元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「イルマーレ」

2006-10-25 06:45:40 | 映画の感想(あ行)

 (原題:The Lake House)ハリウッドがヨソの国の映画をリメイクする例は過去にも多数あったが、元ネタを上回ることはほとんどない。あるとすれば、元の作品があまり出来が良くなく、相対的にハリウッド版がマシに見えたというケースのみだろう。本作は韓国映画の再映画化だが、やっぱり元ネタに負けている。

 そもそもひとつの郵便ポストを介して、2年の時を越えて男女が文通するという設定自体に無理がある。ファンタジーとしては大風呂敷の広げ具合が足りず、単なる作者の“思いつき”の次元に留まっている。

 それでも韓国版はイ・ジョンジェとチョン・ジヒョンというフレッシュなカップルの魅力や、舞台装置となる海辺に建てられた一軒家の造型の素晴らしさ等で肌触りの良い恋愛劇に仕立て上げられていた。ところが本作の主演はキアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックであり、元ネタよりも年齢層がかなりアップしている。これでは元ネタのアドバンテージである青春映画としての爽やかさが失われ、明らかに不利。

 それでも監督のアレハンドロ・アグレスティは落ち着いたタッチで大人の恋を描こうと腐心している。舞台になるシカゴの街を美しい色調でとらえ、カメラの動きを最小限度に抑えると共に、ハリウッド映画では珍しい長回しを多用する。

 しかし、そんな具合に素材をじっくりと描こうとすればするほど、映画のテンポが失われると同時に、この“郵便ポストを通じてのタイム・スリップ”というモチーフが安っぽくなってしまう。しかも、二人が“文通”を始める前にも会っていて、けっこう良い雰囲気になったこともある・・・・などという、語るに落ちるような展開もあったりして、愉快ならざる気分になってくる。何よりヒロインが冒頭近くで遭遇する交通事故のシーンにより、勘の良い観客にはオチが分かってしまうのが辛い。

 結論を言えば、まずは脚本の不備、そしてそれ以前に作品のコンセプトの吟味不足がある。これでは、とても評価できない。
コメント (2)
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