Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

撫子 ! 很好 !!  非常好 !!!

2008-08-18 | 夏季五輪

約1年前の2007年8月17日、杭州の Hangzhou Dragon Stadium 。この試合でも終始 39,817 人の大観衆から言われなき理由でブーイングを浴び続けた日本女子代表チームは対戦相手のドイツに 0-2 で敗れ、FIFA Women’s World Cup での1次リーグ敗退が決まった。 この前の上海で行われた2試合でも彼女達は理由のないブーイングの嵐にさらされた。ドイツ戦を終えてピッチ上でブーイングを浴びせ続けた観客に向かって “ ARIGATO 謝謝 CHINA “ の横断幕を掲げ一礼する彼女たちに中国人の観客達は指を指して嘲笑していた。

   ”何やってんだ?負けたあいつらは??“ 

   

中国国内のネットに多くの書き込みが。“日本人は罪を認めろ” あまりの酷い書き込み、台湾人の友人達が教えてくれた。そして言った。“我々台湾人は誰に対してでもあんなことはしない。 日本政府は何をやっているんだ?もし日本で中国チームにあんなことをやったら大陸の人間はどんな反応をすると思う??”

しかし撫子達は泣き言を言わなかった。自分たちの力不足を認めそのリベンジを翌年の五輪に向けたのだと思う。そしてまさに彼女達の為にそのお膳立てが整っていた。

8月15日。何度も言わせて貰おう。日本人の殆どが忘れえぬ日。そして忘れてはならない日。終戦記念日。第二次世界大戦で日本が同盟国の無条件降伏を受け入れ敗戦が決まった日だ。しかし日本が屈したのは連合国ではなくアメリカのみ。中国、韓国、朝鮮に戦争で敗れたわけではないのだ。そし63年後のこの日、日本女子サッカー代表チームはベスト4進出をかけて地元中国代表と歴史を作るべく世紀の一戦に臨む。こんなに試合前に興奮と言うか燃え上がるような感覚があっただろうか……

撫子のスタメンはノルウェー戦と同じメンバー。5得点を挙げた攻撃陣のみならず強豪のノルウェーを1失点に抑えた守備陣もそのままだ。

   

一方の中国は1次リーグ最終戦のアルゼンチン戦でスタメンGKだった韓文霞に替って張艶茄を起用。しかし張はスウェーデン戦、カナダ戦ではスタメンGKだったこの大会ではレギュラーGK。昨年のワールドカップ、そして 2004,2006年のFIFA U-20 に出場している。ただ韓文霞もワールドカップは 2003, 2007 年大会に出しているベテランGKだ。CB 翁新芝 Weng Xinzhi は2004, 2006年のFIFA U-20 に出場したが昨年のワールドカップは予選に出場しながら本大会にはメンバー入り出来なかった。その翁とCBを組むのが、主将でCBの李潔 Li Jieはアテネ五輪、2003, 2007 年ワールドカップに出場した29歳のベテラン選手。右サイドバックの劉華娜 Liu Huapa は2007年ワールドカップ出場。 左サイドバック周高萍 Zhou Gaoping はワールドカップ出場経験は無いが 2006年FIFA U-20 準優勝メンバー(優勝は北朝鮮)ボランチは2003年、2007年ワールドカップそしてアテネ五輪も出場した毕妍 Bi Yan とワールドカップ3大会 ( 1999,2003,2007 年 ) そして五輪2大会 (シドニー、アテネ) にも出場した28歳のベテラン浦玮 Pu Wei 。
2列目右サイドは北京五輪が国際トーナメント初登場の24歳の張娜 Zhang Na 、左サイドはアテネ五輪、2007年ワールトカップメンバーの張颖 Zhang Ying 。2トップはアテネ五輪、ワールドカップ 2003年、2007年大会に出場した韓端 Han Duanと2004年FIFA U-20 準優勝メンバーの徐媛 Xu Yuan。
指揮を執るのは商端華監督。昨年ワールドカップ後に Domanski Lyfors Marika 氏からチームを引き継いだロワゼル氏の後を継いだ。やはり中国協会とは言葉の面も含めて中国人監督でなければ駄目か?しかし商監督の目は鋭く、五輪前に浦瑋をCBからボランチに戻し、劉華娜を右サイドバックに復帰させた。要注意は9番のFW韓端。北京五輪でもスウェーデン戦でゴールを挙げ、今年6月ヴェトナムでのアジアカップ準決勝の日本戦でも止めの3点目を挙げている。この試合2得点の王丹丹はベンチスタートだった。
  
