(原題:Knight and Day)意外にも(笑)、楽しんで観ることが出来た。トム・クルーズが組織に追われるナゾのエージェント役で、それに巻き込まれる女がキャメロン・ディアス。どう考えても中身がスッカラカンのお気楽活劇になりそうな雰囲気のシャシンだが、これがなかなか侮れない仕上がりなのだ。勝因は、作者の“これでいいのダ!”という開き直りであろう。
騒動の発端が“永久的なエネルギー源”の争奪戦ということになっているが、物理的に言ってそんなテクノロジーは存在しない。かくもトンデモなシロモノをいけしゃあしゃあと物語の重要小道具にしていること自体、作り手の割り切りが感じられて潔い。つまり“これは最初から最後まで、単なる与太話なのですよ”と宣言してしまっているのだ。
トム君は脳天気の極みのような役どころだが、これがまた彼の資質にマッチしている(笑)。また、作者も“彼はこんな役が一番似合っている”と完全に見切っているのだと思う。キャメロン嬢も負けずに脳天気で(爆)、最近シリアス路線に傾いていた彼女(まあ、それはそれでサマになるのだが ^^;)を本来のキャラクターに戻したような清々しさが充満している。
さらに、ヘンに社会派ぶったようなネタが出てこないこともアッパレで、現実と完全に遊離したストーリーであることを強調。こういう盤石な(?)設定だからこそ、どんなに荒唐無稽なモチーフが出てこようとも許してしまうのだ。
ジェームズ・マンゴールドの演出はテンポが良く、何のストレスもなく映画を追うことが出来る。よく見たらSFX処理なんか現在のレベルからすればあまり上等ではない。しかし、そこは“愛嬌”として受け取ってもらえるだけの御膳立てが整えられている。
舞台もアメリカから始まって南の島やオーストリア、さらにはスペインとワールドワイドであり、まるで「007」シリーズのノリである(そういえば「007」をパクッたようなアクション場面も散見される)。もちろん、観光気分も十分味わえる。
出てくるギャグにハズしたところがないのも嬉しく、主演二人のやりとりには大いに笑わせてもらった。トム・クルーズが中途半端な筋立ての「ソルト」の主演を蹴って、本作に専念したのもよくわかる。とにかく、絶好のデート・ムービーだ。娯楽映画はかくありたい。