11月17日。ハノイの My Dihn Stadium に入りパンとコーラを買って試合前の腹ごしらえをしようとテーブルに座るとそこには若い白人男性の二人連れが。一人はヴェトナム代表の赤いユニフォームを着ている。訊けば二人は英国人でバックパッカー。 偶然にこの試合が行われる事を知ってここに来たそうだ。ヴェトナム代表のレプリカ(と言ってもUS$2.00 で買ったコピー商品らしいけど)を着ていたお兄ちゃんはBlackburn Rovers そしてもう一人は Arsenal のサポーターとの事。しばし Premiership の話題に花が咲く。特に Arsenal サポのお兄ちゃんは今シーズンの好調ぶりに機嫌が良い。Rovers サポの方も今シーズンは開幕から上位につけているので来季の UEFA Champions League 出場を期待しているとの事。実現したらシアラーらを擁して Premiership のタイトルを勝ち取った 1994-95 シーズンの翌年以来では無いか…てな具合にどんどん話題が進む。英国人にとってはアジアでの五輪予選の熱狂ぶりはいまひとつピンとこない様だ。この試合もフル代表のゲームと思っていたらしく この日の日本代表に中村俊輔が入っていない事を少しがっかりしていた。しかし今年開催されたアジアカップでイラクが優勝した事は知っていた。彼らのもう一つの関心は17日と21日に欧州でも開催される欧州選手権の予選。 Rovers のお兄ちゃんの方は母親が Scotland 系なので久々に Scotland がメジャーな大会に出られそうだと言っていた。だが前節は Georgia 共和国にまさかの 0-3 での敗退。フランスにホーム&アウェーで勝っていながら何故 Georgia に敗れるのか??ってな話も。 (そしてイタリアに敗れてその夢も潰えた。)そして England のことも.....
そんな話をしていると時間が過ぎ共に着席に向かう事になったが彼らからは最後まで五輪の話は出なかった。 欧州人にとって五輪サッカーとはそんなものだろう。既に北京五輪予選にあたるU-21欧州選手権は終わっており上位4カ国に与えられる出場権もオランダ、ベルギー、セルビア、イタリアの4カ国が得ている。本当は England が4位であったが England としては出場権が無いのでポルトガルをPK戦で降し5位になったイタリアに出場権が与えられた。しかしこのU-21欧州選手権もエントリーしたのが先述の6カ国にイスラエルとチェコを合わせた8カ国のみ。欧州にしては寂しい限りか?国威掲揚の為に五輪出場権を旧共産圏諸国が競っていた時代がレベルが高かったかも知れない。
南米や欧州の様に所属クラブで地域レベルのハイレベルな争いが無いアジアでは五輪予選は大切な大会だ。昔、“アジア諸国の中では、殆どの競技種目はアジア大会に焦点を置くがサッカーは五輪を目指している国が多い”と著名な解説者が語っていた。いよいよ大詰めに入ったアジア地区予選。他の地域ではどうだったのだろう?
Group A
Australia が Sydney FC のMF Mark=Milligan のゴールで北朝鮮と引き分け五輪出場を決めた。 17日に Gosford の Central Coast Mariners の Bluetong Stadium で行われたイラクとの一戦を Adrian= Leijer, Mark=Milligan の2ゴールでものにした豪州五輪チ-ム, Olyroos は21日、平壌で行われた北朝鮮戦では引き分けで五輪出場が決まり所であった。北朝鮮とは9月の Newcastle の試合では 1-0 で降しているがこの試合での得点者も Mark=Milligan 。五輪予選では常に重要なゴールを決めて来た Milligan がここでも貴重な同点ゴールを決めてソウル五輪以来6大会連続の出場を決めた。イラクとの激戦を制した翌18日、Olyroos 一行は北京に向けて出発。同地で二日間滞在し北朝鮮対策を講じた後試合前日の20日に現地入りしたとの事。その北朝鮮対策とは金日成競技場の人工芝ピッチと平壌の寒さ。何しろ南半球はこれから夏を迎える上に人工芝の上でプレーをした選手は何名いたのだろう? Olyroos のスタメンは Arnold 監督が試合前日に語った通りイラク戦と同じスタメン。