元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「Mr.インクレディブル」

2005-11-25 21:46:21 | 映画の感想(英数)

 (原題:The Incredibles)ヒーローの悲哀と栄光を見事に描いたのは「スパイダーマン2」ではなく、紛れもなく本作の方だ。

 ヒーローの“活躍”によって生じた被害に対して市民が民事訴訟を起こしてヒーロー達を普通の人間の生活に押し込めてしまったという設定は出色。まるで“人権原理主義者”の独善をコケにしているようではないか(笑)。

 ヒーロー達をつけ狙う“新たな敵”に立ち向かうべく、たるんだ身体をシェイプアップして出撃する中年超人Mr.インクレディブルよりも、スーパーパワーを持った妻子の方が目立っているのも面白い。特に“一見優しいようで、実は完全に夫を尻に敷いてるカミさん”(声の出演はホリー・ハンター!)の存在感はスゴい(爆)。いくらヒーローでも、やはりオッサンはオッサンでしかないのが微笑ましい。

 悪役キャラの屈折ぶりもかなりのもので、これだけ相手がヒネくれていると、主人公達がどんなに滅茶苦茶に暴れても気にならない。衣裳デザイナー役のエドナ・モードの造形にも脱帽だ。

 技術的には申し分なく、アクションシーンには完全に引き込まれた。ブラッド・バードの演出は冴え渡り、ジェットコースター的展開で観客を圧倒する。まさに目を見張る快作。
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耐震強度偽装事件と規制緩和

2005-11-25 06:55:43 | 時事ネタ
 マスコミを賑わせている一連の「耐震強度偽装事件」。私の知り合いがついこの間まで泊まっていたホテルが“設計元:姉歯建築事務所の物件”であった。何でも“いくら新築といっても、ちょっと「家鳴り」が大き過ぎるんじゃねーの”と思ったほど、夜中にギシギシいってたとか(爆)。

 さて、読売新聞が例の姉歯建築設計事務所関連のマンション2棟の構造計算書について専門家に分析を依頼したところ「巧妙どころかあからさまな偽装。検査機関などの専門家が気付かないはずがない!」と切って捨てられたらしい。見る人が見ればすぐさま違和感を持つのが当然の「インチキ設計」が、どうしてまかり通ってしまったのか。この背景には98年の建築基準法改正があるという。

 この改正は、阪神・淡路大震災で倒壊した建物があまりにも多かったことを教訓に、検査業務を民間機関に開放したものだ。でもちょっと待ってほしい。地震ですぐに崩れる建物が多かったということは、普通に考えれば「検査業務をキッチリやるべく、自治体の建築確認・完了検査体制を見直して充実させるべきだ」という結論になるはずだ。これがどうして「民間機関への規制緩和」という次元に勝手にシフトしてしまうのか。

 たぶんそれは当時の「政・財・官」の癒着による妥協の産物なのだろう。おかげでその「民間検査機関」とやらは不動産業者や建設業者の子会社みたいなところでも運営可能になり、当然の事ながら自分達に都合の良いような「手抜き検査」もオッケーになる。もちろん、消費者(入居者)のことなんか考えない。自分達だけ儲ければそれでヨシ。

 「官から民へ」「規制緩和」というのがトレンドの昨今だが、「官」から仕事を移管された「民」が、すべてのケースにおいて「官」よりも優れている・・・・と思ったら大間違い。族議員と官僚と財界人だけがニコニコで、肝心の国民は泣きを見るという場合だって多々ある。大事なのはそのへんを是々非々で見極めることであり、単なるスローガンに過ぎない「規制緩和」を金科玉条のごとく奉ることほど愚かなことはないと思う。
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「笑の大学」

2005-11-25 06:52:54 | 映画の感想(わ行)
 私の周囲ではえらく評判が良かった。評論家筋でも同様で、中には“初めから終わりまで笑いっぱなし。コメディ映画史上に残る大傑作!”と公言する批評家までいるとか。しかし私は好きではない。

 そもそも三谷幸喜のギャグは(少なくとも映画では)全然面白いとは思わない。キレも毒も不足している。早い話が“ぬるい”のである。

 それでもこれが監督デビューとなる星護は健闘した。万人向けの娯楽映画にまとめようと努力しており、音楽や衣装、美術も評価できる。少なくとも「ラジオの時間」やTV「新選組!」よりはずっとマシだ。しかし、舞台を大東亜戦争直前に置き、検閲官と劇作家の“バトル”を描くというシビアな題材で、こんな“ぬるい”お笑いの応酬をやる必然性があるのかすこぶる疑問である。

 厳しい制約の中でこそ傑作が生み出され得ることは事実だが、そのテーマをセリフで滔々と述べさせる無神経さも腹立たしい。そして何より主役の役所広司と稲垣吾郎との演技スタイルが全然かみ合っていない。特に稲垣はヘタな新劇役者そのもので、いくら客寄せのキャスティングとはいえ何とかならなかったのだろうか。

 終盤では、それまで戦争を無視したような主演二人の“漫才”を続けておいて、急に戦争が前面に出てくるのもいただけない。でもまあ、物足りない出来ながら客の入りは良かったようなので、三谷のお笑いを理解できない私のような“少数派”は黙るしかないのだろうね(苦笑)。
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