Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

不安を煽るなかれ、されど慢心は禁物

2008-04-09 | 夏季五輪
3月26日、マナマで開催されたワールドカップ予選、日本は 0-1 でバーレーンに敗れた。試合直後からマスコミは危機感を煽る報道を並べる。最終予選の前のラウンドで黒星を喫したのは1989年6月25日、平壌で開催された朝鮮民主主義人民共和国との試合で 0-2 で敗れて以来19年振りとの報道を目にした。 あぁあれからもうそんなに経つのか……..しかしその試合そしてあの時の予選を当時実際に競技場やテレで観た人は今のマスコミ関係者で何人いるのだろう…….

あの時のワールドカップでアジアに与えられた出場枠は2カ国。この予選の直前に3年後のバルセロナ五輪からは23歳以下の大会になるとの決定がなされ、代表の世界への挑戦はワールドカップのみとなっていただけに何とか少しでも長くワールトカップ予選に残ってほしいと願っていた。しかしながらアウェーでのインドネシア、香港には得点を挙げられず引き分けに終わり、ホームに北朝鮮を迎え2-1 の逆転勝利を納め、続くインドネシア戦に 5-0 と快勝したものの神戸で行われた香港戦でまたも 0-0 で引き分け、勝たねばならない平壌での北朝鮮を迎えたのだった。試合は開始直後に長谷川健太がスルーパスで抜け出し GK と1対1になるがそのドリブルシュートをGK キムチウォンにぶつけてしまい先制のチャンスを逸すると後は防戦一方。前後半に1点ずつ許し 0-2 で敗れ北朝鮮が日本を抑えて最終予選に進んだ。この年の秋にシンガポールで開催された最終予選に進出したのは他に韓国、UAE,カタール、中国 、サウジアラビア。当時の日本はアジアでもその程度のランクであった。 しかしこの当時のチームをベースにKAZU ラモスを加え以降爆発的な日本サッカーの興隆に続く。

今、日本はアジアでもトップクラスの実力を誇る。しかし ワールドカップ への出場権は予選を勝ち抜かねばならず、ワールドカップに出場したい国は日本だけでは無くアジア中の国々が日本同様にワールドカップ出場への思いを馳せておりバーレーンでも例外では無い。 3年前のワールドカップ予選で対戦したバーレーンは完全に“格下”では無く、ホーム、アウェー共に 1-0 の辛勝で、アジアカップでは終了直前まで 1-2 でリードを許していた相手。そのアジアカップではバーレーン史上最高の4位に入っている前回のワールドカップ予選ではアジアでは5位になりトリニダードドバゴとのプレーオフの末ワールドカップ出場を逃している。  3月26日のバーレーンのスタメンを見ると前回のワールドカップ予選のメンバーが7人、2004年のアジアカップ経験者が FW Aala Hubail と MF Mohamed Salmeen そして Sayed Mahmood Wadaei の3人。この3人はアテネ五輪予選のメンバーでもあり他に DF のSayes Mohamed Husain もその一人。そして昨年のアジアカップのメンバーが6人。そこにナイジェリアからの帰化人選手 MF の Abdulla Baba Fatadi そしてチャドからの帰化人選手 MF の Abdulla Ismaeel Omar を加えたメンバー構成。要注意選手は何と言っても FW の Aala Ahmed Mohamed Hubail 。1998年ドーハで開催された AFC U-16, アテネ五輪予選、2004年のアジアカップ、そして前回のワールドカップ予選の日本戦に出場。アジアカップでは初戦の中国戦で同点ゴール、準決勝の日本戦では2得点を挙げており、昨年のアジアカップでは韓国戦で決勝ゴールを挙げている中東地域でも屈指のFWと言っても過言でなく “バーレーンのペレ“とも呼ばれているらしい。
そして策士と言われているミラン=マチャラ監督。オマーン、クウェート代表を率いて日本とも戦ったが1996年UAE で開催されたアジアカップの準々決勝戦。加茂監督の提唱するゾーンプレスを嘲笑うかの様にロングボールからのチャンスを生かして2得点を挙げ日本を破ったのだがこの準々決勝を迎えるにあたってはクウェートには幸運もあった。グループリーグから準々決勝まで日本が中2日だったのに対してクウェートは中4日もあった。この間にマチャラ監督は日本の弱点を分析、当時右サイドの守備陣、小村、柳本は左サイドの相馬、井原に比較すると守備力に劣りしかも中盤の前園はしばしば相手選手がボールを持った時にプレスを怠る事があったので相馬、井原が上がってからも攻撃を許すことがあった。そしてそこから右に展開されピンチを招いたグループリーグでのウズベキスタン戦を見逃さなかったのだ。当時のクウェートは左サイドの2列目のアル・ハルビー、左サイドバックのアル・ダキの攻撃力に定評があり、失点シーンも相手の左サイドからのロングボールからであった。