しかし試合は開始10分にロビングボールを上手くトラップした Pak Chol Min がGK Vukovic の頭上を越すゴールで北朝鮮が先制。 Pak Chol Min は9月の Newcastle でのオーストラリア戦には出場していない選手だった。 Olyroos が先制点を喫したのは五輪最終予選では初めて。北朝鮮はPal Chol Min の先制ゴール後も何度かチャンスを掴んだが追加点を挙げられず、70分に Kristian=Sarkies のFKに Mark=Milligan がヘッドで合わせた弾道がループ気味に北朝鮮ゴールに飛び込み同点。そのまま気温5度そして前日の豪雪により部分的に凍結した人工芝のピッチに悩ませられながらも引き分けに持ち込み五輪出場を決めた。ただ Milligan のシュートがゴールネットに吸い込まれる前にゴール前に詰めた Adrian=Leijer の手がボールに触れたように見え、北朝鮮の選手達もハンドをアピールしたがシリア人の Muhsen 主審はゴールを認めた。もしハンドを取られていたらどうなっていただろう…… この試合のダイジェストを私は今いるバンコックで ESPN の Football Asia の番組で観る事が出来た。 Olyroos はこの五輪予選8カ国相手に14試合無敗で日程を終了。見事に“アジア代表”として五輪出場を決めた。
Group B
韓国が安山で行われた最終戦のバーレーン戦を引き分け6大会連続の出場を決めた。17日、タシュケントで行われたウズベキスタン戦を 0-0 で引き分けたが同日バーレーンがマナマにシリアを迎えたホームゲームを 1-1 で引き分けてしまい、韓国はバーレーンとのホームでの最終戦を引き分けても五輪出場を決められた。
この予選突破に朴成華監督の胸中はどうなのだろう。1980年マレーシアで行われたモスクワ五輪予選。下馬評では圧倒的な予選突破の本命とされながらマレーシアに敗れて出場権を逃した苦い思い出がある。(結局マレーシアも西側諸国に同調しモスクワ五輪をボイコット)現役選手時代、随分日本を苦しめてくれたが五輪、ワールドカップ予選は突破出来ず、指導者になってからはUAE で開催された2003年のFIFA U-20 の決勝トーナメント1回戦で日本に敗れるなどそれほど良い思いはなかっただろう。それだけに、今回の五輪出場には喜びもひとしおだろう。しかし韓国は最終予選3連勝のあと3試合連続のスコアレスドロー。朴成華監督も喜びに浸ってばかりはいられないだろう。
Group C
日本がサウジアラビアと引き分けた吉報を受けたのはこちらで代理店の方との食事中。二人でシンハビールで乾杯をした。ホテルに帰ってから ESPN で試合のダイジェストを観た。開始9分のユーセフのシュートをGK西川が弾きそのこぼれ球を詰めて来たアルゴワイニムに撃たれた絶対絶命のシュートを青山敏弘がブロックしたシーンを見た時は結果が判ってたとは言え背筋が凍りそうだった。
その後は李忠成、細貝そして岡崎が決定的なチャンスをものに出来なかったシーンが続き、
最後はフェースガードをした水本の感涙を流すシーンが映し出された。
最終戦を勝利で飾れなかったが無事に予選を突破してくれて本当に良かったと思った。なにしろ28年間も五輪予選で敗れ続けたのを見て来たから。
これで五輪チームも一回りも2回りも強くなってくれただろう。そしてこれから北京五輪までの260日間で更に成長してくれる事を願っている。
それにしても今回の五輪予選で中近東、西アジア勢は全滅であった。1984年のロス五輪はイラク、カタール、サウジアラビアと中近東、西アジア勢で独占されて以来、今回からオーストラリアのAFC加盟もあったが、これまで考えられなかった事だ。
