前年(2010年)の「行きずりの街」に続いて、またしてもテレビの2時間ドラマをスクリーン上で見せられるとは思わなかった(呆)。本当につまらない。この映画の作り手は、こういう低レベルの作品を金を払った観客に対して提示することに関し、一抹の不安も羞恥心も抱かなかったのだろうか。まったく恐れ入る。
原作は東野圭吾のベストセラーだが、凡作・駄作揃いの東野の著作群の中にあって「白夜行」はまあマシな部類だ。かなりの長編だが、それなりに読者を惹き付ける作劇の御膳立ては出来ていたように思う。難点は終盤に話を無理矢理に終わらせるためか、バタバタとした展開になってしまったことぐらいか。
1980年に起こった質屋店主殺人事件が被疑者の死亡によって真相は有耶無耶のまま、それから19年の月日が経過する。その間、事件当時子供だった被疑者の娘と被害者の息子が成長するに連れ、彼らの周囲で不可解な凶悪犯罪が連続して起こるというのが筋書き。
長い原作を一本の映画にまとめる際には、物語のテーマを把握しつつ、その焦点となるエピソードをピックアップして、破綻無くラストまで引っ張るというのが鉄則だと思うが、この作品にはそんな工夫の跡は微塵もない。漫然といくつかのパートを選んで、これまた漫然と映像化しただけである。
しかも、場を保たせるためか説明的なセリフやシークエンスが山のように挿入されており、観ている方は興醒めするばかりである。画面に緊張感が無く、薄っぺらいセットが寒々しく並ぶばかり。監督の深川栄洋の腕前は三流と言うしかない。
演技陣だが、これはもう酷すぎる。ヒロイン役の堀北真希は表情が乏しくセリフ棒読み。相手役の高良健吾もカッコ付けているだけで中身はカラッポ。刑事に扮する船越英一郎に至っては、わざとらしい身振り手振りでシラけてしまう。ラスト近くの長台詞など、何かの間違いではないかと思うほど臭い。
ただし、堀北にしろ高良にしろ船越にしろ決してヘタな俳優ではない。別の映画では語るに足る仕事をしている。要するに、彼らに満足な演技指導も出来ない本作の作者がボンクラなだけだろう。観る必要のない映画である。