元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「RUSH!」

2008-12-24 06:38:01 | 映画の感想(英数)
 新作「感染列島」が公開待機中の瀬々敬久監督による2000年作品。焼肉屋の若い店員と社長(実はヤクザ関係)の一人娘が仕掛けた狂言誘拐が、悪徳警官や自殺志願の男などの勝手な「乱入」により、予測不可能な展開を見せ始める。

 作劇はタランティーノの「パルプ・フィクション」やクリストファー・ノーラン監督「フォロウィング」と同じく、時制をバラバラにして各シークエンスの間にあるものを観客の想像力で補わせようという形式を取っているが、面白いのは物語の結末と各エピソードとの整合性がまったくないこと(しかも、その「結末らしきもの」も複数あったりする)。これは別に脚本の失敗ではなく、明らかに故意にやっている。要するに観客側で勝手にシークエンスを組み立てることで無数のストーリーが創出する可能性を示しているのだ。

 これはまた“複数の物語が別々に同時進行しているが、最後にはひとつに収斂されるのだろう”という観客の予想を覆してみせる挑発的行為でもある。こんな「禁じ手」を無理矢理に納得させるべく、演出・カット割りには細心の注意が払われており、観る側に疑問を差し挟むヒマを与えない。これもひとつの“映画的快感”なのだろう。同じ「禁じ手」でもブライアン・デ・パルマ監督の「ファム・ファタール」の下手くそな提示の仕方とは雲泥の差がある。

 キャスティングは非常に多彩で、哀川翔と竹内力の“お馴染みコンビ”をはじめ、大杉漣や阿部寛、柳葉敏郎に千原浩史、ヒロイン役に「シュリ」のキム・ユンジン、それにCM「一本いっとく?」のハニホー・ヘニハーまで出ているのだから笑える。一般公開時にはマイナーな扱いしか受けなかった映画だが、なかなかの快作なのは確か。
コメント
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