5月30日、オーストリアの Graz で行われた England との試合は“惜敗”に終わった。ただ誰もが感じただろうが24日の韓国戦よりは完成度が上がっていたのも事実。
初戦のカメルーン戦まであと10日。限られた時間で少しでも“進化”して我々を幸福にして貰いたいものだ。
この試合は“母国”ではどの様に報じられたのだろうか……
With this sort of luck, England will win World Cup
5月31日付 Times より
“It will be all right on the night. 今夜のところはまぁこのくらいで。” それは London の West End から Broadway に至るまで劇場主が駄作を演じた後あるいは昨日の England がドレスリハーサルで失敗した時に Fabio Capello がそんな悦に入った考えの一つを持たないと言わなんばかりに使う常套句だ。
昨日のSound of Music の国ではCapello によるオーディションの過程の一部が行われたと認識された。それはワールドカップ最終メンバー23人を選ぶのにどの選手を落とそうかと云う心苦しい決定が残された。もしそれがもっと少ない人数で済むのなら、彼がどうしても南アフリカに連れて行きたかったのは16人かせいぜい17人であっただろうに。
England は昨日午後 UPC-Arena で大変な幸運による試合後半の Marcus Tanaka と Yuji Nakazawa の2人のCBが偶然のミスから引き起こしたオウンゴールにより勝利を得た。そのツキは Capello が選んだ最終メンバーに含まれる何人かの上にも同様に輝くだろう。例えばそれは Michael Carrick か Emile Heskey がそのポジションにメリットを持っているではなく、Tom Huddlestone, Darren Bent そしてその他の選手達が自分のオーディションに喘いでいると言う事だ。 Capello がそれを“何も変わっていない”と鈍らせる様に。
恐らくそれは6月12日 Rustenburg でのアメリカ戦の本番前に全てがリアルにチェックされるだろうと言う事だ。4年前 Old Trafford で Jamaica を 6-0 で降した事をミスリードし、ドイツに向かう道中で見られた選手達が持っていた過信が今回は見受けられない。
Glen Johnson, Rio Ferdinand そしてTheo Walcott はコンディションの調整に喘ぎそして絶対的な第1GK候補と攻撃的選手の何人かに疑いを持ちながら中盤にあいた穴を埋める確固たる候補選手が見当たらない。マイルドに言えば南アフリカに到着次第改善の余地があると言う事だ。
もちろん過去のワールドカップ 直前の試合では今回の様なメキシコ、日本相手に黒星を喫しなかった時よりも酷い試合もあった。過去20年間でも最高の結果を残した大会前、1990年ワールドカップ イタリア大会前にはチュニジア相手に 1-1 と、とんだ試合結果を残し、EURO’96 の前には香港リーグ選抜相手に 1-0 の辛勝に終わり大会に恐怖感を残した。
スペインは29日土曜日のサウジアラビア戦で勝利を挙げるのにはロスタイムのゴールが必要だったし、ポルトガルはホームで先週 Cape Verde と 0-0 で引き分けている事も特筆の価値があるだろう。
England はこれらの結果の様に“ it is all night on the night “ という希望的観測が付きまとうだろう。しかしこの先には多くのハードワークが必要だ。昨日展開された前半を見てみれば、-全ての England の選手達がボールコントロール、集中、判断といった基本的なところでエラーを繰り返した事に就いて- 集められた選手達が機能しなかったという事だろう。
Huddlestone も Bentも 彼らだけのプレーではCapello の最終選考を悩ますほどのパフォーマンスでは無いとみられた。そして前半の動きはショッキングであった。それは Wolcott が右サイドで Aaron Lennon が左サイドに置かれ確かにサイド攻撃の試みも見られたが、何度も流動性とコントロールに正確さを欠いた。
Bent は前半30分チャンスを得たがゴール枠はとらえられなかった。日本戦のゴールが何になるんだろうかという違いに就いての質疑はあるのだが、Heskey と Peter Crouch への信用が増した、そしてBent の最終メンバー入りのチャンスは煙の中に。
7分に遠藤のCKからから田中が Johnsonを振り切り放った低いドライブショットから日本がリードを奪ったままの前半を終えてのプレスルームでの議題はこんな酷い45分はいつ以来だろう、という事であった。 ある者は2005年の Belfast での試合、そして他の者は 1993 年 Wembly での San Marino 戦しかしうんざりさせられた事実は、この45分は Capello が指揮を執って以来昨年8月のオランダとの親善試合、2008年9月の Andorra とのワールドカップ 予選の最初の試合以来であるという事だった。Sven-Göran Eriksson の言葉を借りれば“後半はそんなに悪くはない”という事か?
