元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「レクイエム・フォー・ドリーム」

2011-12-29 07:13:00 | 映画の感想(ら行)

 (原題:Requiem for a Dream )2000年作品。コニー・アイランドの寂れた街を舞台に、4人の男女が破滅していく様子を描く。近作「ブラック・スワン」でその異能ぶりが久々に炸裂したダーレン・アロノフスキー監督だが、彼の最高作はこの映画だろう。

 私はこの前作「π(パイ)」は観ていないが、少なくとも彼はガイ・リッチーだのウォシャウスキー兄弟だのといった“なんちゃって映像派”(謎)とは一線を画す、かなりの力量の持ち主だ。とにかく映像ギミックがまったく“浮いて”いない。どれも登場人物の苦悩や狂気に裏打ちされており、文字通り悪夢的な効果をもたらす。

 映画の主題は孤独への恐怖であることは言うまでもないが、弱い人間にとってはそれをカバーするのが食べ物や麻薬ぐらいしかないという達観、そしてそれを容赦なく描ききる覚悟には目を見張る思い。圧巻は終盤の主人公たち4人が味わうそれぞれの“地獄”を平行して細かいカットバックで畳みかけるシークエンス。絶妙な映像効果もあって、観る者を奈落の底に叩き込むようなパワーが充満している。

 俳優達が素晴らしい。自己破壊の欲求を隠そうともしないジャンキー役のジャレッド・レト、クスリ欲しさに身体を売る若い女に扮するジェニファー・コネリー、犯罪に身を染めた自己嫌悪に陥っていく男を演じるマーロン・ウェイアンズ、そして笑いながら狂っていくエレン・バーステインの演技はド迫力だ。彼女は本作でアカデミー賞候補になったが、その時に主演女優賞を獲得したジュリア・ロバーツよりも演技のヴォルテージは高い。

 クリント・マンセルwithクロノス四重奏団による音楽も強烈。一点の救いもない筋書きながら不思議と後味が良いのは、素材に迫りながらも安易なケレンにだけは走らない作者の冷徹なスタンスゆえだろう。とにかく必見だ。

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