Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

エース一発 Socceroos 最終予選へ前進

2008-06-02 | 夏季五輪
紆余曲折の末予定通りに開催されたワールドカップアジア地区3次予選のA組、オーストラリア対イラクの大一番 (と言ってもこの組は全てが大一番かも知れない….)はホームのオーストラリアがイラクを 1-0 で破りこれで2勝1分の勝点7となり最終予選進出に大きく前進した。 
前日まで Gold Coast に滞在し何とか仕事をこの日の午前中で終わらせ車を飛ばして Brisbane に移動。心配された雨もこの日は試合開始までには降りださなかった。 ホテルに荷物を置いてそのまま徒歩で競技場に向かう。試合が行われる Suncorp Stadium が近付くにつれて黄色のシャツを着た人達が増える。 Socceroos のレプリカを着た老若男女だ。私も KEWELL の名前の入ったシャツを持っているが今はワールドカップ予選期間中。ここは着なれた SAMURAI BLUE の NAKAMURA のシャツを着て行った。
競技場に到着するとイラク代表のレプリカやイラク国旗を纏った集団が。彼らを見ると試合が行われて本当に良かったと思った。所定のカウンターに行って自分のチケットをピックアップする。実はこれが一番心配なことでもあった。何かの手違いで受け取れ無かったら最悪当日券を買おうかと思っていたがチケットは完売だったらしく反対側の窓口は全て閉まっていた。パスポートとクレジットカードを見せて無事にチケットをピックアップ。やれやれ…..と思っているとアジア系の男性に“チケット余って無いか….” と訊かれたので ”悪いけど自分の分しか…”と断ることに…..

Stadium に入るがキックオフまでまだ1時間程度ある。珍しく早い時間に競技場を入りした…..と勝手に感心していると、既に多くのイラク人サポーター達が国旗を広げて陣取って歓声を上げている。すると一人の白人男性がイラクサポーターのリーダーと思しき人と話をしている。野次馬根性よろしくそこに近づいてみるとどうやらイラク国旗を仕舞ってくれとの事でそれは規則で無駄に観客席を占領してはいけないとの事であった。イラク人リーダーが“ブラジルの国旗ならいいのか?オーストラリアの国旗なら良いのか?”と訊くが係り員は“どこの国を問わず席を占領しないでくれ。”との事であった。リーダーは素直に従い国旗を仕舞いだす。あぁぁ、写真を撮っておけば良かったなぁ..

しかし彼らの試合前の気勢は留まるところを知らない。さっきの係員に聞いたら F.F.A. の役員との事。試合終了までスタンドでトラブルが発生しないか心配だ….と言っていた。次のステージに進めば日本と対戦することになるかもしれない、でも日本人はマナーが良いから大丈夫だよ、と話すと彼も”勿論日本人なら安心して迎えられる。”と言った。その前に日本が3次予選を突破せねば.......

  

そしてイラクのリーダーにも声を掛けた。オーストラリアに住んでいるので英語で話せた。1993年のドーハの事は彼も良く知っていたそして気勢があがるサポーター達に拡声器を使って何やら私の事を紹介してくれた、どうやら日本からイラクを応援しに来た事になっているらしい、みんな一斉に、ジャパン!! とかジャポン!! とか私に向かって叫んでくる。そして何十枚も一緒に写真を撮られた。もしかしてこの人達は最終予選で日本まで来るかもしれないなぁ……… リーダーをはじめ皆と握手をしてとりあえず自分の席に戻ることにした。チケットは完売と言ってもこのイラクサポーター周辺だったら1席くらい空いてるだろう、だから自分の席が見難い席だったらこのゴール裏の一角に入れて貰おうと思いながら席を探した。
しかし、なかなか見つからない。係員に訊いても良く解らない。3人目に訊いたフォーマルな服装の係員が正確な場所がわかる係員で席の近くまで連れて行ってくれた。そこは中二階にあるボックスシートでワンボックス10人分の座席があり私のボックスには既に9人が掛けていた。彼らはみなイラク人であったが日本代表の私のレプリカを見て暖かく迎えてくれた。訊けばみなオーストラリアに住んでいるわけでは無く何人かはこの試合の為にニュージーランドからやって来たとの事。隣に座っている人としばしイラクサッカー談議に花が咲く。当然ドーハの事も知っており、日本戦で同点のヘディングシュートを決めたオムラムを韓国が招待した事も知っていた。私が1982年のアジア大会の話をすると“その時 YOU はいくつだったんだ?”と驚いていた。この試合が行われないかと心配したとも言うと、“今のイラクは難しい。他の国の様な状態では無いから”と寂しそうに言っていたのが印象的であった。
すると他の人が“日本は今日オマーン戦じゃなかったのか?”と尋ねて来るので“日本の試合は明日。YOKOHAMA で開催される。”と答えたら、“日本にとってオマーン戦は easy job だろう?”と言うので “ I hope so “ とだけ答えた。

