元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「やさしくキスをして」

2006-03-13 06:52:40 | 映画の感想(や行)

 ケン・ローチ監督はラヴ・ストーリーを扱う時でも実にシビアだ。スコットランドのグラスゴーを舞台に展開する、パキスタン移民二世の青年とアイルランド人との女性教師の文化・宗教等の障壁を超えた恋愛劇・・・・と書けば、まるで通俗メロドラマを連想させるが、二人に対する“逆風”がまるで悪意を伴っておらず、それどころか各立場での“正論”である点が深刻だ。

 厳格なイスラム教徒である青年の一族は因習に従って従姉妹を彼の結婚相手に決めてしまう。女性教師も戒律を重んじるカトリック教会の圧力で職場を変わらざるを得なくなる。誰が悪いと言うことでもない。ムスリムもクリスチャンも自分たちが正しいと思う行動を取ることによって、結果的に二人を追い込んでしまう、その不条理。

 こういう映画を観ていると、多民族社会というのはいかに問題が多いのかを改めて実感する。安易に移民を容認しようとする我が国のリベラル派の連中にも見せてやりたい。

 主演のアッタ・ヤクブとエヴァ・バーシッスルは無名ながら映画をシュプレヒコールの応酬にさせないだけの地に足がついた好演を見せる。ヒロインが音楽教師ということもあり、楽曲の使い方も秀逸。原題の「Ae Fond Kiss…」は劇中で歌われるナンバーのタイトルでもある。
コメント (2)
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