元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「リーピング」

2007-06-14 06:39:04 | 映画の感想(ら行)

 (原題:The Reaping )テレビCMやポスターでは“イナゴ少女、現る”なんていう胡散臭い惹句が踊っていたが、残念ながら本作にはアンナソフィア・ロブ扮する“少女”がイナゴの大群を操って暴れまくるシーンなどない(笑)。物語の骨子は欧米製ホラーでよくあるパターンの“聖書ネタ”。今回は“10の災い”が大々的に映像化される。

 まずびっくりしたのは前半の南部の湿原地帯が真っ赤に染まる場面だ。特殊処理による映像だとは頭では分かっていても、水質汚濁の最悪の例を見せられているようで、実に嫌な気分になってくる。さらに、家畜の牛が原因不明の病気で大量に死んでゆく中盤のエピソードもインパクトのある映像だ。なぜなら、これは狂牛病の症例と変わらないからである。単なるオカルト映画のモチーフが、現実の問題をなぞってゆく良い意味での気色悪さ(?)が画面の求心力を高めている。

 しかし、ここで一歩進めて“聖書の内容と環境破壊との関連性”をトンデモ理論を駆使して大風呂敷を広げ、ケレン味たっぷりに大見得を切っていれば楽しめる映画になったところだが、製作者のマジメぶりが災いしてか“聖書ネタ”から一歩も出ていないのは不満だ。

 ヒラリー・スワンク扮する主人公の学者が以前は敬虔なキリスト教徒で、後進国での布教中に夫と娘を殺され、それ以来無神論に鞍替えし、世界中の超常現象のインチキぶりを暴くことに命を賭けているといった設定からして、キリスト教とは無縁の観客からすれば“どうでもいいこと”なのである。そもそも低開発国にとって大事なのは信心の押しつけではなく具体的な支援の方だと思うのだが、そのへんが分かっていない欧米人が未だにいることは実に噴飯ものだ。

 さて、筋書きはといえば、悪い奴は誰なのか早々にバレてしまうし、中盤の展開は「オーメン」のパクリ臭いし、終盤なんて「デアポリカ」(←知ってる人いるかな ^^;)を思い出してしまうし、要するに上等のものではない。スティーヴン・ホプキンスの演出はただ脚本を地道に追っているだけで、特筆すべきものはなし。製作はジョエル・シルヴァーとロバート・ゼメキスのダークキャッスル・エンターテインメントだが、ホラー専門プロダクションならばもっと思い切った企画を披露して欲しい。
コメント
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