Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

残念。決勝進出ならず。しかし最後は走り勝ったぞ……. 青森山田対関大一高

2010-01-19 | 五輪 U-20, U-17
1月9日 青森山田高校 2-2 ( PK 3-2 ) 関大一高

快進撃を続けてくれる関大一高の決勝進出の最後の関門は13年連続15回目の出場となる青森県代表の青森山田高校だった。
青森県代表と云うと最近は青森山田高の活躍がもう定番となりつつある。
昭和41年度に高校スポーツ界は色々改革があった。夏に全国高校総体、いわゆるインターハイが開催される事となり高体連の要請でサッカーもその中に入る事となった。文部省次官通達で高校生の全国大会は国体を除き年1回とされた事から冬の選手権は“選抜方式”となり参加チームも16に減り、総体の1位2位、国体ベスト4、各地区の推薦チームが出場する事となった。そしてそれまで50年近くに亘り大会を主催してきた毎日新聞が手を引く事となった。
しかし5年後昭和46年度、都道府県、地区予選制が復活し文字通り全国高校選手権大会が復活した。だが昭和59年度、第62回大会以前は今の様に各都道府県に1校出場枠が与えられておらず、大阪府こそ1校割り当てがあったが北奥羽地区に入れられた青森県は岩手県と出場枠1を競っていた。
北奥羽地区は、五戸高校(青森県,昭和 46~49 年度 54,55,57年度)と遠野高校(岩手県 50~53年度)そして盛岡商(昭和57,58 年度)の3校で出場権を分け合っていた。( 昭和57年度は記念大会だったので各県1校ずつ出場。)昭和61年度大会、青森県代表の五戸高校がベスト8に進出した時、少しセンセーショナルだったのを覚えている。そして今や各都道府県の力が均一化された事により県名で強弱を判断できる時代では無くなった。

青森山田高校は今大会優勝候補の一つ(と、私も思っていた。)ボランチの柴崎君と左サイドバックの中島君は10月にナイジェリアで開催されたFIFA U-17 大会のメンバーに選ばれまだ2年生の柴崎君は3試合全てに出場を果たした。そしてもう一人のボランチ、椎名君は 2011年 FIFA U-20 コロンビア大会に向けた現在の U-18 に選ばれている。だが最も注目されるのはやはり柴崎君だろう。1学年上の椎名君とのボランチは今大会の出場校の中でも群を抜いていると言われている。今年の AFC U-19, 来年の FIFA U-20 さらに2年後のロンドン五輪に向けて日の丸を背負う選手の一人ではと思われる。
そして2トップも得点力があり野間君が2得点、成田君が3得点、それぞれ今大会決めている。準々決勝えでは強豪の神村学園を 4-0 で粉砕した相手に北陽高校以来の大阪勢36年ぶり決勝進出を目指すには何とも厳しい相手。これだけタレントの揃ったチームにどうやって戦いを挑むのだろう….. と準々決勝戦に続いてまたも悲観的になってしまった。 