  

緊張の中のキックオフ。秦皇島競技場は “加油 ! 加油 !! “ の大合唱が。そして日本選手がボールをキープするとブーイング。そのブーイングの中4分28秒には大野がドリブルシュートを放つとGK張艶茄が右に倒れこんでセーブ。7分15秒には近賀がクリアーボールを拾ってロングシュート。10分には李潔が後ろから澤にチャージに入ったのが反則に取られFKを得る。宮間が蹴ったFKは一旦跳ね返されるが澤が拾い右サイドライン沿いからゴール前の安藤梢に送る。ファーサイドを狙った安藤のミドルは惜しくもポストの左側を抜けて行った。14分にもCKを得て宮間が入れたショートコーナーはクリアーされたが、再び中国陣内に攻め込み大野が翁新芝の足に当てて再びCKを得る。その宮間がファーサイドに上げたCKに澤が飛び込み見事なヘッドが中国ゴールに飛び込み先制ゴールを挙げた。岩清水と大野がネアーサイドに走りディフェンスに入ったFW韓端、DF翁新芝、劉華娜、周高萍の3人をネアーサイドに引っ張りファーサイドに走り込んだ澤にスペースを作った。澤も競りに来た李潔、張颖の間に割って入って放った見事なヘッドであった。
 
     

     
  
しかし6月のアジアカップでは澤の先制ゴール後連続3失点で敗れている。失点後中国は韓端が左サイドに開き中に浦瑋が前線に上がってきたりするが日本のDF陣も対応よくラストパスを通させない。ロングパスを韓端に通そうとするのだが、低い位置からしかボールが出ないのでその前に日本のDF網に引っ掛かる。池田を中心にラインコントロールが良い様だ。またボランチに入った阪口がDFラインの前で相手攻撃に当たりに行くのでDFへの負担を軽くする。
日本は前半27分に大野がドリブルシュートを放ったり、矢野、近賀の両サイドバックの上がりもよく攻勢が続く。1対1で強い上に、ボール回しが良くボール支配率が時間を追って上がるので安心して見られた。
35分に反則を取られ毕妍のFKが攻撃参加した李潔を狙うがGK福元がパンチでクリアー、こぼれ球を徐媛にPA外から撃たれたが大きく外れた。これが初めてひやりとしたシーンだった。38分には周高萍のスルーパスに徐媛が走り込むが福元が判断良くスライディングで大きクリアー、この試合福元の好プレーも目立った。前半もこのまま日本リードでと思った44分34秒、韓端が後方からのロビングをヘッドで落としたところを池田が福元にバックパスをしたがコースが悪くゴールラインを割りCKを与えてしまう。あわや自殺点というところだった。そのCK、韓端がヘッドでファーサイドに送り走り込んだ張颖が放ったシュートはGK福元がパンチングでクリアーするが小さく、矢野が頭でもう一度クリアー、しかしこれも小さく至近距離から李潔に撃たれたがボールは大きくクロスバーを越えてくれた。 その前に阪口のボールを受けた永里のミドルが僅かにバーを越え、その直後にも永里のパスから安藤が放ったシュートが相手DFにあたり大きく弾んだ所を永里が走り込んだが惜しくもGK張艶茄に防がれたり連続して惜しいシーンがあっただけにここで失点していれば試合結果は判らなかっただろう。

