出まであと17分。オプリタに替えてバカウが、ボスティナに替えてネスを入れて逃げ切りを図る。88分、ハッセルバイクのシュートが枠を外れた。これで少しステアウアに幸運が宿ったと思った直後の89分。ダウニングのクロスに飛び込んだマッカローネが頭で合わせてそのままボールはステアウアゴールに飛び込み、ついにミドルスブラがリードを奪った。マッカローネは準々決勝の Basel 戦でも逆転ゴールを決めている。大騒ぎの Liverside 。今度はアナウンサーは “ Incredible” を連発。しかし、ロスタイムは4分と出た。まだまだステアウアにもチャンスはある。ミドルスブラはハッセルバイクが下がりDFエヒオグが投入される。 ステアウアはもう交代枠は無い。ディカのシュートはブロックされた。その直後のギオネーアのCKもシュートに結びつかない。最後のラドィのFKは壁に阻まれる。 Liverside は歓声が途切れない。そしてその歓声が更に高くなる。スロヴァキア人、ミヒャエル主審のホイッスルが鳴り響いた。 ベンチから全選手が飛び出してきて大喜びのミドルスブラ選手達と対照的に肩を落として控え室に向うブカレストの選手達。 試合後オラローユ監督は“初戦でチャンスを何度か決められなかった事がここに来て響いた。こういうことが起き得ると言う事は選手達には今後の為には良い経験となるだろう。”とコメント。昨シーズンの CSKA=モスクワに続いて旧共産国からの優勝はならなかった。一方のミドルスブラ、マックラーレン監督は“(準々決勝)と同じ試合展開になり、同じ結果に出来る自信は無かったが選手達はよく成し遂げてくれた。決勝戦は勝利あるのみだ”とコメント。スティーブ=ギブソン会長は “ このさいアーセナルにも Champions League で勝ってもらって、イングランドのチームで2冠達成と行きたい!! “ と声高らかに応えた。歓喜に沸く控え室ではハッセルバイクが“俺は死ぬまでマッカローネを愛する!! “ と大騒ぎだったらしい。 しかし、10日の決勝戦ではスペインのセビージャに 0-4 で完敗し、イングランド勢での2冠達成はならなかった。反対にバルセロナが勝てばスペイン勢でタイトル独占となる。 準決勝後のブカレストの街はどうだっただろう?ルーマニアのEU加盟は未だ課題が多過ぎると言われている。 しかし、新生の若いルーマニア代表が2年後の欧州選手権に勝ち上がって来る予感は感じさせてくれた。 次回、私がルーマニアに行けるのはいつの事だろう? 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