前半  序盤のチャンスを生かせず 連続失点を喫する 

スタメンは両チームとも準々決勝戦と同じメンバー。 関大一高が勝てるとすれば準決勝から試合時間が45分ハーフとなり、相手よりいかに走り続けられるか…と思った。しかし立ち上がりは関大一高の走力を警戒したか、青森山田は相手の出方を伺っているような気がした。 2分23秒、右サイドで梅鉢君が粘りを見せCKを得た関大一は、そのCKがファーサイドに流れフリーの小谷君に。しかしこれ以上ない決定機に驚いたのか?小谷君のヘッドはポストの左に外れてしまう。 ただ1メートル弱前の無人のゴールに流し込めば先制ゴールだったのに、本当に惜しいチャンスだった。ビッグチャンスを逸した関大一だったがその後も青森山田ゴールに迫りシーンが続く。8分43秒に得たCKから攻撃参加した右サイドバックの横川君が青森山田DF中島君とGK櫛引君の間からヘッドで落とし小谷君が再びシュートに持ち込むが得点には至らない。関大一高は準々決勝まで7得点のうち5得点がセットプレーから。ゴールエリア近くからの久保開立君のロングスローにも期待が掛かる。
15分50秒、小島君からボールを受けたエース久保綾佑君が放ったシュートはGK櫛引君がパンチでクリアー。そのこぼれ球を拾った久保開立君がGKの位置を見てループ気味にシュートを放つが惜しくもクロスバーを越えた。16分55秒今度は2列目の三浦君が右サイドを上がった濱野君に送りそのままドリブルシュートを放つがここもGK櫛引君がファインセーブでCKに。そのCK、ファーサイドの小谷君が中に折り返し横川君からパスを受けた久保綾佑君が放ったショットはまたもGK櫛引君がストップ。 立ち上がり、劣勢が予想された関大一だったが、小島(右)、横川(左)の両サイドの両君の上がりが早く良いリズムで攻撃を続けた。 
何とかこういう時間帯に先制点が欲しいなぁ…と思うも、優勝候補の青森山田は20分過ぎから徐々に押し返す。 2列目右サイドの遠藤君のドリブル突破から起点となり、成田、野間の2トップの両君のボールキープが目立つ。そして椎名君、柴崎君のボランチの2人が徐々に高い位置でボールを受ける様になって来た。 特に柴崎君は完全に別格といった感じで彼のところにボールが入ると何か決定的な事が起こりそうな雰囲気だった。関大一高MF陣の位置が徐々に下げられて来た。
そして30分24秒、成田君が右サイドからペナルティーエリア内にドリブルで切れ込んで来る所を、マークに入った小谷君のタックルがバックチャージと取られPKを与えてしまった。 納得のいかない表情の小谷君だったが、成田君のドルブルの加速が早く結果的にバックチャージとなってしまった。そのPKを野間君が右隅に決められ先制を許してしまった。 ここまで関大一は5本のシュートを放っていたが青森山田はこのPKが2本目のシュートだった。

   


この先制点で青森山田は一気に優位に立つ。 中盤の人数が多くなり関大一はどうしてもロングボールが増えてくる。ワントップの久保綾佑君はCBの中山君か赤坂君にしっかりとマークされている。何とかこのまま持ち堪えてくれよ、と思う中39分29秒、中盤で梅鉢君からのパスをインターセプトした椎名君がそのままドリブルで上がってくる。そして右サイドの方にボールを出すがそれが関大一高DFに当たり自分のところに戻って来て再びドリブルで上がってくる。小谷君がマークに入る直前に撃ったミドルがそのまま関大一高ゴールに吸い込まれ追加点を奪われてしまった。
自ら出したパスが相手DFに当たり良い位置にこぼれてきた幸運はあったが、やや前に出ていたGK堅根君の位置をよく見ての技ありのミドルだった。 

     

藤枝明誠戦では30分過ぎからの連続ゴールで主導権を握った関大一だが、この試合では連続失点を喫してしまった。目の前でミドルを撃たれた小谷君の悔しそうな表情が映し出される。 先制となるPKを献上したプレー、そして開始早々のビッグチャンスを逸したシーンを思い出したのかもしれない。 しかし、まだ試合は終わっていない、最後に走り勝ってくれ、と呟いた。
完全に主導権を握った青森山田は大きくサイドチェンジを見せる様になる。40分には遠藤君が濱野君と横川君をかわしてドリブルシュートを見せる。そのプレーぶりに解説の都並氏が“まさにリトルガンバの遠藤ですね。”と称賛。
よしわかった。卒業後は京都サンガに入団してくれ。(関係ないか??)