後半に入っても一進一退の展開が続く中55分に張颖に替ってアジアカップ日本戦同点、逆転ゴールを連続して決めた王丹丹を投入し3トップ気味に、57分には張娜を下げて娄佳慧を入れて同点ゴールを狙うが日本選手の出足は悪くなく中国は日本ゴールに近付けない。日本も53分に矢野を下げて柳田美幸を入れ右サイドバックを替える。これで韓端は右サイドに開き辛くなった。
そして79分撫子に待望の追加点が生まれる。近賀のヘディングのクリアーボールを拾った大野が李潔をかわしてそのまま中央をドリブル突破、PAのすぐ外に待ち構えた永里とワンツーで抜け出す翁新芝と劉華娜がマークに入りもつれて倒れるがこぼれ球を拾った永里が周高萍をかわしてGK張艶茄の出鼻をファーポストにめがけて撃ったシュートはポストの内側にあたってゴール内に転がり込み試合を決定づける2点目が入った。

        

        

この得点を機に多くの地元観客が帰り支度を始めたとか…..
それでも中国は日本ゴールを目指す。83分には浦瑋のパスを受けた王丹丹が近賀がマークに入る前にミドルを放つがこれは福元が判断良く前に出て抑える。85分には韓端が岩清水をかわしてミドルを放つがこれも福元がパンチングで防ぐ。後半の半ばから中国は日本の右サイドを突く様になったがこれは安藤が攻撃参加した後の空いた所を狙ったもの。しかし近賀らの動きがよかったので失点には至らなかった。近賀はニュージーランド戦のミスをもう帳消しにしたことだろう。
日本ベンチは85分に大野に替って丸山佳理奈が、87分には永里に替ってボンバーヘッドの荒川恵理子が入る。中国は李潔を前線に上げて得点機を狙う。ロスタイムは4分と表示されたがどこにそんな時間があったのだろう?90分33秒には毕妍のFKに韓端をはじめ中国選手数人がなだれ込む中福元が出て来てボールを直接キャッチ。中国選手の中には髪留めのバンドを外す選手も。そしてついに試合終了のホイッスルが鳴り響き五輪ではあのメキシコ五輪以来の準決勝進出を撫子達が成し遂げた。シドニー五輪の出場権を失った時は所属先のチームが経営不振に陥り解散したチームもあり女子リーグ(当時はL リーグって言われていたっけ…..) の将来が危惧されたが反対に選手達は“サッカーを出来る喜び”を認識できた事だろう。

試合後中国のエース韓端は “中日(日中)の間には実力差がはっきりとある事をサッカーファンは理解してくれることを望む。”と地元紙に答え、“日本の技術がよくとても高いレベルを保持している。私はこの9年間まだ一度も世界の大会でベスト4に入った事がなく今回も成し遂げられなかった。あまりいい思い出はないがこれからも引き続き努力は続ける。” “日本選手達のボールの受け渡しの技術、試合の進め方等全てが私達よりすばらしかった。私達全てのメンバーはベストを尽くしたのですが目標のベスト4には進出出来なかった。最後に負けてしまったがこれも1種の現実です。中国の女子サッカーは再び世界の山頂に登る為にとても長い道がまだあります。” と述べたとの事。

  

また商端華監督も “日中間には実力的に開きがある、日本は世界の一流レベルを披露した。彼女達の技術は素晴らしくアジアサッカーの発展に寄与している。また人材発掘の体制が素晴らしくそれらは中国も見習うに値する” と日本の実力を事を試合後の記者会見で認めた発言をした。そしてこの9年間で五輪 、世界選手権でのベスト4入りを逃し続けていることにも言及し“いつの日か世界の4強に返り咲く”事も約束した。

    

そして李潔主将は“オリンピックのベスト4入りを目指してこの2年間に渡って備えたのだけど結果でなくて残念。”と記者会見でコメント。この大会で代表から退くのかという問いには“まだ判らない”と答えた。

1991年中国で開催された第1回 FIFA Women’s World Cup に日本の女子はアジア代表で出場を果たしている。Jリーグの開幕する2年前、男子五輪チームがメキシコ大会以来のアジアの壁を破る5年前、そして悲願の男子がワールドカップへの切符を手にする7年前の出来事だ。 男子より先に世界の扉を開いた女子サッカーの進撃はここで留まらず更なる進撃を今度は北京で見せて欲しいものだ。