元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「世界のはしっこ、ちいさな教室」

2023-09-18 18:51:13 | 映画の感想(さ行)
 (原題:ETRE PROF )ドキュメンタリー映画の佳編「世界の果ての通学路」(2013年)のプロデューサーであったバーセルミー・フォージェアが手掛けた、辺境地における教育を題材にした作品の、いわば第二弾だ。前回はアドベンチャー映画並みの行程を経て学校に通う生徒たちの姿を追ったが、今回は僻地の、それも“学校”とも言えない場所で生徒たちに対峙する教師陣の姿を捉えている。そして前作同様、訴求力が高い。

 西アフリカのブルキナファソは識字率が世界最低クラスであり、政府方針として広くあまねく学校教育を普及させることに注力している。僻地の村に教師として派遣されたのが2児の母でもあるサンドリーヌ・ゾンゴだ。ところがいざ現地に着いてみると、生徒はそれぞれ5つの現地語を話し、しかも公用語のフランス語が通じるのはクラスで一人だけ。早くもサンドリーヌは壁にぶち当たる。



 雪深いシベリアに暮らす遊牧民の子供たちを教えて回るスベトラーナ・バシレバは、ロシア語などの義務教育はもちろん、その民族に伝わる言語や文化までカバーしようと奮闘する。バングラデシュ北部の農村地帯のボートスクールで生徒たちを相手にするタスリマ・アクテルは、学校を出たばかりの新任教師だ。しかし、当地では古い慣習が幅を利かせており、教え子の女児たちは人身売買同様のプロセスで嫁に出されていく。タスリマはそんな状況に抗うべく、保護者の説得に当たる。映画はこれら3つのパートをランダムに並行して描く。

 彼女たち3人の苦労は並大抵のものではなく、普通の者ならば数日で音を上げてしまうようなヘヴィな環境だ。しかしそれでも生徒たちが学ぶ楽しさを知って、次第に社会性に目覚めていく様子を見れば、それが十分報われる仕事なのだ。どうしようもない落ちこぼれが初めて良い成績をおさめた時、もう無理だと思われた中学校への進学にクラスの多くが成功した時、何と教育とは尊いものかとマジに思うし、教師たちの献身ぶりには本当に頭が下がる。

 監督のエミリー・テロンはかなりの長期取材を要するネタをスムーズにまとめ上げており、演出も無理がない。俳優のカリン・ビアールによるナレーションも的確だ。そして何といってもサイモン・ウォーテルのカメラがとらえた各地の美しい自然の風景は特筆ものだ。この映像だけで十分入場料のモトは取れる。

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