44分濱野君が右サイドで相手選手と交錯して倒れて立ち上がれない。 結局そのまま井村君と交代することに。スタンドから声が飛んだが軽く手を振ってベンチに向かう井村君は悔しそう。だが仲間の挽回を祈った事だろう。関大一高にとってはまさに弱り目に祟り目の展開となり前半が終わった。 

終了直前怒涛の猛攻 そしてPK戦  ほんまにようやった、おおきにやでぇ

2点のビハインドを追掛けるべく後半が始まった。 テレビのレポーターによると関大一高の佐野監督は選手達に

“これで負けたと思った奴は今すぐ青森山田ベンチに行って負けましたと頭を下げてこい!!まだ終わっていないぞ!!”と檄を飛ばしてピッチに送りだしたそうだ。 

そうだ、まだ時間は45分もある。時が経てば経つほど走力に勝る関大一高の有利になるのだ、と勝手に私も勇気づけられていた。

関大一は交代出場の井村君を2列目右に置き、三浦君は負傷退場した濱野君のポジションだった真中に入った。エースの久保綾佑君を含めばんばん攻撃に絡んでくれよ、と願う。
しかし、試合巧者の青森山田は後半ワンタッチでボールをスペースに出し関大一の運動量をかわす様な動きを。49分には成田君からボールを受けた野間君がミドルを放ち、51分には中島君からのパスを受け成田君が水田君、横川君がマークに入る前にドリブルシュートを撃つ。なかなかシュートに持ち込めない関大一ベンチは三浦君を下げ2年生の浅井君を入れて久保綾佑君と2トップにするが、それでも相手ペナルティーエリアが遠い。 58分には柴崎君が成田君とのワンツーで抜け出て三田君にスルーを通す。三田君はDFを引きつけ中に送ると野間君がフリーでスライディングシュート体勢に入る。 あぁ !! やられた!! と思うがシュートはジャストミートせずゴールには至らなかった。 
前半は攻撃面で目立った青森山田自慢のボランチ、柴崎、椎名の両君は後半は守備面でその威力を発揮し関大一の攻撃を分断する。 攻守に渡り効果的な動きをするこの二人にオーストラリア代表のボランチ、 Jason Culina と Vince Grella の2人を思い出した。( 関係ないか??)
走力があるとはいえ、2点のビハインドがあっては相手も“余裕を持って” 守備に人数をかける。青森山田のワンタッチ、ツータッチのパス回しに関大一はボールが奪えない。 このパス回しに見られる“阿吽の呼吸”は現在のピッチ上5人の選手を含めた登録メンバー9人が青森山田中学出身という“中高一貫教育”の恩恵かもしれない。関大一高も“中高一貫”だけど、青森山田とはその趣は異なる….
早く1点返してくれ、1点差になると大きく展開は変わる..と切実に願う。 75分に浅井君がようやく中島君と競りながらドルブルシュートを見せてくれたがゴールネットには届かない。 あぁ、ゴールが遠いなぁ…と思った直後の76分、青森山田ベンチは散々手を焼かせてくれたMF遠藤君を下げてくれた。 確かに後半は彼が目立つシーンは減ったが。
替って投入されたのは2年生の橘君。前の所属が野洲高校となっていた。何か事情があったのかな…
81分関大一高ベンチはCBの水田君を下げて3バックにし2年生の小畑君を投入し井村君との2トップに替え、久保綾佑君はトップ下のポジションに。 残り時間10分を切り最後の走力を振り絞って..と思った矢先、三田君に右サイドを突破され中に入れられたところを野間君にダイレクトで撃たれた。しかしその弾道はポストの左に外れて胸をなでおろす。 時間は刻々と過ぎるが関大一高のゴールシーンがなかなか生まれない。せめて1点返してくれよ、と思いだした89分、右サイドを久保開理君が上がり中の久保綾佑君に送るがシュートを撃てずにボールがこぼれそのこぼれ球を拾った久保綾佑君が横川君とのワンツーで抜け出ても一度中に入れる、そこに三浦君が入るが相手DFともつれる様に倒れてボールがこぼれる。それを拾った久保綾佑君がマークに入った中山君と椎名君の間を縫って放ったシュートがゴール右隅に決まり、関大一高が1点を返した。久保綾佑君のこれぞエースと思わせる強引なシュートだった。 

