元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「大統領の理髪師」

2015-04-12 06:57:26 | 映画の感想(た行)
 (英題:The President's Barber)2004年韓国作品。どうも要領を得ない映画だ。本国人ならばウケるのかもしれないが、こっちはシラけるだけだ。韓国の朴正煕大統領時代(63年から79年)を、彼の散髪係になった一庶民(床屋)の視点から描くコメディ。

 60年代、“青瓦台”のある孝子洞で理髪店を営むソン・ハンモは、大統領の近くに住むことを誇りに思い、政府の言うことに疑いを持たないナイーヴな男だった。そんな彼が、ひょんなことから大統領の専属理髪師に選ばれてしまう。名誉ある任務だと思われるが、少しの粗相も許されないハードな仕事で、ハンモのストレスは増すばかり。しかも、北のスパイが潜入する騒動が勃発。その巻き添えを食らって、ハンモの息子ナガンが警察に連行されてしまう。ハンモは事態を収拾すべく、町中を駆け回る。



 ここで紹介される閣僚達の下世話な勢力争いと、それに翻弄される主人公。そして何も考えないままに熱烈な政権与党支持者となっている下町の人々の有り様は、当事者ではない日本人が観てもピンと来ない。喜劇の体裁を取ってはいるが、ほとんど笑える箇所がない(強いて挙げれば、学生のデモ行進の中を、リアカーを押しながら右往左往する場面ぐらいだ)。それどころか“当時の韓国は、何て愚かな事ばかりやってたのだろうか”と嘆息してしまった。

 「二重スパイ」や「シルミド」を観た時も思ったが、どうやら韓国人は当時を“過ぎ去った事”と片付け、挙げ句の果ては本作のように“笑い飛ばす対象”と位置付けているようである。ならば現在の韓国はそれほど上等な国なのか。竹島問題に対するスタンス等を見ても、韓国は先代の朴大統領時代と同程度あるいはそれ以上の夜郎自大ぶりではないか。

 しかも映画は当時の経済成長が日本からの拠出金によるところが大きいことに触れもしない。逆に閣僚達が“日本の士官学校の何期生か”ということに拘るあたりを茶化してみせる。ハッキリ言ってウンザリしてしまった。

 これがデビュー作だというイム・チャンサンの演出は大味で、ソン・ガンホやムン・ソリ等のクセ者キャストを配しているわりには画面が弾まない。茶色のフィルターをかけたノスタルジックな映像も、一本調子で全編やられると飽きる。
コメント
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