後半、靴下を上げ直し、スタンダードを上げたと見られるのは3つの理由があった。一つは Johnson が Carragher に変えられ、スピードに欠けてそれが得意なスタイルで無いにしろ4バックに安定をもたらした事。 もう一つはメキシコ戦がそうであった様に Steven Gerrard が彼の危険察知感覚を持って中盤の真中に入ったこと。3番目はその才能が滲み出なかったにしろ、Joe Cole がWayne Rooney の後方に配置され、Cole の任務から必要であった輝きが発揮された事だった。
後半の立ち上がりに本田圭祐のハンドからPKを得た England が FA Cup の決勝戦でChelsea のユニフォームを着てPKを失敗したのに続き Lampard がPKを川島永嗣に止められた時、悪かった流れは更に悪くなったが、 Gerrard とRooney がゲームに慣れて来て、72分ついに Cole の右からのクロスを田中のクリアーヘッドがネァ-ポストから自軍ゴールに突き刺さり同点に追い付く事が出来た。
そして勢いを取り戻した England は試合終了8分前に Ashley Cole の左サイドからのクロスが中澤が目いっぱい伸ばした足に当たり川島を破ってゴールが決まった。その時の England サポーター達のチャントは少なくとも少しばかりの皮肉を込めて – We’re gonna win the cup であった。
脚注とすべきはこの試合は5試合目のRooney が完封された試合だった事。インスピレーションの輝きを見せた一方で田中の労を惜しまない、ファールとも取れるチャレンジにフラストレーションもあった。好むとも好まざるとも Heskey を得た時の方が Rooney はより良く見える。このHeskey の効果があるのなら England はゴールを挙げられないストライカーを使う余裕がある。
しかしまだ他にも減らすべき二次問題がある。 パニックや誇張は不要だ、初戦の9日前である木曜日に南アフリカに到着しれから大いに改善すべき事がある。
England、日本の選手達の採点は下記の通りだった。 Matt Hughes
David James 5 日本のゴールは彼の失敗ではなかったが目立ったシーンも無かった。前半終了で退く前にセーブをすることが無かった。恐らくアメリカ戦はスタメンだろう。
Glen Johnson 3 とんだ45分だった。控えの右サイドバックスペシャリストを1人しか選べないとFabio Capello を後悔させただろう。何度もボールを失い日本のゴールを許した。
Rio Ferdinand 6 ためらいがちに試合に入った。そして岡崎に振り切られる事も。しかしすぐに取り直し落ち着きを取り戻す。1週間で2試合出場した恩恵を受けるだろう。
John Terry 5 England 代表主将の後継者と初めて同じピッチに立ちなにやらぎこちなさそうだった。そして岡崎に振り切られる事も。だが次第に試合に入って行った。
Ashley Cole 7 殆ど注目されない災害の中で勝利をもたらす安心したパフォーマンスを続けた。 例えその様な信頼性がもし彼が故障に直面していれば暗雲を漂わせるとしても。
Theo Walcott 4 この試合で証明した事はLennonに譲ろうとしているウィングのポジションでフラストレーションの残るパフォーマンスだった。彼のペースと位置どりは日本を苦しめたが評価は落としてしまった。
Tom Huddlestone 4 彼を選出する為に起用したのだがアピールは出来ず何度も支配を許した。テンポの悪さも露呈。 Gareth Barry にチャンスを与えてしまった。
Frank Lampard 6 2度続けてPKを失敗してしまった。しかしまとまりのつかない中盤のベストプレーヤーとしてEngland を前線に押し出した。 短い時間だったが Gerrad と組んだ中盤が唯一の攻撃であった。
Aaron Lennon 5 前半半ばのチャンスで同点にすべきであったが川島に止められた。 右サイドに移ってから他のウィング達よりも脅威を与えた。
Wayne Rooney 7 後半ワントップに順応そして Gerrad とよくリンクした。しかしもし Heskey か Crouch のサポートがあればもっとやれただろう。
Darren Bent 3 England 代表としては最後の試合ではないだろうが、この酷い45分のあとしばらくは機会が無いだろう。至近距離からのヘッドがただ唯一攻撃に絡んだシーンだった。
Shaun Wright-Phillips (for Walcott, 46min) 5 いつもの様にエネルギッシュであったが Lennon と Walcott のもつ偉大な潜在能力の前には曇ってしう。夏休みのプランを練り始められるだろう。
Steven Gerrard (for Huddlestone, 46) 6 悲惨な前半終了後、劇的に England を改善させるスパークを加えた。 Lampard との中盤のコンビネーションは Barry が回復するまでのベストな短期オプション。
Jamie Carragher (for Johnson, 46) 6 Johnson が退いた後右サイドの守備を最大限再建した。しかし Liverpool のチームメイト同様攻撃面ではあまり脅威を与えられなかった。
Joe Cole (for Bent, 46) 7 この日最も素晴らしいパフォーマンスを披露。3つのポジションでプレーの質、パワーそして運動能力の高さを見せ自分のポジションを確保
Emile Heskey (for Lennon, 76) 5 ピッチにいることで安心感を与えられ、南アフリカ行き航空機にいる事が確認。ダイビングヘッドをミスしたがこういうことは起こりうる事だ。
Joe Hart (for James, 46) 7 2度の素晴らしい反応のセーブは代表での必要性をより強くし、未来の international GK の様に見えた。しかし James の経験が南アフリカではスタメンを意味するだろう。
Not used: Robert Green, Matthew Upson, Leighton Baines, Jermain Defoe, James Milner, Stephen Warnock, Michael Carrick, Peter Crouch, Michael Dawson, Ledley King, Adam Johnson, Scott Parker.
