元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ビューティフル・ピープル」

2015-04-05 06:39:40 | 映画の感想(は行)
 (原題:BEAUTIFUL PEOPLE)99年イギリス作品。まあまあの出来である。ロンドンを舞台にした旧ユーゴに所縁のある人間たちの集団劇だが、よくまとめられていて、上映時間がたとえばポール・トーマス・アンダーソン監督の「マグノリア」みたいに犯罪的に長くないのは良い。それから、劇中の各陣営を偏見なしに描いているのも納得した。反面、肝心のイギリス人の描写にはイマイチ気合いが入っていない。やはり作者がボスニア出身で、ホスト国の描写まで手が回らなかったというのが実情だろう。

 バスの中で偶然にクロアチア人とセルビア人が出会い、たちまちバトルが開始される。2人は負傷して病院に運ばれるが、そこでも様々な人間模様が展開。ジャンキーのフーリガン青年とか、ボスニア難民と恋仲になる研修医とか、妻に家出をされて双子の息子の世話で大忙しになる医者とか、いろいろな連中が入り乱れて騒ぎをを起こす。



 一応はコメディの形式をとり、笑える場面もあるのだが、その能天気ぶりが故国で地獄のような苦しみを味わったからこそ生まれたヤケクソな感情に由来していることを暗示させるあたり、かなり印象は苦いものがある(何しろボスニアの状況も無理矢理に笑い飛ばしているほどだ)。ただ前述のようにイギリス人の扱いは通り一遍だ。完全にステレオタイプだし、特に従軍ジャーナリストの強迫観念うんぬんの話など、不要だ。

 監督と脚本はジャスミン・ディズダーで、99年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞。シャーロット・コールマンやニコラス・ファレル等、キャストは馴染みのない面々が並ぶが、けっこういい味を出している。
コメント
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