何度でも言おう。 1970 年代から80年代の初旬までマレーシアはアジアサッカー界の列強だった。ミュンヘン、モスクワ五輪には韓国、日本を抑えての出場権を獲得。特に1980年3月に行われたモスクワ五輪予選。開催地はマレーシアとは言え大方の専門誌の予想では圧倒的に韓国が予選突破の筆頭候補であった。しかし、ソー・チー・アン、アブドーラ・アリ、ジェームス・ウォン、モクタル・ダハリ、当時のそうそうたるメンバーは予選リーグで韓国を 3-0 , 日本を1-0 で破ると決勝戦で再び対戦した韓国を終了3分前、ジェームス・ウォンの決勝ゴールで韓国を降し見事モスクワ五輪出場権を勝ち取った。(しかしモスクワ五輪はボイコット。)この時の韓国の関係者の落ち込みは大変なものであったらしい。
日本は1984年4月シンガポールで開催されたロス五輪でもマレーシアに 1-2 で敗れており、マレーシアに優位に立てる様になるにはJリーグの発足近くまで待たねばならなかった。
私にとっては“強豪”のイメージが強く残るマレーシア。しかしその名残はどこに行ってしまったのだろう。今回のアジアカップ4カ国共同開催が決まった時、ホスト国の中で一番苦戦しそうなのがマレーシアでは無いかと思った。そして案の定と言っては失礼か、ホスト国が次々と開幕戦で勝点を獲得するの中、マレーシアは中国に 1-5 で大敗している。7月14日、ウズベキスタン戦の地元紙 New Straights Times では “ Football の事は忘れよう。マレーシアは他の競技で快挙を勝ち取った。” との見出しが。そしてその下にアーチェリーで五輪枠を獲得した記事があった。 地元のマスコミにまでこう書かれるとは…. だが 1-5 は酷すぎた。いくら相手が格上とはいえ 1-5 は….. 新聞の片隅には Norizan Bakar 監督の写真があり、我々は皆改善せねばならない事を理解している…..と言う内容のコメントが。 今度こそ地元サポーターを狂喜させられるのだろうか?
スタジアムに到着したの時はもう15分を過ぎていた。これで3試合連続の遅刻だ。 Bukit Jalil National Stadium と言う立派なスタジアムは横にも公式のホッケー競技場がある一大スポーツ Complex の中にあるので、入口にたどり着くまでが長かった。スタジアムの中からは結構大歓声が絶えまなく漏れて来る。ゴールシーンが演じられる前に着席せねば….. しかし、着席した時は既にウズベキスタンが 1-0 でリードしていた。
スクリーンに先制点のレプレイが映し出される。 Djeperov が中盤やや右側で得たFKをゴール前に蹴り込むとそのままファーサイドにいたShatskikh の前に流れていきそれを苦もなく Shaskikh は頭で押し込んであっさりと先制ゴールが決まっていた。 Shatskikh は前のイラン戦には予選での累積警告で出場出来なかったがこの試合では早速仕事をした。イラン、中国と同居する Group C においてウズベキスタンがベスト8入りするには Dynamo Kiev の中心選手 Shatskikh 抜きでは難しい。 ウズベキスタンは Shatskikh だけでなく GK の Pavel Bugaro を初め5人の選手をイラン戦のスタメンから替えてきた。一方のマレーシアも中国戦からスタメンを4人替えてきたがフランスリーグでもプレーをした事のある Ahmed Rakhil はスタメンから外れた。怪我が完治していないのか?マレーシアの最終ラインは左から Talib Rosdi, Hussain Kaironnisam, Kalliappan Nantha, Veeran Thuir の4バック。DF登録選手は3人であるが、Nantha はAFCの WEB SITE ではMF登録であったが、この日回って来た Match Summery では DF 登録。中国戦からDFを二人替えている。ウズベキスタンは Ulugbek Bakaev 以外攻撃陣を替えてきたのとは対照的だ。大量失点を喰わない様との思いだろうが、立ちあがりの痛い失点であった。それでもマレーシアは中盤でよくボールをつなぎ同点ゴールを狙う。パスがつながる度に地元サポータから大歓声が送られる、しかし最後の縦パスが中々通らない。そして26分、久々マレーシアゴール前に迫ったウズベキスタンは左サイドから Victor Karpenko からのボールを受けた Timur Kapadze がワントラップでボールを浮かしてマレーシアDFの Hussain をかわし、尚も浮玉を利用してマレーシアDF二人を抜いてフリーでシュートを放ち、追加点を挙げ 2-0 とした。さっきまで大声援を送っていたサポーター達は潮が引いたように静かになってしまった。
そしてこの後もウズベキスタンが攻勢を続ける。36分には Anzur Ismainov のヘッドがポストを直撃、37分には Shatskikh がインターセプトで抜け出した所をマレーシアDFとぶつかりFKを得るとそのFKを Aleksey Nikolaev がちょんだし、Djeperov が強烈に蹴り込む(壁に当たる。)など以降も波状攻撃が続き、マレーシア GK Abdul Kadir Azizon も休む暇が無い。しかし、40分を過ぎるとウズベキスタンに疲れが見え始めたかマレーシアがボールを繋ぐようになり再び観客が沸くシーンが続く。42分にはゴール正面やや右で得たFKを Jahar Mohamad Hardi が直接狙いポストをかすめる。その直後も右サイドから Adan Shukor が上げたクロスを Omar Hairrddin が頭で合わせるが惜しくも外れる。43分には Mustapa Shahulinizam が右サイドを上がり入れたクロスは僅かにフリーの Indraputra に合わず、そのこぼれ球を左サイドから Mohd Yuusof Ivan が拾って上げるがウズベキスタンDFにヘッドでクリアーされる。高さではやはりかなわないか?でも連続攻撃を見せ、何とか得点の予感は感じさせられたがロスタイムに入った直後の45分にこの試合を蹴って付ける3点目が入ってしまう。カウンターから左サイドを Bakaev にフリーで抜けられ、出てきた GK Azizon と交錯。Abdou 主審は迷わずペナルティスポットをさす。 Azizon を始め数人のマレーシア選手が抗議するが判定はもちろん変わらない。しかし、この判定は少し厳しすぎ無いか?そのPKを Bakaev が自ら決められてしまった。
この時点でマレーシアの勝利はまず考えられなくなった。前半が終わってベンチに戻る選手達。地元サポーターから罵声が飛ぶが特に Bakar 監督には….. なんて言われているのだろう?
