(原題:The Science of Sleep)題名通り、鑑賞中に気持ちよく“睡眠”できそうな映画だ(笑)。それほどまでに本作は退屈である。
引っ込み思案の主人公の内面をキッチュな映像で飾り立てた映画としては「アメリ」が代表作だが、あれはあくまでも“内向きのキャラクターが外部にブレイクスルーしてゆく”という普遍的なドラマツルギーを盛り立てるための映像ギミックに徹していたのに対し、本作は“映像効果のための映像効果”でしかない。
・・・・などと書くと作者は“自閉的な主人公の心情を表現するためのSFXであり、断じて単なる映像ショーではない!”と言うのかもしれないが、その描くべき“内面”が映画として全編ストーリーを紡げるほど御大層な深みのあるネタかというと、それは全然違う。主人公の内側で自己完結してしまう物語世界など、よほどの“天才的夢想家(?)”でもない限り、他人から見れば狭くてチンケなものに過ぎないのだ。
さらに彼のメンタリティが人並み外れて幼いという設定で、イマジネーションの飛翔度はますます低空飛行を続けるのみ。それに気付かないあたり、この監督(ミシェル・ゴンドリー)の洞察力は浅いと言うしかない。
特撮のモチーフは、いかにも女性観客にウケそうな手芸感覚あふれる可愛らしいものばかりだが、見せ方が一本調子で、ハッキリ言って10分で飽きる。主演のガエル・ガルシア・ベルナルとヒロイン役のシャルロット・ゲンズブールは、まあいつも通りの好演。でも、取り立てて目立ったパフォーマンスを披露してくれるわけではない。
それに舞台がパリなのにセリフのほとんどが英語であるのは違和感が大きい。主人公がメキシコ人でフランス語が達者ではなく、周囲とコミュニケーションを取るには英語を使うしかないという前提だが、ならば舞台を英語圏に持ってくるとか、もうちょっと工夫を凝らす方策もあったと思うのだが・・・・。