日本選手の評価は下記の通り。 Japan (4-1-4-1): 川島 6 — 今野 5,中澤5, 闘莉王 6,長友 5 — 阿部 5 — 本田 6, 長谷部 4,遠藤 6 (sub:玉田, 85 ),大久保5 (sub: 松井 72) — S 岡崎 6 (sub:岩政, 64 6).
Substitutes not used: 楢崎 、 川口、 駒野、 内田、 山村、酒井、 中村俊輔、 稲本、中村憲剛、香川、矢野、森本、永井
岡崎に替って岩政が交替出場した事にされているが実際は森本だ。
伝統の Times でも間違いはあるのか?
Devil in the detail as England require own goals to beat Japan
5月31日付 The Guardian
それは meaningless ( 意味なし)という形容詞の手錠をかけられた親善試合であった。 Fabio Capello は大喜びして Grazではワールドカップに向けて見るものが無かったと結論付けるだろう。 そしてもしこの試合が取るに足らないものであったならなぜこういう試合を組んだのかという議論がなされるだろう。
England は 交代選手によって大幅に改善され Joe Cole の起用とAdam Johnsonを使わない事が大会に置いて England の順位を強化すると思われる。72分、先制ゴールを決めた Marcus Tulio Tanaka がヘッドで同点ゴールを献上してしまったがそれは Cole のクロスからだった。それまでは、 Lampard のPKを止められた瞬間が最も深刻な時間であった。
しかし82分、 England は Ashley Cole のクロスが Yuji Nakazawa の足をかすめた幸運な相手の自殺点によりリードを奪う。Capello のチームを最も良く表現されると事はまだ調整中なのでもっと調子が出てくるであろう、と言われる事だ。 ここでの試合結果は重要でないが選手達は最初当惑させられていた。
例えば44分、Wayne Rooney のパスの出す方向が悪くてボールが Theo Walcott を大きく通り過ごしてしまいゴールキックにしてしまったのを見た時は苦悩をしてしまった。前半を見ていると誰もが苦悩に喘ぎ新たな困難が England の上にもたらされている様であった。
先制ゴールは不運であった。 Ysuhito Endo の右からの低いCK を Glen Johnson の前でボールを受けた CB の Tanaka がゴール右隅に低い弾道で蹴り込んだ。 David Jamesは久々の4月9日に England 代表GK出場以来幾多の不運に見舞われたが、またも巻き込まれた。
しばらくの間、その回復は安定しなかった。19分 Rooney が慣れない左サイドに置かれた Aaron Lennon にボールを送りシュートに持ち込むが川島の正面を突く。
この時間、このサイドの多くの部分では希望が持てなかった。 例えばDarren Bent この試合をスクラップにするところだった。彼のベストシーンは中澤がインターセプト出来ずに受けたRio Ferdinand からのロングボールにヘッドで合わせた時であったが、川島のプレッシャーの前にゴール枠を捉えられなかった。 Bent は後半ベンチに下がった5人の選手の1人であったが、おそらくワールドカップ 最終メンバー23人に残るのは難しいであろう。
後半 Rooney を1トップにし Cole を後ろに置いた。しかし England はまだ停滞していた。日本はまだ 本田圭祐のLampard のFKを壁の中で手で弾く偏心を持つ余裕があった。Chelsea のMFは FA Cup 決勝戦に続いてそのPKを失敗した。川島が右に倒れ込んでセーブをした。
England が支配率を高める一方で、対戦相手もリードを広げるチャンスもあった。James に替って投入された Joe Hart が左に素早く動いて交代出場の森本のシュートを止めた。Capello のチームは満足感無しに南アフリカに向かうに違いない。
Guardian には選手の採点が載っていなかったみたいだった。
1995年6月3日 UMBRO CUP に招待された日本代表は聖地 Wembly でEngland と対戦し 1-2 で惜敗した。日本がまだワールドカップに出場した事が無い時だった。この試合日の前後、英国紙は結構紙面を割いて日本の事を報道していた。そして試合前日の Guardian には Rising son lights up Japan とのヘッドラインで KAZU の事を報道していた。私は当時の新聞は今での大切に保管している。
今回は電子版しか見ていないが特に俊輔が登場せず、川島が第二GKであること等日本の事は触れていなかった。そして日本が試した阿部をアンカーに置く 4-1-4-1 の布陣に就いても何も触れられていなかった。それもワールドカップ前で England の最終選手選考が大詰めだったからだろう。
5月24日 のメキシコ戦でプレーした選手でスタメン出場したのは Glen Johnson, Rio Ferdinand, Aaron Lenon, Wayne Rooney, Theo Walcott の5人。 Ferdinand, Rooney はコンディションを上げる為と試合数日前に Times 紙で報道されていた 2 トップの布陣を敷く為だろう。そして他の3選手は最終テストの為と思われる。もし日本が勝っていたらどんな報道がなされたのだろう….それだけに悔しい“惜敗”だった。
つづく
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