言文一致体の代表作として歴史の教科書に載っている小説だが、実際に読んだのは(恥ずかしながら)つい最近である。舞台は明治中期。静岡県士族の子である主人公・内海文三は、学校卒業後に役所に勤めるために東京の叔父の家に下宿するが、同居する従妹のお勢に恋心を抱いたのも束の間、思わぬ事で役所をリストラされてしまう。物語は文三とお勢、そして要領の良い主人公の友人・本田昇との微妙な三角関係(ようなもの)を軸に展開する。
これは面白いと思った。時代背景や文体はともかく、上質の青春小説を読んでいるような充実感がある。プライドと劣等感がせめぎ合う主人公の内面。奔放なお勢の言動に一喜一憂し、恋敵の存在も気になり、不安定な心理状態で悶々と毎日を送る文三の姿は、人生の岐路に逡巡する普遍的な若者像そのものではないか。舞台を現代に変えて映画化してもまったくおかしくない題材だ。あえてストーリーが「未完成」に終わっているのも、これ以上続けてあらずもがなの結末をつけていたずらに通俗的になるのを回避した作者の冷静な判断だと思う。
意外とハイカラな明治時代の東京庶民の生活ぶりも興味深い。
これは面白いと思った。時代背景や文体はともかく、上質の青春小説を読んでいるような充実感がある。プライドと劣等感がせめぎ合う主人公の内面。奔放なお勢の言動に一喜一憂し、恋敵の存在も気になり、不安定な心理状態で悶々と毎日を送る文三の姿は、人生の岐路に逡巡する普遍的な若者像そのものではないか。舞台を現代に変えて映画化してもまったくおかしくない題材だ。あえてストーリーが「未完成」に終わっているのも、これ以上続けてあらずもがなの結末をつけていたずらに通俗的になるのを回避した作者の冷静な判断だと思う。
意外とハイカラな明治時代の東京庶民の生活ぶりも興味深い。

