鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその865~ながい旅

2014-02-17 12:32:11 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「ながい旅」です。

大岡昇平著「ながい旅」を読みました。
東海軍司令官 岡田中将の戦犯裁判「法戦」を克明に描いた作品。
・・・といってもほとんどの方は何のこと?と思うでしょうから、内容紹介を引用します。

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第二次大戦中、空爆を行った米軍搭乗員の処刑を命令した容疑で、B級戦犯として起訴された東海軍司令官 岡田資中将は、軍事法廷で戦う決意をする。
米軍の残虐な無差別爆撃を立証し、部下の命を救い、東海軍の最後の名誉を守るために。
司令官として、たった一人で戦い抜いて死んだ岡田中将の最後の記録。
『レイテ戦記』を書き終え、戦争の総体を知った大岡昇平が、地道な取材を経て書き上げた渾身の裁判ノンフィクション。
=====

ノンフィクション・ノベルは吉村昭や新田次郎で随分読みましたので、物語仕立てに再構成したものと思っていましたが、本書は違いました。
「どの資料にどう書いていて、著者はどう思った」という書き方で書き進められていたのです。
ちょうど「こんな夜更けにバナナかよ」で「関係者はこう言っていた」「こういう出来事があった」「著者はこう思った」という書き方で書き進めていたのと同じ。
こういうのをルポルタージュというのかな。
「ながい旅」のこの様式は何だか読みづらかったです。
著者がこの様式に慣れていなかったのでしょうか?
物語風に再構成してもらったものを読みたかったです。

内容については以前、当ブログでご紹介した本書の映画化作品「明日への遺言」と同じで、目新しいものはありませんでした。
一般的に映画は、原作の一部分しか映画化できないため、原作の主だったエピソードであってもカットされていて残念に思うことがあります。
でも今回の作品ついては、映画の方が優れているように感じました。

映画は、ほとんどのシーンを法廷という閉鎖された空間で展開されるドラマとして描いていましたが、被告席と傍聴席に分かれ語り合うことが許されない家族同士の隔たりや、目と目で語り合う静かな時間で日本らしい情感を実にうまく表現していました。
そして「武士道を体現した美しい日本人の生き様」を伝えることに力を集中していました。

今回、もっと詳しく岡田中将の生涯を知りたいと思い原作を読みましたが、単なる枝葉末節と思える内容ばかり多かったように思いました。
ボリュームがあるばかりに岡田中将の生き様がぼやけていました。
期待していただけにまことに残念でした。

逆に言うとそれだけ映画監督が優れていたということでしょうか?
小泉堯史監督は今回「蜩の記」を映画化するそうです。
これも「明日への遺言」と同様「武士道を体現した美しい日本人の生き様」を描いた原作の映画化。
きっと素晴らしい作品に仕上げるのでしょうね。
10月に公開されるそうで楽しみにしています。
たまには映画館で良質の映画をゆっくりと観たいもの。
それにぴったりの予感がします。




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