元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「リバー、流れないでよ」

2023-08-18 06:12:10 | 映画の感想(ら行)
 巷では絶賛されているらしく、実際観ても最後まで飽きずに接することは出来たが、諸手を挙げて評価するほどではない。少なくとも、同じく劇団“ヨーロッパ企画”が提供したシャシンでは「サマータイムマシン・ブルース」(2005年)の方が数段楽しめる。さらには、似たような体裁の「MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」(2022年)が前年公開されたばかりなので、かなり分が悪いと言える。

 京都府貴船にある老舗の温泉旅館“ふじや”で働く仲居のミコトは、別館裏の貴船川のほとりで物思いに浸っていたところを女将に呼ばれて持ち場に戻るが、なぜか2分後に気が付くと元の場所に立っていた。しかも彼女だけではなく、他の従業員や宿泊客も同じ現象に遭遇している。どうやら時間が2分ごとにループしているらしく、かつ個々人の記憶は引き継がれていくので、彼らは次第にパニック状態に陥っていく。それでも人々は力を合わせてこの異常事態からの脱出を試みる。



 2分間というループ周期はドラマをスピーディに進める上で有効かと思われたが、短すぎて出来るごとが限られてしまう。さらに、2分間でやるべきことを実行しようとするため、全員早口でカメラワークも忙しない。おかげで1時間半ほどの尺ながら後半から単調さが目に付くようになる。このタイムループ現象は“ふじや”とその周辺だけで発生しているのだが、終盤明かされるその事情は何とも安直だ。また、劇中に何かドラマティックなネタが仕込まれているわけでもなく、せいぜいミコトの淡い色恋沙汰が挿入される程度。

 山口淳太の演出はギャグの振り出し方こそ非凡だが、骨太なドラマ性には欠ける(もっとも、そんなものは必要ないと割り切っているのかもしれないが ^^;)。ミコト役の藤谷理子をはじめ、鳥越裕貴に永野宗典、角田貴志、酒井善史、石田剛太といった“ヨーロッパ企画”の面々は、手堅いと言えば手堅い。本上まなみや近藤芳正、早織、久保史緒里(乃木坂46)などの外部キャストも悪くない。

 なお、舞台になった旅館は藤谷の実家らしいが風情はとても良い。タイムループが進むうちになぜか季節が変わって雪が降り出すあたりは突っ込むべき点だろうが、絵面としてキレイなので許そう(笑)。滝本晃司の音楽と“くるり”による主題歌も効果的だと思う。

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