元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「マイ・ボディガード」

2005-11-24 08:35:05 | 映画の感想(ま行)
 (原題:Man on Fire)チラチラとしたケレン味たっぷりの画像処理が鬱陶しい。トニー・スコット監督好みのこういう手法は「スパイ・ゲーム」のようにしっかりとした筋立てのドラマの中に適度に挿入すると効果的だが、残念ながらこの映画は脚本が万全ではない。

 特に後半、誘拐された幼い少女の“復讐”のために鬼と化す米軍特殊部隊あがりのボディガードの暴走を追うくだりは、段取りが非常にまだるっこしく、それに上記の映像ギミックが頻繁に重なるもんだから、観ている側は面倒くさくなってしまう。こういうのは切れ味鋭く短時間にまとめるものだ。

 前半の、心に傷を負った主人公が9歳の女の子と出会って微笑みを取り戻すくだりは、演じるデンゼル・ワシントンとダコタ・ファニングの好演も相まって(少し冗長ながら)いい感じで進んできたのに、誘拐事件が起こった後の展開は無茶苦茶だ。

 かと思えば拷問場面などの残虐シーンは念入りに撮られており(そのためR-15指定だ)、何やら映画のつかみ所が判然としない印象がある。

 それにしても、こういう事件が頻繁に発生する中南米地区はコワいものがあるが、劇中そんな現地の状況をアメリカ人がバカにしているような雰囲気があるのも愉快になれない。A・J・クィネルによる原作(こっちは舞台はイタリアらしい)はシリーズ物になっているとのことだが、映画の場合はどうなるか不明である。
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高杉良「ザ エクセレント カンパニー」

2005-11-24 08:27:57 | 読書感想文
 東洋水産のアメリカ・メキシコへの進出を題材にした企業小説だ(文中では企業名は変えてあるが)。東洋水産のブランド「マルチャン」は北中米でのカップ麺のシェア一位を誇り、特にメキシコでは「マルチャンする」という動詞として定着しているほどだという。

 高杉は綿密な取材力でその成功の過程を追っていくが、正直言って小説としては面白くない。優秀なスタッフが集まって障害を難なくスルリと切り抜けていく場面ばかりで、波瀾万丈の展開もなく、興趣に乏しい。実話だから仕方がないのかもしれないが、何やら人の自慢話を聞かされているような愉快成らざる気分になる。

 しかし、全然読む価値はないかといえば、さにあらず。それは主題が昨今の「構造改革万能」に対するアンチテーゼになっているからだ。感心したのが、この会社は実に社員を大事にするということ。社員教育に力を入れ、一度は辞めた現地従業員も希望さえあれば受け入れる。安易なリストラは絶対しない。「構造改革」の名のもとに首切りと賃下げに奔走し、経営者だけウハウハの「優良企業」が持て囃される中、東洋水産のような「日本的経営」を遵守する企業が海外市場でトップメーカーになっていることは、一種の「救い」ではないだろうか。

 それにしても、文中ではアメリカの労働組合が悪者扱いされていることは印象的だ。「ゴッドファーザー」だったか何だったか、ギャング映画でマフィアの幹部が「ウチのシノギは労働組合だ」みたいなこと言ってたことを思い出した。国が違えば事情も変わるものだ。
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