試合開始10分程前になってスタメンの発表が始まった。イラクは選手の名前が映し出されるだけであった。スタメンのうち昨年アジアカップのオーストラリア戦に出場した選手が8人いた。復調が伝えられていた Salih Sadar はベンチスタートしかし怪我が心配された MF Taher Hawar そして Bassim Abbas Gatea はスタメンに。エースの Younis Mohamed Khalef もスメタンに入った。 一方の Soccreoos は5月23日のガーナ戦のスタメンから5人が抜け、昨年のアジアカップのイラク戦のスタメンでメンバーからで外れたのは Mark Viduka  Patrick Kisnorbo そして夫人の出産の為合流出来なかった Lukas Neil の3人。Bretto Holman はベンチスタートでこの日のプログラムの表紙に書かれていた " We want revenge " がまさに当てはまるスタメンとなった。
ワントップには Celtic でプレーする Scott Macdonald, その後ろに Harry Kewell, Mark Bresciano の二人が置かれることに。 Kewell が映し出されると大歓声が沸き起こる。やはり彼はここではスーパースターだ。期待の Joel Griffiths はベンチにも入れ無かった。 A- League 勢では Newcastle Jets のCB, Jade North がスタメン入りし、DFの Rodrigo Vargas ( Melbourne Victory ) FW のBruce Djite (Adelaide United ) の二人がベンチ入りを果たした。改めて観てみると2006年のワールドカップメンバーがベンチ入りした選手を含めて8人いる事に。
国歌に続きシドニーで開催されていたFIFA Congress に出席していたブラッター会長に選手が紹介される。いつ Brisbane 入りしたのだろう?そしてどこのホテルに宿泊しているのだろう?

  

そしていよいよイラクのキックオフで試合が始まった。 開始早々イラクの Taher Hawer が左サイドを突破してシュートを放つが GK Schwarzer がコーナーへ逃げる。4分にはCKから Schwarzer が弾いたところをPAのやや外から思い切りよく MF Emad Mohamed がシュートを放つとそのミドルはクロスバーの内側を叩いてそのまま下に落ちるもラインを越えなかったという審判団の判定でノーゴール。実に惜しいシュートだった。しかしここからオーストラリアが攻勢に出る。6分には Grella, Kewell と渡りゴール正面で Macdonald がヒールで流した所をダイレクトで Bresciano が撃つがこれは GK Noor Hassan がブロック。 そのこぼれ球を David Carney が拾って撃つがこれはイラクDFに当たってサイドラインを割った。9分にも Kewell と Carney が左サイドを突破し最後は Bresciano が撃つがここはイラクDFがブロック。10分には右サイドを Wilkshire が上がり Culina に渡してシュートを導くがこれはサイドネット。両サイド攻撃からシュートに繋げるが、特に左サイドバックの David Carney は元々攻撃力があり左足が利き足なので攻撃参加をした時に存在感を示す。昨年まで Sydney FC でプレーをし ACL の浦和戦にも出場している。18分には Mahadi Karim, Nashat Akram そして Saed Attiya の3人に囲まれながらも Carney が上げたクロスに Kewell がヘッドで合わすがGKの正面を突いた。23分にはカウンター攻撃からKewell に繋がった所に Ali Irhema の激しいタックルが入りイエローカードが出される。 Kewell にはイラクDFも激しく行く。そこで得たFKを Wilkshire がゴール前に送ると攻撃参加したCBの North が頭で合わせるが GK の正面に。 オーストラリアの攻勢が続く中イラクが2度目の決定機を作る。右サイドを MF Mahadi Karimi が上がり対峙する Carney をかわして中にスルーを送るそこに走り込んだ Emad Mohamed がシュートを放つがここは Schwarzer がファインセーブで防ぐ。この後左サイドバックの Carney がMFに上がり Beachamp, North そして Emerton の3バックに。中盤に左から Carney, Grella, Bresciano, Culina を並べ、FWを Kewell, Macdonald の2トップに。これで前線に出た Kewell によくボールが出る様になりバイタルエリア付近で Kewell のドリブルが冴えて来た。それでもイラクは最終ラインを6人で固め得点を許さない。36分にイラクはこの日3つ目のビッグチャンスを逸した。右サイドを Mahadi Karimi が上がり中にクロスを入れるとそこにはフリーで走り込んだエースの Younis Mahmound が。しかし弾んだボールに身体を折り曲げ頭で合わせたシュートはゴールポストの右側に外れて行った。天を仰ぐ Younis 。

  


前半の3つのチャンスのどれかを決めておけば結果はアジアカップの再現になったかもしれなかったのに…… 前半は2分なったロスタイムを使っても両チームゴールが生まれなかった。 Kewell, Younis の両エースにあと少しの決定力があればと思われた。 イラクは終盤オーストラリアのサイドバックの裏を、特に Carney の裏の右側を Mahamed Karim が突いてチャンスを演出していた。 