   

一方の日本は中村俊輔、稲本、松井といった欧州組が招集出来ずDF闘莉王 FW高原が怪我(今の高原は怪我でなくても関係ないか??)その上中東地域はシーズン真っ最中。日本はまだ開幕したばかり。更にゲームはバーレーンのホームで開催された事を総合すれば日本の苦戦は必至で簡単に勝点3を取れる状況では無かったのだ。12年前のクウェート戦もこのバーレーン戦もある意味予想の出来た結果かもしれない。

バーレーンのスタメンはDF Mohamed Husain Ali に替って前回のワールドカップ予選の日本戦にも出場した Abdulla Abdul Rahman Marzooq が起用されたほかはオマーン戦と同じメンバー。 日本は3人が入れ替わった。遠藤のベンチスタートは ACL を含めた過密日程への配慮か。試合は開始15分頃までは相手のサイドバックの裏へボールを入れ一気に押し上げてあとはパスワークで繋ぐと言う日本の狙い通りの展開。しかしシュートシーンをなかなか作れ無いのは相手DF, Sayed Mohamed Adnan Husain と Mohamed Hasan の長身選手が中央を抑えていたのとボランチの Al Wadaei と Yusuf Salmeen が自軍ゴール前で大久保、山瀬の侵入をケアーしていたため。この4人は3年前の日本戦に出場をしていた。 25分には憲剛から今野に縦パスが通り、その直後も大久保が Mohamed Husain を振り中に入った安田、巻に入れるが重なりすぎてシュートが撃てなかったがこれらは右サイドからのチャンス。27分にはまたも右サイドから駒野が今度は逆サイドを上がった安田に送り中の巻にスルーパスを送る。これはこぼれ球を拾った Adrian Husain がそのままシュートに持ち込まれた。日本はボールを支配するがシュートを撃てない。これはバーレーンの選手ではなかったか? 30分を過ぎると今度はバーレーンが日本の左サイドにロングボールを入れてチャンスを作り始める。36分には Wadaei が右サイドを上がり逆サイドの Aala Hubail にクロスを送ると安田のマークをかいくぐりヘッドでなく肩にあてて日本ゴールを狙われる。37分には 左サイドでボールを受けたAala Hubail が逆サイドにいた Ismaeel Omar にクロスを送りそこからピンチを迎えるが阿倍が何とかコーナーに逃げる。その左からのCKのこぼれ球が逆のサイドに転がるがAdran Husain がしぶとく拾って中澤のマークをぬって入れたクロスをGK川口がファンブル、それをボレーで Ismaeel Hasan に撃たれるが今度は川口がしっかりキャッチ。更にバーレーンは日本のサイドを突いてくる。ロスタイムに入るとスローインから右サイドで Ismaeel Omar と啓太がもつれたこぼれ球を拾った ナイジェリアからの帰化人選手Baba Fatadi がそのままドリブルシュート、そしてその直後も Ismaeel Omar のスルーパスが Aala Hubail に渡りかけるがその前にGK川口がキャッチ。いずれも失点に結びつきそうな場面であった。この間に日本は駒野が35分に右サイドから Adrian Husain がチェックに入る前にドリブルシュート、39分にも駒野が右サイドを上がり中にクロスを入れるが Ghuloom Ali がカット。バーレーンGK Abba を追い詰めるシーンは見られなかった。

