元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」

2008-12-12 06:35:43 | 映画の感想(さ行)

 (原題:SHINE A LIGHT )出来としては決して悪くないが、観たときのインパクトはハル・アシュビー監督が82年に撮った「ザ・ローリング・ストーンズ」の方がはるかに上だ。もちろんそれは鑑賞時の状況によるところが大きい。

 アシュビー版が公開されたときは、ストーンズが日本で公演するかどうかがまったく見えなかったのだ。よって、あの作品の上映はファンにとってコンサートの代替イベントでもあった。そのせいか、観客のノリは凄まじかったことを覚えている。演奏に合わせての手拍子足拍子はもちろん、メンバー紹介のシーンでは“ウォーッ!”という地響きにも似た歓声が劇場内に巻き起こったものだ。

 あれから20数年経ち、ストーンズも日本公演を果たし、すっかりヴィンテージな(?)お馴染みバンドとして定着してしまった現在、コンサート・フィルムの劇場公開に意味を持たせるにはよっぽど効果的な演出面の工夫が必要だが、本作はそれが十分だったとは思えない。会場はニューヨークのビーコン・シアターで観客は2千人ほど。対してアシュビー版は大規模コンサートだった。

 スタジアム級の会場で撮られるコンサート映画は確かに存在価値はある。なぜなら、大部分の観客にとってミュージシャンを間近では見られない。だから演奏する側に寄った映像を作る意義はあるのだと思う。しかしこの映画は大物クラスのコンサートとしては小さい場所を選んでいる。確かに観客席にいるような臨場感は味わえるのかもしれないが、ならば“実際にライヴに行った方が数段マシ”という結果になるのではないか。マーティン・スコセッシ監督特有の、何か抑圧されたような空気感もマイナスだ。

 肝心の演奏内容だが、これはやはり横綱相撲と言って良い。ミック・ジャガーはとうの昔に60歳は超えているはずだが、贅肉のカケラもないボディと激しいアクションは年齢を全く感じさせない。他のメンバーも飄々とした味を維持していて、無様に太っている奴なんか一人もいない。特筆すべきはゲストで、クリスティーナ・アギレラ、バディ・ガイ、ジャック・ホワイトという強力布陣。プログラムに絶妙のメリハリを加えていた。欲を言えばもっと“お馴染みの曲”をやった方が良いと思ったが、監督の意向もあることだし仕方がないだろう。

 さて、気になったのは会場にクリントン元大統領とその取り巻きも来ていて、彼自身開会前のスピーチなんかもおこなっていたこと。ハリウッドは民主党支持者が多いとはいえ、この手の映画でそういうテイストを挿入するというのは場違いかと思う。そもそもロックというのは“政治なんかクソくらえ!”といったアナーキーさが身上ではなかったのか。
コメント
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