元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「活きる」

2015-01-25 07:06:38 | 映画の感想(あ行)
 (原題:活着)94年中国作品。張藝謀監督のフィルモグラフィの中では「秋菊の物語」(93年)と「上海ルージュ」(96年)との間に位置づけられるが、買い付け料が高かったためか日本で公開されたのは2003年である。第47回カンヌ映画祭審査員特別賞を受賞した注目作だ。

 1940年代。主人公フークイはかつては資産家だったが、博打に明け暮れた挙げ句、気が付いてみれば一文無しになってしまう。妻のチアチェンは子供たちと一緒に家出。だが彼は唯一の特技である影絵芝居で全国を巡演し、細々と生き延びていく。戦後、何とか妻子と再会したフークイはヨリを戻す。



 50年代には共産主義の躍進期に入るが、成長した息子は国家主導の集会で事故死。60年代になると文化大革命によりベテランの医者はすべて摘発され、助かるはずの病人も悲惨な目に遭ってしまう。その中にはフークイの娘も含まれていた。

 物語は1940年代に始まり、それから70年代までを10年ごとを節目として、その時々の中国の社会を庶民の視点から描いていく。特に50年代の大躍進政策と60年代の文化大革命の扱い方は痛烈で、社会に対していかに大きな傷跡を負わせたかを如実に示し、また、その中で権力に翻弄されつつも何とか生き抜いてゆく主人公の行動を通して当時の中国人の生の姿に迫ろうとしている。声高な権力糾弾のシュプレヒコールがない分、メッセージが着実に観客に伝わる良心作と言えよう。



 ただし、製作年度と封切時期が大きく開いたせいか、封切り当時に劇場で観た際にはいまひとつ作者の情念が伝わらず、その後の張監督の作風の変節を考えると、何となく証文の出し遅れのような印象を受けるのも確か。公開のタイミングというのは難しいものである。

 チアチェンを演じるコン・リーはいつも通りの優れたパフォーマンスを見せるが、それより主人公役のグォ・ヨウの存在感が光る。

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