元・副会長のCinema Days

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アナログレコードの優秀録音盤(その3)。

2015-01-18 06:32:03 | 音楽ネタ
 久しぶりに、保有しているアナログレコードの中で録音が優秀なものを紹介したい。ブラジルのパーカッショニスト、アイアート・モレイラによる「ミサ・エスピリチュアル ブラジリアン・ミサ」と題されたディスク(87年発売)は、私が持っているポピュラー系のレコードの中では間違いなく一番音が良いと思う。



 中南米音楽を基調としながら、ロックやジャズ、クラシック(特に現代音楽)のテイストを大々的に織り込んだこのアルバムは、本当の意味での“クロスオーバー・サウンド”と呼べるのではないだろうか。現代のミサ曲を想定したドラマティックな展開と共に、時折現れるキャッチーなメロディが抜群の効果を上げている。オーケストレーションを担当しているギル・エヴァンスの手腕も見逃せない。

 録音は広大なレンジ感が達成されており、特に高域の伸びは素晴らしいものがある。B面の金属製打楽器の連打が延々と続くパートでは、音像がスピーカーを無視して定位。まさにサウンドのシャワーが頭の上から振ってくるような希有な体験が出来る。レーベルはクラシック音楽が専門であるはずの独ハルモニア・ムンディであるというのも面白く、とにかくオーディオファンには自信を持って奨められるレコードだと言えよう(ただし、残念ながら現時点では入手困難である ^^;)。

 アメリカの現代音楽作曲家のジョージ・クラムの作品については、以前「魅入られた風景」を紹介したが、今回取り上げるのはリルケ等の詩の世界を表現した「夏の夜の音楽(マクロコスモスⅢ)」である。演奏はギルバート・カリッシュとジェイムス・フリーマンのピアノ、レイモン・デロシュとリチャード・フィッツのパーカッションだ。録音は70年代後半である。



 曲調は暗いが、幽玄な美しさを伴う逸品で、クラシック好きならば十分に良さが分かるだろう。録音は特Aクラスで、金属製打楽器の輝きや立ち上がりの速さ、深々としたピアノの音像など、聴き所は多い。音場は横方向にも前後にも広く、しかもクリアで見通しが良い。音圧の高い部分での音像の乱れや混濁も見当たらず、安心して再生音に対峙出来る。

 レーベルは米ノンサッチで、今やジャズやフュージョン系も含めた比較的幅広い音源を提供している同レーベルの、最も先鋭的な時期を代表するディスクだと言える。アメリカでプレスされているためか盤質がさほど良くないのが残念だが、CD音源ならば今でも手に入りやすいので、興味のある向きは聴いてみても損は無いと思わせる。

 79年から97年にかけて活動したスコットランドのシューゲイザー系バンド、コクトー・ツインズが84年に発表した3枚目のアルバム「TREASURE」(邦題:神々が愛した女たち)は、孤高の美意識が横溢した傑作である。同グループのディスクはアメリカのメジャー・レーベルであるキャピトルでリリースされたものも含めて他にも何枚かあるが、本作を超える内容を持つものは無い。



 サウンドの特徴は、女性ヴォーカルのエリザベス・フレイザーによる神秘的としか言いようのない歌声を中心に、リズム楽器を使わずエコーのたっぷり効いた音で聴き手を幻想の世界に誘うような展開で、一度接したら忘れられない強烈な個性を有している。また、歌詞の内容よりもサウンド・デザインを楽しんでもらいたいとの意図から、歌詞カードが添付されていないのも面白い。

 録音は確実に水準を超えているが、それほどの優秀録音ではない。それでも本欄であえて紹介したのは、レコードジャケットの美しさ故である。アート的に優れていると共に、CDの小さなパッケージでは表現出来ない存在感がある(このまま壁に掛けて飾ってもおかしくない)。ジャケットはレコードの(他のメディアでは得られない)特質であることを再認識出来る。

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