ハーフタイム中にスタジアムを見渡してみる。結構ウズベキシタンからもサポーターが来ている。この国も海外にサッカー観戦が出来るほどの裕福な人が増えたのかな?1997年ワールドカップ予選では多くの日本人が首都のタシュケントを訪れたのだけど。昔、勤めていた会社でロシア語を話す社員の何人かがここを訪れたがあの時はまだソ連時代であった。私がロシア語を話せれば色々話し掛けるのだけど…..
後半、何とか地元サポーターを歓喜させるシーンは… と思うも開始からウズベキスタンが主導権を握る。47分にはスルーパスを受けた Shatskikh が49分にはサイドバックの Innomov がドリブル突破であわやのシュートを放つ。その Innomov は直後に Ibragimov と交替するが、これを機にマレーシアが盛り返す。MF Jaafar Harid , Mustapa Shahrull は比較的簿ボールキープが出来るのでタッチライン沿いに開きそこから起点になる。そして55分に Mohd Youssof Ivan に替って投入された Muhamad Norfarhan が前線でボールキープが出来てチャンスをつくる。58分には Norfarhan のスルーを受けた Indraput が抜け出して惜しいシュートを放ち、60分には Indraput がカウンターから抜け出してCKを得る。そのCKから Hairddin がヘッドを撃つがGKの正面に。しかし、ウズベキスタンはDFラインを下げてゴール前を固める。PA付近でも1対1では体格の差からマレーシアは競り負けるシーンが続く。制空権も完全に支配下にある上に3点のリードがあるので余裕がある。そしてカウンターからミドルシュートを狙う様になる。64分には Djeparov の強烈なミドルが飛ぶ。ゴールこそならなかったが、こう言うマレーシアではお目にかかれない強烈なショットを見せられるとDF陣もびびるだろう。 67分には DF Vitaliy Denisov を下げて FW Pavel Solinov を入れるがこれで前線からプレスを掛けるのか?71分 Bakar 監督はマレーシアのスーパースター Ahmed Rakhil を投入するが、ウズベキスタンDF陣が引いてしまう前に投入できなかったか?
それでも大歓声で迎え入れられる Akmal ,早速ドリブルシュートを披露し拍手が起こる。79分には 右サイドバックの Veeran Thiru がドリブルで抜け出しスルーを攻撃参加の DF Kaironnisam に送り、そのままナイスクロスを入れるが GK Nesterov がセーブ。抜けていれば逆サイドのマレーシアの選手が二人フリーでいたのだが。時間は過ぎ、マレーシアの連敗はいよいよ濃厚になる。83分、良いボールキープを見せていた Jaafar Hadri が交替で下げられるが、 Hadri は気に入らなかったのかそのまま控室に戻ってしまった。そして2分後、左サイドの Djeperov が上げたクロスを 交替出場の Ibragimov が豪快なボレーを決めてウズベキスタンが4点目を決めた。
Ibragimov のボレーも見事だがマークの Veeran Thiru も簡単にクロスを上げさせては….. 更に89分 Djeperov が今度はスルーパスを Shatskikh に送りこの Dynamo Kiev の FW にこの日2得点目そしてチーム5点目を演出する。もうマレーシアはなす術なしと言う感じだ。準々決勝進出争いを考えれば中国と同様にウズベキスタンもマレーシアから5点をとった事は大きいだろう。
次の直接対決が非常に面白くなりそうだ。一方のマレーシア。試合終了後はウズベキスタン選手ともほとんど目を合わさず、観客に応えるもなく、みな伏し目がちに足早に控室に消えて行った。地元サポーター達の罵声を浴びながら。ウズベキスタンの選手達はしっかりと大応援団に挨拶に行ったのに。
試合終了後何十分も熱心に “マレーシア ! マレーシア !! “ とコールするサポーター達がいた。若い人たちが多い。彼らの心境、分かる気がする。
昔、韓国も日本もマレーシアには勝てなかったんだよ…..君達が生まれる前かも知れない。そう言う時代があったのだよ…..
それは80年代、”メキシコ五輪の栄光“を知らない我々世代が”メキシコの栄光をいつか再び“と夢見たころを同じ思いをしているのかも知れない。
いつかその日がまた来るかも知れない。協会が君達のその熱意を感じさえすれば…….
生でアジアカップを見ることができて、うらやましい限りです。
こちらはテレビの地上波の放送すらやりませんからね。
ということで実際の試合を見ていないのですが、
文字だけの知識では、サッカールーズはまだフィットしていないようですよ。
(ベテラン有名選手を中心として)
タイ戦はフィットした(つまり真面目に準備したと思われる)若手が活躍したようですね。
グレラなどはまだまだ動けていないらしいですね。(見てないけど。)
また、よろしくお願いします。