元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「そして、ひと粒のひかり」

2006-03-16 21:21:39 | 映画の感想(さ行)
 (原題:MARIA FULL OF GRACE)こういう映画を観ていると、日本人に生まれてきたことが“幸福”であると思い知らされる。

 コロンビアの田舎町で生花工場に勤めるヒロイン。横暴な上司と単調極まる仕事。彼女は耐えられず辞めてしまうが、家に帰れば彼女の収入をアテにしていたロクでもない母親と身持ちの悪い姉がいるだけだ。さらに、いい加減なボーイフレンドの子を身籠もってしまった彼女に出来るのは、麻薬の運び屋しかない。

 コカインの固まりを胃の中に収め、持ち出し先で無理矢理身体の外に出すというシビアな手口もさることながら、主人公のような一般人が簡単に悪事の片棒を担いでしまう社会状況に慄然としてしまう。コロンビアはこの世の地獄である・・・・と何かのコラムに書いてあったが、それも頷けよう。

 だが、こういう理不尽なストーリーでありながら映画自体が暗くならず、また観客を最後までスクリーンから目を離させないように出来たのは、主演のカタリーナ・サンディーノ・モレノに尽きる。逆境をものともしない鋭い眼差しや、病院でお腹の子の心音を聞くシーンの優しい笑顔が実に印象的で、さすが本作でオスカー主演女優賞候補になっただけのことはある。

 これがデビュー作となる監督のジョシュア・マーストンは地元の者ではない(アメリカ人である)ためか、コロンビアの現状をクールに捉えており、対象に接近しすぎてタッチが重苦しくなるのを回避している。次回演出作の「The Iraqi Convoy Project」も楽しみだ。
 
コメント (1)
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