元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

小林泰三「ΑΩ(アルファ・オメガ) 超空想科学怪奇譚」

2008-12-07 18:32:22 | 読書感想文
 近年出てきたホラー作家の中で最も“あぶない奴”と言われているのが、この小林泰三(こばやし やすみ)である。「玩具修理者」や「兆(きざし)」「本」「C市」といった諸作でその異常ぶりは遺憾なく発揮されているが、このSF長編は、往年のヒーロー物TV番組に対する彼の思い入れがたっぷりと描かれ、血肉にまみれた中短編とは違った味わいを持っている。

導入部は「ウルトラマン」の第一回とそっくりで、さらに「マグマ大使」や「仮面ライダー」からの引用と思われるシーンも多数。子供の頃に特撮ものにハマっていた身としては、読んでいて思わずニヤリとしてしまう。もちろん得意のスプラッタ場面も満載だが、読後感がさっぱりしているのは、この作家にしては珍しいポジティヴな姿勢が貫かれているからだろう。

 余談だが、女性作家によると思われる文庫本の巻末解説は、勘違いしたようなモノローグが延々と続くだけの駄文で、この程度のパフォーマンスしか出来ないプロもいるという事実を示した意味では壮観である(苦笑)。
コメント
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