元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」

2006-03-23 06:52:32 | 映画の感想(あ行)
 69年東映作品。近年逝去した石井輝男監督の、あまりにも有名な一作。いちおう江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」が原作ということになっているが、「孤島の鬼」をはじめ「人間椅子」「屋根裏の散歩者」なんかのネタが脈絡もなくぶちこまれているのが石井作品らしいウサン臭さだ(笑)。

 しかし、意外にも脚本はマトモに近かったりする。記憶をなくし、精神病院から脱走する青年(吉田輝雄)が殺人事件に巻き込まれ、ひょんなことから孤島に住む富豪の跡目争いの中心人物になってしまう・・・・と書けばいかにもストーリー支離滅裂みたいだが、珍しく演出の手際の良さもあって実際観てみると違和感はそれほどでもない。ラストにいきなり登場する明智小五郎もご愛嬌ってとこだろう。

 ただし、この映画を“カルト映画のキング”たらしめているというラスト20分間の奇形人間一斉登場のシークエンスは、正直言ってそれほどでもないのだ。暗黒舞踏の第一人者であった土方巽プロデュースの作品発表会って感じで、稚拙なメイクと大仰な動きで必死になってグロさを出そうと努力している印象を受け、見ていてほほえましくなってくる(おいおい ^^;)。もっとも、ラストの“おかーさーん!”(謎 ^^;)のシーンは別で、あまりの破天荒ぶりにブッ飛んでしまった。

 私は当作を数年前におこなわれた特集上映で観たのだが、映画本編よりも気になったのは観客の反応ぶりであった。“カルト作品”という触れ込みだけが先行していて、明らかにハズしている場面やどうでもいいシークエンスでもワザとらしい笑いが巻き起こった。カルトとして有名だから観客もそれなりの反応をしないといけないという風潮でもあったんだろうかねぇ(爆)。
コメント
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