そして私はこのままここで観戦することにした。全体が見渡せてなかなかの席だったから。それに周りの人達ともいろいろイラクの事を話したかったので。

  

後半に入っても選手の交替は無かった。立ち上がりの両チームのフォーメーションを確認しようと思ったところに先制ゴールが生まれた。右サイドでFKを得た Australia は Emerton が中に入れると Kewell がドンピシャのタイミングで頭で合わせてイラクゴールを割り先制ゴールを挙げた。 スタジアム中が大歓声で包まれる。しかし我々のボックスは私以外、みなイラク人なのでオフサイドでは無かったか?と思ってしまうほど静かだった。隣の人が“DFのマークが甘い…..” と渋い表情。あれだけチャンスをものに出来なかった Kewell があっさり先制ゴールをあげるところはさすがストライカーと言えるだろう。

  

試合再開後は何故か?イラク選手が倒れてファールを貰うシーンが続いた。これはそれだけオーストラリアDF陣のマークがきついのか?それともイラク選手達がファールを貰いに行っているのか?しかしイラクはなかなかオーストラリアゴールに迫れ無い。後半のフォーメーションはまた4バックに戻ったが前線は Macdonald と Kewell の2トップ。右サイドバックの Emerton が上がって来て対峙する Hawar Taher を抑えに来るのでイラクは攻撃時にボールが繋がらなくなって来る。ボックス内からは舌打ちが続く。 62分になるとリードしているオーストラリアベンチが先に動く。62分 Bresciano を下げて 守備的MFのCarl Valeri を入れ65分には Macdonald が下がって Brett Holman が入った。 Macdonald は思うような仕事ができただろうか……?  ここでオーストラリアは Kewell のワントップになりCarney を中盤の高い位置に上げて 3 バックに戻した。66分には右サイドの Wilkshire から入れられたボールを Kewell がフリーで撃つが力なくGKの正面に。追加点の絶好のチャンスであった。戦況を変えたいイラクは67分にコンディション不良が伝えられていた Salih Sadar が Mahadi Karim に替って投入される。 Mahadi は高い位置にいて前線の Younis , Emed Mohamed をサポートする。77分大歓声に送られて Kewell がベンチに下がる。絶好機も外したがこれまで唯一の得点を決めた選手に大きな拍手が送られる。替って投入されたのが Adelaide United の Bruce Djite だ。五輪チーム候補選手でもあるが北京五輪後は欧州のクラブチームへの移籍の噂がある。もしそうなればACLで Adelaide と対戦する鹿島サポーター達にとっては吉報となるが…….

80分を過ぎるとイラクが連続してチャンスを掴む。81分には Younis がドルブルで中央を突破すると Beachamp, North そして Grella に囲まれながらもボールをキープし強引にシュートを放つが DFの一人にあたったボールが弾みフォローに入っていた Salih Sadar に当たりゴールラインを割ってしまった。82分には縦パス1本でに反応した Hawar Taher がほぼ中央から抜け出てシュートを撃つが Schwarzer がブロック。 この日のヒーローは Kewell ともう一人はこの Schwarzer だった。

  

86分には Djite の右からのクロスに Holman がファーサイドから走り込んで撃つがボールはサイドネットを直撃。これをゴールインと思った観客が大歓声をあげる。この直後にイラク国旗を纏った観客2人がピッチに走り込んで来た。彼らはなかなか出て行こうとしないのでイラクの選手がなにやら説得する様に話しかける。スタンドからはブーイングの嵐だ。ようやく二人は捕まり試合が再開される。

  

試合が再開され88分には右サイドから上げられたクロスを North が必死にコーナーに逃げる。そしてロスタイムが4分と表示される。まだイラクにチャンスがあると思うがここでボールキープの出来る Djite, Holman の存在が効いてくる。それでも“ロスタイム”と言えばイラク、と思うのだが結局イラクは同点ゴールを挙げる事が出来ないままタイムアップ。オーストラリアはエース Kewell の1発でワールドカップ予選4連戦の初戦をものにした。
大歓声が上がる中ボックスの人達は私を含めて粛々と帰途に着き始める。そしてみんなと握手を交わしながら別れの挨拶を。オマーン戦の事を知っていた人が “ Good Luck !! 明日のオマーン戦に” と言ってくれた。 帰途に着く途中何人かの Aussie とイラク系移民に声を掛けられた。私の青色のレプリカを見て。最終予選でオーストラリアとやることになったらどこの街で開催されるのだろう……ってなことを考えながら。

でもその前に3次予選を突破せねば。まずは明日のオマーン戦だ。

部屋に帰って昼間買っておいた Take Away の寿司と取引先の人に貰ったインスタントみそ汁の晩御飯を満喫した。やはり日本人はご飯とみそ汁だなぁ…………..