イラクフットボール協会は20日、3人の選手の海外移籍を認めない方針を発表した。この3人の選手は17日のオーストラリア戦の1時間後にホテルを抜け出し、大使館の庇護を求めた、要するに亡命を企てているとの事。その3選手の中には今年のアジアカップ優勝メンバーでもあった Ali Abbas が含まれており、他には Ali Mansur, Ali Khadher がおり、そしてSadi Toma アシスタントコーチの姿もないとの事。 Ahmed Abbas 協会事務局長は“ FIFA に3選手の移籍許可を発行しない様に求めた。この許可書が無いと海外へ移籍が出来ないらしい。 ロイター通信の電話インタビューで Abbas 氏は”3人が帰国して今の所属チームとの契約を履行し終えるまで許可証の発行を認めない。“と語ったらしい。また Kevin Andrews 豪州移民省大臣のスポークスウーマンは選手達と Toma コーチは3か月の豪州滞在ヴィザを持っていると語っており、 Toma はイラクチームの関係者に“自分はここに亡命しているイラク人で構成されたアマチュアクラブのコーチを務め、他の3選手もここに亡命を希望していると語ったとされている。オーストラリアの北朝鮮戦の結果いかんではまだ五輪への可能性も残されていたのにその前に選手達が亡命するとは……. でも彼らの気持は充分に理解できる。何しろイラクでは今年将来の五輪候補であるジュニア世代のアスリート達が約20人が合宿に向かう時にさらわれて全員が死体で発見されたらしいから。
改めて平和の有難さを感じるよ…. 明日からはマレーシアだ。
オリルーはホームで調子が良かったので、珍しいなと思ったんですが、国内組が半分くらいいたんですね。
でも、アルゼンチンやブラジルやナイジェリア、カメルーンあたりも代表はほとんどヨーロッパ組です。
国内での試合に苦戦するエクスキューズにはしてほしくないです。
3次予選はAリーグ組中心で臨むという報道もありましたが、この組み合わせではそうも言ってられないでしょう。
3次予選からベストメンバーで行ってほしいですが、その前に監督を決めないと・・。
オージーのサッカーファンが言っていました。
AFCに加盟した今、欧州クラブチームベースの Socceroos は今後ワールドカップ予選で苦戦をするに違いない。なぜなら彼らにとってアジア諸国、オーストラリアでの戦いはすべて”アウェーゲーム”だからだ。五輪チームの好調は A League ベースの選手が多いからで、オーストラリアを”ホームゲーム”にして戦えるからだ。
来年から始まるワールドカップ予選でオーストラリアは大変な組に入ってしまいましたね。まず選手構成から苦戦を強いられそうですね。
恐韓症はオーストラリアにもありましたか。遠い昔ですが1974年ドイツ大会のアジアオセアニア地区最終予選では1勝1敗で最後のプレーオフで韓国を降しての出場で、翌アルゼンチン大会の最終予選では順位は2位の韓国より下回った4位でしたが直接対決では1勝1分だったので代表レベルでは分があると思っていたのですがそれも昔の話かもしれません。
あ、そうそう、1966年のイングランド大会の予選でも北朝鮮に完敗でしたね。( Johny Warren の本で読みました。)
先日ヴェトナムのハノイで開催されたアジアユース予選でもオーストラリアは韓国に 0-4 で完敗していましたので。まぁ来年のアジアユースには進出を決めてからの結果ですが.....
しかし来年から始まるワールドカップ予選、オーストラリアの組を見ると、あぁいう組み分けにならなくてよかったと背筋が凍りました。
大一番のイラク戦で勝って、燃え尽きていなければと思ったのですが、日豪ともなんとか逃げ切りました。
もともと、オーストラリアは韓国が大の苦手です。
03年のワールドユース本大会前にヤングルーが日韓にテストマッチに来たのですが、日本には勝ったのに(決勝点はマクドナルドのPK)、韓国には負けました。
06年のアジアユースでも韓国に大敗して、WY出場を逃しましたし、今秋のアジアユース1次予選でも韓国には完敗しました。
日本は「韓国の壁」を克服しつつあるのに、オーストラリアは「韓国の壁」にぶち当たっています。
真剣に韓国対策を考えなければいけません。
韓国に相性が悪いということは、当然北朝鮮にも相性が悪いわけで・・。
それにしても、五輪予選がH&Aの長丁場だったのは、移動距離の長さ、いちいち招集する手間はあったにしても見てる側は燃えましたね。
各国が移動やアウエー試合に悪戦苦闘しながら、チームが出来ていく感じがしました。
最初に調子が悪くても挽回可能ですしね。
コストや招集の手間を考えれば、1ヶ所での集中開催の方がいいんでしょうが、次回のロンドン大会の予選もH&Aでやってほしいものです。