後半に入るとバーレーンはボランチのAl Wadaei, Yusuf Salmeen が開始時から高い位置を取り中盤で数的優位を作る。また3バックの右サイドの Marzooq, 左サイドの Mohamed Hasan が攻撃参加してくるがこれがパワフルで日本は後手を踏む。55分に日本ベンチが動き山瀬を下げて遠藤を投入する。これで日本はボールの収まり所が憲剛と遠藤の2か所になり日本がボールをまた支配する様に。そしてセットプレーがバーレーン守備陣に脅威を与える様に。68分には遠藤のCKから巻が Mohamed Hasan に競り勝ちヘッドを放つがクロスバーを越える。70分には憲剛から右サイドを疾走する駒野に渡り中に入れたクロスに大久保が飛び込むが惜しくも合わなかった。これがこの試合日本の最大のチャンスであった。70分には遠藤からロビングが入りここも大久保が飛び込むがGK Mohamed Abbas がキャッチ。日本が主導権を奪い返すかに見えたが遠藤が入るバーレーンは攻撃では再びロングボールを多用する様になり、守備では両サイドのケアーよりも中を絞りシュートを撃たさない様な陣形を取る。しかしDFの Marzooq は相変わらずドリブルで上がりチャンスを伺う。そして76分ついに均衡が破れる。 Adnan Husain が後方からロングフィードを入れると左サイドを上がった Ismaeel Hasan が追い付き阿倍がマークに入る前にクロスを入れる。阿倍は Hasan のハンドを主張するが笛は鳴らず、そのクロスを川口が弾くも中澤と啓太の間に入った Aala Hubail の上に跳ねそのまま Hubail が頭で押し込んでホームのバーレーンが先制点を挙げた。大喜びのバーレーンベンチそして観衆。痛い時間の失点であった。こうなるとバーレーンは守備を固める。直後のキックオフから駒野が右サイドからクロスを入れるがバーレーンは7人の選手がペナルティーエリア内に入る。セットプレー時には中澤が上がるが Marzooq がしっかりとマークする。阿倍も攻撃参加しCKからあわやのヘッドを撃つがジャストミートしなかった。フリーだったので決めてほしかったが… 山岸がPA内に飛び込むが81分に阿倍に替って投入された玉田はアナウンサーが何度も2004年アジアカップで玉田がバーレーン相手に決勝ゴールを決めた事を連呼するが、が低い位置にいるので折角の登場なのにシュートシーンに絡めない。それは阿倍を下げてDF 陣が少なくなっているので守備の負担もあったのか……. バーレーンも足がつっている選手が出て来たので縦パスを入れて走らせたり大きくサイドチェンジをしたりドリブルで切れ込んだりと揺さぶって欲しかったのだが48分7秒にタイムアップのホイッスルが鳴り響いた。
日本に勝ったことに喜びを爆発させる選手、役員、地元サポーター達 ……. あぁ日本もこう言う立場になったのか…狂喜するスタンドを見てそう思った。

この試合バーレーンの方が絶対的に勝点3が欲しかったと思う。日本人の好きな “自分たちの戦い(サッカー)” をする必要があっただろうか?しっかりとした守備からカウンターに転じて得点機を伺う。最低でも勝点1を持ち帰る試合運びができなかったのだろうか….と試合後思った。そうされる事がバーレーンサイドが一番嫌がると思われたのだが……..

マスコミは早くも6月のワールドカップ4試合に向けて欧州組を召集して事態を打開せよと“緊急事態”と“危機感”を煽る。確かに6月は欧州のリーグは殆どがシーズンオフ中。6月の4試合全てに心おきなく起用は出来る。マチャラ監督からすれば “過密日程”で中村俊輔を招集出来ない事と“ワールドカップ予選”と言う大事な試合を控えて怪我をする高原、稲本の“自己管理”が理解できない様だが、私は心配なのは敗れた後に次の試合まで2カ月以上の期間があること。

それが次のオマーン戦で焦りにつながらない事を祈るよ………