先日、福岡市中央区大濠公園にある福岡市美術館ミュージアムホールで開催された、二胡のコンサートに足を運んでみた。二胡というのは、中国の伝統楽器である。二胡だけではなく、他の楽器も交えた編成で、多様な出し物を披露してくれた。180席の会場は満員で、こういう演目に興味を持っている層が少なくないことを如実にあらわしている。
公演は二部構成で、前半は地元の愛好家による演奏だったが、見どころは第二部だ。中国の人間国宝に当たる国家第一級芸術家の称号を持ち、現在は福岡市を拠点として活動するベテラン趙国良による二胡と、同じく福岡市在住の古箏の達人である江舟、そして熊本市をフランチャイズとして演奏活動をおこなっている揚琴の使い手である周暁丹の3人によるアンサンブルである。
二胡は以前にも何度か生の音に接したことがあったが、古箏と揚琴は直に聴くのは初めてだ。その玄妙な音色にはとにかく驚いた。中国映画のBGMとしては御馴染みのサウンドのはずだが、眼前で展開されると豊かな響きに圧倒される。もちろん趙国良の名人芸は申し分なく、メロディを奏でるだけではなく、馬や小鳥の鳴き声まで二胡で表現しているのは感服するしかない。
趙国良は1941年生まれだから相当の高齢だが、リズム感や音の伸びは(当然のことながら)前半の弟子たちのパフォーマンスを完全に上回っている。そして、このような人材が福岡に居を構えているということ自体、有難いことだと思う。これからも達者で芸を磨いてほしい。
曲目は日本の楽曲が多く、他にクラシックやポピュラーもリストに入っていたが、やっぱり本国の伝統的ナンバーを手掛ける時が生き生きとしている。また、各楽器に関してのレクチャーが挿入されていたのも有意義だった。二胡が2本の弦で構成されているというのは知ってはいたが、弓は弦の間に挟まれており、琴筒はニシキヘビの皮で覆われていることは初耳だった。また、当ホールは音響的には悪くない環境だったが、もう少し広い会場でも十分に客を呼べると思う。