     


ワールドカップを前に今日本代表の攻撃陣に欲しいのは彼の様なゴールまでのプレー、シュートだ。かつては釜本邦茂氏が見せた様に。そしてKAZU 、ゴン中山、全盛期の高原。 関大一が一矢を報い、これで彼らも大阪に胸を張って帰れるだろうなぁ…( そうでなくても充分に堂々と帰阪出来るのだけど。) と思ったが、選手達はそうではなかった。 
俄然トップギアーに入った様にまさに押せ押せの展開となった。青森山田の選手達はリードしているのに明らかに動揺をしているのがわかる。そして焦りからファールが目立つ。そこで得たFKはGK 堅根君が蹴り、フィールド選手のほぼ全員がペナルティーエリア内に入る。 
そして91分22秒ドラマが起こった。 相手のファールで得たFKを堅根君が放り込む、それを拾った浅井君のシュートはCB 中山君に当たりこぼれ球を拾った小島君が放った低いライナーのシュートはファイサイドのサイドネットの内側を揺らし関大一が同点に追いついた。 
国立競技場に何とも形容しがたい歓声が湧き上がる。最後まで足が止まらなかった関大一高イレブンのその労が報いられた瞬間だった。

こうなりゃぁ、36年ぶりの決勝進出じゃ、大阪に優勝旗を持って帰ったれぇぇぇ っと叫んだ………

共にGKが2年生同士のPK戦は見応えあった。残念ながら36年ぶりの偉業は達成できなかった。 

    


だけど関大一高の選手、関係者達の御蔭で久々に熱のこもった高校サッカーテレビ観戦となった。私の中では何年経っても忘れられない劇的な試合だったと思う。 

スタンドで応援する選手達を含めた全ての部員、高校生達にこの試合を糧に素晴らしい未来が開けてくることを願った。


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4 コメント

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また、じっくり読ませていただきました。 (ちち)
2010-01-20 00:56:51
本当に素晴らしい記事。
内容を控えてらっしゃるのですか?
まさか・・・記憶??

試合を思い出しながら楽しませていただきました。

高校サッカーのDVD「最後のロッカールーム」今年も購入しようと思っています。
多分沢山取り上げられてるんじゃないでしょうか。

コメントいただきありがとうございました。
またおじゃまします
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いえいえとんでもない (Mr. コンティ)
2010-01-21 23:45:26
ちち様

コメントありがとうございます。

記憶なんてとんでもない。試合は録画しながらそしてメモをとりながらのテレビ観戦でした。
印象に残ったシーンは録画を見直してまとめました。子供の時から野球や相撲なんかスコアーや星取りを付けながらのテレビ観戦でした。

高校生たちの未来に栄光あれ、ですね。

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Unknown (ありがとう)
2010-01-22 20:16:26
私は国立で関大一高側で応援してた者です!!
本当に素晴らしい試合でしたよね?
涙があふれました。
大阪をノーシードで戦って
ハードな予定の中で頑張った選手たちに
心からの拍手を贈りたいです♪
関大一高はスポーツ校ではないので、
選手層が薄いので来年は心配ですが・・・
ぜひぜひ頑張ってほしいです。



ちなみにラストの同点ゴールを決めたのは
2年生のスーパーサブ井村君ですよ!笑

本当に素晴らしい記事ありがとうございまた!
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御指摘ありがとうございました (Mr.コンティ)
2010-01-24 10:53:47
ありがとう様

この度は御指摘ありがとうございました。

自分で書いた文章はきちんと読み返さねばなりませんね。他にもてにをはがいっぱい間違っているんではないでしょうか....
お恥ずかしい。

高校スポーツ界も毎年急速な急速な勢いで”プロ化”されてきている中、関大一高の様な学校が進撃するのは素晴らしい事です。
やれば出来るということを彼らは見せてくれました。 
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