元・副会長のCinema Days

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「ナイブズ・アウト:グラス・オニオン」

2023-06-09 06:11:48 | 映画の感想(な行)

 (原題:GLASS ONION:A KNIVES OUT MYSTERY)2022年12月よりNetflixより配信。シリーズ第二作とのことだが、前作は観ていない。ただし、それで大きく困ることはなさそうだ。ライアン・ジョンソン監督がオリジナル脚本で描いたミステリー。とはいえ随分と緩めの建て付けであり、サスペンスの要素は希薄で、卓越したトリックも見当たらない。ならば観る価値は無いのかというと、そうでもない。これは多彩なキャスティングとロケ地の風景をリラックスして堪能するためのシャシンだ。

 コロナ禍が世界を覆いロックダウンが相次いだ2020年、IT企業のCEOで大富豪のマイルズ・ブロンは、エーゲ海にあるプライベート・アイランドに友人たちを招待し、そこで殺人ミステリーゲームを開催しようとする。ところが声を掛けた覚えの無い元ビジネスパートナーのアンディ・ブランドと、名探偵のブノワ・ブランも勝手にやって来る。やがて本当に出席者の一人が殺され、ゲームではないリアルな事件が展開する。

 この島に集まったのは全員が腹に一物ある面子で、いずれも動機がある。だからアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」のように犠牲者が大量に出るのかと思ったら、そうはならない。殺人の手口は凝ったものではなく、謎解きの興趣は期待できない。そもそも、映画が始まったときから誰が一番怪しいのか目星は付く。映画は途中からブノワ・ブランとアンディがどうしてパーティに参加することになったのかが明かされるが、この時点から物語の底は割れてしまう。

 ライアン・ジョンソンの演出は完全に脱力系で、ラストの扱いも腰砕けだ。しかしながら、それで別に腹も立たない。ブノワに扮するダニエル・クレイグは実に楽しそうにこの傍若無人な探偵を演じており、ジェームズ・ボンドよりもこういう役柄の方が合っている。マイルズを演じるエドワード・ノートンは胡散臭さマックスだし、アンディ役のジャネール・モネイも魅力的。

 キャスリン・ハーンにマデリン・クライン、ケイト・ハドソン、デイヴ・バウティスタに加え、イーサン・ホークにヒュー・グラント、セリーナ・ウィリアムズ、ヨーヨー・マ、ジョセフ・ゴードン=レヴィット(声の出演のみ)、アンジェラ・ランズベリー(これが遺作)といった賑々しい面子が場を盛り上げる。ギリシアの避暑地ポルトヘリの風景は美しく、観光気分満点だ。ネイサン・ジョンソンの音楽も悪くない。

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