元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ローズ・イン・タイドランド」

2006-10-21 07:23:41 | 映画の感想(ら行)

 (原題:Tideland)久々にテリー・ギリアム監督の“外道モード”が全開になった怪作で、大いに楽しめた。前作「ブラザーズ・グリム」の不甲斐なさは忘れてしまおう(笑)。

 ミッチ・カリンの小説「タイドランド」の映画化。子供が主人公の、明らかに「不思議の国のアリス」をベースにした話なのに、なぜかR指定になったのは映画を観ればその理由がすぐ分かる。10歳のジェライザ=ローズの両親は共にヤク中で、母親(ジェニファー・ティリー)は怪しげなガスを吸飲して死亡。父親(ジェフ・ブリッジス)は彼女と共に今は亡き祖母の家に引っ越すが、クスリのやり過ぎで彼も死去。その父親にヘロインを打つ“お手伝い”をしていたのがローズなのだから、これはR指定どころか18禁も当然の反・公序良俗ぶりだ(爆)。

 さらに天晴れなのは、小賢しい道徳律だの何だのは全て捨象され、徹底して映画は彼女の視点から見た一人称世界として描かれている点である。彼女の目からすれば荒涼とした原野は大海になり、頭のおかしな隣人は逞しい船乗りとなり、首だけのバービー人形たちはかけがえのない仲間となる。童心とグロテスクさが入り混じったワンダーワールドを何のてらいもなく全面展開させる思い切りの良さには、感服あるのみだ。

 そして、この自由奔放な世界を一人で引き受けるローズを演じるカナダの子役女優ジョデル・フェルランドの存在感には圧倒させられる。わずか10歳でアブナいシーンも難なくこなし、4体のバービー人形の“声”まで担当する芸達者。アメリカの有名子役ダコタ・ファニングがいかにも“演技してますっ!”という押しつけがましさを周囲に振りまいているのに対し、フェルランドは役そのものに完全に成りきっているのが凄い。まさに天才子役。しかもファニングよりもはるかに整った顔立ちをしているため、10年後・20年後が楽しみだといえる(^^;)。

 通常の娯楽映画を期待する向きには絶対オススメできないが、変化球もOKのコアな映画ファンには楽しめる腐臭漂うダーク・ファンタジーである。
コメント
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