元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「300 スリーハンドレッド」

2007-06-27 06:53:35 | 映画の感想(英数)

 (原題:300 )「シン・シティ」のフランク・ミラーによる劇画の映画化ということだが、ルドルフ・マテ監督による61年作品「スパルタ総攻撃」のリメイクのような印象である。同じ史実を題材にしているということだけではなく、似たようなシーンもあるし、何よりあの映画の原題は“300 Spartans”であった(ミラー自身もあの映画にインスピレーションを受けたそうだ)。

 ともあれ、わずかな手勢で強大な敵をキリキリ舞いさせたというテルモピュライの戦い自体が史劇としてアピール度の高い題材であるし、事実この映画も観ていてかなり“燃える”。もう、手に汗握るほどだ。

 出てくる奴らの面構えが良い。そして必然的にマッチョである点もよろしい。弓矢や槍が飛んでくる戦場ではいささか軽装に過ぎる装備とも思えるが(笑)、見た目には実に効果的だ。この肉体美はCGではなく、特訓によって作り上げられたものらしく、なるほど身のこなしに不自然なところはない。

 本作の活劇演出のリズムは非凡なもので、大軍が画面を移動するだけの大味な描写を極力抑え、一対一あるいは小集団同士の戦いをメインに置いている。カメラとアクションの主体との距離も適切。さらに随所に“決め”のポーズを多用し、残酷さを払拭すると共に、日本の往年の時代劇にも通じる様式美をも獲得している。観る前は映像ギミック過多の薄っぺらい映画かと思っていたら、どうしてどうして絵作りは達者だ。VFXを完全に題材を扱う際の小道具として使いこなしている。

 もちろん、劇中で3百人のスパルタ軍全員のプロフィールを紹介するのは無理だが(爆)、ジェラルド・バトラー扮するレオニダス王をはじめ主要登場人物のキャラクターはきっちりと描き分けられ、ストーリーラインも無理なく流れていく。ザック・スナイダー監督の力量は侮れないと言って良い。

 徹底した戦闘エリートを育成するため少数精鋭主義を取り、身障者などはゴミのように見捨てられるスパルタの体制は、リベラル派からクレームが付きそうなほど極端なものだ。しかし、観ている間はそんなことを忘れさせてしまうほどの“戦いの美学”にシビれてしまう。言い訳無用の“男の映画”だ。幅広く奨めたい。
コメント
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