出張を終えて、帰路の途中で寄ったのは大阪駅前第一ビル。金曜日の夜に来てみると昼とは違って立ち飲み屋にはサラリーマンが一杯、通路まであふれている。そんなガヤガヤした雰囲気の地下街に背を向けるかのように趣を異にしてひっそりとたたずむ高級な雰囲気の『可久弥』を訪れる。十数席ちょっとで一杯の半円形のカウンターに先客はひとり。壁に書かれた木札のメニューには値段表示はなし。お酒もカウンターに15種類位並んでいるがメニューはない。芳醇系が好きなんですと告げて女将に薦められた広島の加茂泉を注文。
(堂々の風格を備えた錫の酒器の冷酒セットに切子のお猪口。手前はもずく。)
独特の冷蔵容器(枡、氷水、錫の酒器)で登場したお酒に期待は高まる。お通しはもずくだったが、これも単なるもずくではなく、山芋、おくらなどねばねば系が小さい容器に歳盛り合わせてある凝った嗜好でこれだけでも更に期待が高まる。
さあて何を頼もうかとふと店内の時計を見ると新幹線の発車時刻までまであと一時間しかないではないか。この店は料理を注文してから時間がかかるとの情報もあり、あと30分で出店したいのだけどと前置きして注文したのは『蓮根まんじゅう』と『鯛の子炊き合わせ』。『鯛の子炊き合わせ』は小生の大好物で例えば神戸の金盃のような濃い味付けも好きなのだが、ここはあくまでも上品に薄味。
(素材を生かした薄味に盛り付けも美しい)
ところが暫くして店内のテレビに表示されている時刻を見ると30分程遅いではないか。女将によるとお客が新幹線に遅れないように時計の時間を進めてあるのだという。結局、浦霞を追加して、〆に『えんどう豆のおこわ』も注文。
(香り高いおこわに揚げて焦げた表面が香ばしい蓮根まんじゅう)
どの品も一手間かけた見た目にも美しいもの。店内の渋い風情は先斗町にある小料理屋という感じ。店外の立ち飲みの喧騒さえ聞こえなければ、京都の夜の雰囲気を満喫できると言ったら大阪に失礼だろうか。計3700円也は適価ではないだろうか。この店を絶賛するグルメサイトで有名なさとなお氏に全く同意。次回は時間を気にしないでゆったりとした時の流れが楽しめるように到着した夜に立ち寄りたい。外人が喜びそうな気もする。
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