(原題:The Incredibles)ヒーローの悲哀と栄光を見事に描いたのは「スパイダーマン2」ではなく、紛れもなく本作の方だ。
ヒーローの“活躍”によって生じた被害に対して市民が民事訴訟を起こしてヒーロー達を普通の人間の生活に押し込めてしまったという設定は出色。まるで“人権原理主義者”の独善をコケにしているようではないか(笑)。
ヒーロー達をつけ狙う“新たな敵”に立ち向かうべく、たるんだ身体をシェイプアップして出撃する中年超人Mr.インクレディブルよりも、スーパーパワーを持った妻子の方が目立っているのも面白い。特に“一見優しいようで、実は完全に夫を尻に敷いてるカミさん”(声の出演はホリー・ハンター!)の存在感はスゴい(爆)。いくらヒーローでも、やはりオッサンはオッサンでしかないのが微笑ましい。
悪役キャラの屈折ぶりもかなりのもので、これだけ相手がヒネくれていると、主人公達がどんなに滅茶苦茶に暴れても気にならない。衣裳デザイナー役のエドナ・モードの造形にも脱帽だ。
技術的には申し分なく、アクションシーンには完全に引き込まれた。ブラッド・バードの演出は冴え渡り、ジェットコースター的展開で観客を圧倒する。まさに目を見張る快作。