元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ソロモンの偽証 後篇・裁判」

2015-04-27 06:24:11 | 映画の感想(さ行)

 パート1は凡作だったが、この完結編は駄作。総合点としては“合格”には程遠く、今年度ワーストテンの上位に放り込みたくなるような体たらくだ。わざわざ二部に分けて観客から倍の入場料をふんだくり、挙げ句の果てはタメ息しか出ないエンディングしか提示出来ないとは、作者は世の中をナメているとしか思えない。

 城東第三中学校2年A組の男子生徒・柏木の死の真相を突き止めるために、学級委員の涼子らが提唱した学校内裁判がいよいよ開廷した。告発状によって柏木殺害を疑われた問題児の大出を被告に、関係者が弁護側と検察側とに分かれて論述を繰り広げる。しかしながら、結果として明らかになった真相とは、まさに脱力するようなものだった。

 考えてみれば裁判自体が子供の遊びの域を出ない以上、その判決がすべてをひっくり返すようなインパクトを持ち得ないのは当然なのだ。裁判の進行状態に関しては、ひとつひとつ指摘するのが面倒なほどの多数の不手際で埋め尽くされ、しかも結局は裁判に関わった特定個人の身勝手な“願望”による出来レースでしかなかったとは、おふざけもホドホドにして欲しい。

 一番不愉快に思えたのは、この事件の“犯人”に対する考察がまったく成されていないことだ。宮部みゆきによる原作は読んでいないし読む気も無いが、近年の彼女の作品がそうであるように、この小説にも“悪だから悪なのだ”という思考停止的なスキームが横溢していることは想像に難くない。そもそも映画にすること自体が間違いだったという見方も出来よう。

 それにしても、宮部の昔の小説は良かった。読んでいてワクワクしたものだ。しかしその才気も「模倣犯」を最後にあらかた失われ、あとは薄っぺらな“やっつけ仕事”を並べるのみ。本当は昔の小説を映画化して欲しいのだが・・・・本人が許可しないのだろうか。

 (以下、少しネタばれ)なお、この映画は成長して教師になった涼子(尾野真千子)が現在の城東第三中学校を訪れ、昔話をするという設定で始まるが、ラスト近くで校長(余貴美子)が“あの裁判以来、この学校では自殺もイジメも起きていない”とニコヤカに語る場面があり、私はそれを観て“バカヤロー!”と叫びたくなった。

 自殺とイジメとは違うだろ。だいたい、イジメなんてものは団体生活を送っていればどこでも起こりうるものであり、それをいけしゃあしゃあと“起こっていない”と宣うとは、この学校は何らイジメ問題に対して真摯に向き合っていないことを意味している。こんなセリフをノーチェックで垂れ流すとは、本作の送り手は不真面目極まりない。エンド・クレジットではなぜかU2の「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」が流れるが、こんな低級な映画に使われるとは、U2のメンバーも良い面の皮だろう。
コメント
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