元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「WALL・E/ウォーリー」

2008-12-21 07:23:27 | 映画の感想(英数)

 (原題:WALL・E)キャラクター設定は魅力的だが、話の辻褄が合っていない。29世紀、ゴミの山と化した地球を人類は見捨て、巨大宇宙船に移住したまま七百年間も引きこもっている。その間にゴミ処理ロボットが地球を掃除してくれる・・・・はずだったが、ほとんどはスクラップと成り果て、動いているのはただ一体だ。

 そのロボット・ウォーリーは長年にわたる駆動で計器類がおかしくなったのか、偶然に“意志”を持つようになり、人間が残していったミュージカルのビデオを見ながらいつの日か誰かと“手と手を取り合う”ことを夢見ている。このシチュエーション自体は悪くない。冒頭よりセリフの一切ないロボットと友人のゴキブリの“二人だけ”の映像だけで“ウォーリー”の内面まで描き出す演出力は、さすがピクサー作品だ。彼らの前に宇宙より現れるハイテク・ロボットのイヴの造型も実に上手いもので、一応“女の子”という設定も頷ける。

 イヴはウォーリーが見つけた植物の苗を目的に地球にやってきたらしいのだが、ところがよく考えると荒涼とした風景の中でどうして一本だけ植物が育っているのか不思議だ。この時代の地球には海もないようだ。ならば水はどうしたのか。ゴキブリがいるところを見ると大気はそれほど汚染されていないと想像出来るが、ほぼ何もない状態の地球に人間達が大挙して戻ってきてもメリットがあるとは思えない。

 しかも、彼らは機械に身の回りを世話してもらっている状況が長かったため、すっかり足腰が弱った挙げ句ブクブクと太っている。これで地球上で生活しようとしても、重力にさえ適応できないだろう。それに細かいことを言えば、ウォーリーを載せたロケットが巨大宇宙船に到着するのに通常の航行で、ラスト近くに巨大宇宙船が地球に戻る際にはワープ航法だというのは、どう考えても理に適っていない(いったいどこに位置していたのやら ^^;)。

 「ファインディング・ニモ」のアンドリュー・スタントンによる演出はテンポが良く、特に巨大宇宙船内でのチェイスや大規模なスペクタクル場面には思わず身を乗り出して見入ってしまう。ギャグの扱いも上手い。

 ただし「2001年宇宙の旅」のあからさまなパロディが時折挿入されるのは愉快になれない。もうちょっとスマートなネタの振り方を考えるべきだった。全体として“子供と一緒に観るには良い映画”ということになるのだろう。マジメに対峙するとタメ息が出ることは確かだ。
コメント
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