元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「モナリザ」

2015-04-19 06:34:50 | 映画の感想(ま行)

 (原題:MONA LISA )86年イギリス作品。男の純情に胸が熱くなる映画だ。ニール・ジョーダン監督作としても、上出来の部類であろう。主演のボブ・ホスキンスのカンヌ国際映画祭男優賞受賞をはじめ、いくつもの主要アワードを獲得している。

 主人公のジョージは冴えない中年のチンピラ。ボスの身代わりとしてロンドンの刑務所で臭い飯を食わされ、やっとのことでシャバへ出てくる。久々に娘のもとを訪ねるが、別れた妻から邪険に追い払われる。仕方なくボスの事務所に行ってみるものの、ボスは不在。だが、何とか仕事にありつける。それは、黒人の高級娼婦のシモーヌを金持ちの客たちに送り届ける運転手の役目だった。

 身分もルックスも違いすぎる二人は初めのうちはソリが合わなかったが、どこか純粋な面を持ち合わせていることを互いに認め合い、いつしか相手を憎からず思うようになっていく。やがてシモーヌがヘロイン中毒になって失踪している友人キャシーを探していることを知ったジョージは、彼女を手助けするようになる。そしてヘロイン密売の黒幕を突き止めた彼は、徒手空拳で悪の一味に立ち向かってゆくのだった。

 いくら仕事上で付き合う相手が気になる存在になったところで、互いの立ち位置が異れば恋愛は成就しない。しかし、それでも男というのは好きになった女のために身体を張れるのだ。

 設定としては「タクシー・ドライバー」のトラヴィスに通じるものがあるが、ホスキンス扮する主人公はロバート・デ・ニーロのようなしなやかな存在感は持ち合わせてはいない。単なる小太りのオッサンだ。それがここでは素晴らしくカッコ良く見える。たとえそこにはホロ苦い結末が待っていたとしても、モナリザのようなミステリアスな笑みを湛えた女に認められたいために一瞬の輝きを見せる男のダンディズムにシビれてしまった。

 N・ジョーダンの演出は、抑制されていながら躍動感を確保しているという絶妙なタッチをキープしている。シモーヌ役のキャシー・タイソンの美しさや、ボスに扮するマイケル・ケインのふてぶてしさも印象的。ロジャー・プラットのカメラがとらえたロンドンの町は“魔都”の雰囲気を醸し出している。そしてもちろん、バックに流れるのはナット・キング・コールによる御馴染みのナンバー。さらにはジェネシスの演奏による「イントゥ・ザ・ディープ」も効果を上げている。
コメント
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