元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「櫻の園」

2008-12-09 06:49:24 | 映画の感想(さ行)
 90年作品。今年(2008年)になって同じ中原俊監督による“続編”みたいな作品が公開されたが、私は観る気が起きなかった。なぜなら、元ネタになった本作がまるでピンと来なかったからだ。ましてやその“二次使用”で前作を超えられるはずもない(事実、評判は良くないようだ)。

 とある私立女子高校の創立記念日に起こったいくつかのエピソード。チエーホフの「桜の園」を上演する演劇部の部員たちの、朝から上演までの2時間の出来事を描く。キネマ旬報ベストワンはじめ90年の映画賞を総ナメにした映画で、確かに映像面に限っては高水準の作品だとは思う。

 たとえば舞台になる演劇部の部室である。部屋に中二階を設けて四方に階段と鏡を置いた空間設計が見事。照明を落として、そこに春の日差しが射し込む。登校して来る女生徒たちの息遣いを室内を一杯に満たすような、藤沢順一のカメラがいい。クレーンを多用した見事な移動撮影。ラストの、誰もいない部室の開け放たれたままの窓に桜の花びらが舞うシーンは、忘れられない余韻を残す。

 しかし、内容は物足りない。登場人物にまるで血が通っていない。確かに主要キャラクターの4人(中島ひろ子、つみきみほ、白島靖代、宮澤美保)をはじめ、女優陣はすべて好演だ。でも、彼女たちが本当に現在の女子高生像を体現しているかというと、ちょっと違うのではないかと思う(女子高生の知り合いはいないので断定は出来ないが ^^;)。私立の名門女子校、女の子だけの秘密めいた会話、厳格な校則など、それらしいモチーフは出ていた。ところがなぜかどれも表面的で、あえて言ってしまえばウソっぽい。

 公開当時、年取った男性評論家に絶賛されたのもよく分かる。これはオジサンどもが勝手に想像するところの、人畜無害な、夢みる少女、いいとこのお嬢さん像なのだから。「櫻の園」は結局絵空事なのだと思う。それにしてもこの程度の映画を堂々キネ旬ベストワンはじめ各映画賞に選んだ評論家連中には納得できない。これはせいぜいベストテンの9位か10位にすべりこませるくらいがちょうどよかったと思うのだが。
コメント
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