元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「御法度」

2015-04-26 06:27:07 | 映画の感想(か行)
 99年松竹作品。大島渚監督の映画を良いと思ったことは一度もないが、この作品は新選組の内ゲバを同性愛がらみで淡々と描いており、まあ破綻が少なく最後まで観ていられた。ただ、面白いかというと全然そうじゃなく、たとえて言うなら、平日の午後に再放映されている昔の平凡なホームドラマを何気なく眺めているという感じだ。要するに“凡作”ということである。

 幕末の京都を仕切る新撰組に、田代彪蔵と加納惣三郎が新たに入隊する。早速近藤勇は惣三郎に御法度を破った隊士の処刑を命じるが、見事に任務を全うし、総長の信頼を得る。しかし副長の土方歳三は腹に一物あるような惣三郎の態度に、イマイチ信用できないものを感じるのだった。



 そんな中、惣三郎と田代が同性愛関係にあるという噂が流れ、しかも惣三郎は組のメンバーである湯沢藤次郎とも怪しい仲であることが判明し、さらにはその藤次郎が何者かに殺される事件が起きる。近藤は嫉妬に駆られた田代が藤次郎を殺害したと決めつけ、惣三郎に田代を始末するよう命じるが、事の真相は別のところにあった。司馬遼太郎による短編の映画化である。

 仲間内でのドロドロとした愛憎劇が緊張感たっぷりに展開されるのかと思ったら、上っ面だけの描写に終始していて、ドラマ的な深みは皆無に近い。そして、作者の新選組に対する思い入れが感じられるような箇所も見当たらない。ただ、必要以上に引っ張ったり弛緩した場面を延々と見せられるようなことは無く、ストレスフリーで付き合えるのが長所といえば長所だろうか。

 惣三郎役の松田龍平はこれがデビュー作。ルックスと毛並みの良さだけを買われての起用だと思われるが、演技は大根。まあ、最初はこんなものだろう。土方にはビートたけしが扮しているが、幕末を代表するプレイボーイだった土方を彼を演じるのは違和感がある。

 他に武田真治や浅野忠信、寺島進、田口トモロヲ、菅田俊など多彩な面子が揃っているが、あまり印象に残らない。坂本龍一の音楽やワダエミの衣装デザインも冴えない展開だ。せいぜい近藤を演じる崔洋一の落ち着かない目玉が面白かった程度。

 実をいうと、この映画に関しては当時のテレビCMが一番興味深かった。何やら松田龍平をめぐってのボーイズラブを強調するような演出が施され、まさにB級テイストが満載。興業側のヤケクソぶりが垣間見えたが、その甲斐も無く大してヒットもしなかったのには失笑するしかない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする