元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「歓びを歌にのせて」

2006-03-14 06:48:46 | 映画の感想(や行)
 (原題:As it is in Heaven)心臓疾患によりキャリアを中断せざるを得なかった名指揮者(ミカエル・ニュクビスト)が、故郷でコーラス隊の指導をするうちに生きる力を取り戻す姿を描くスウェーデン映画で、2005年アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされている。

 何よりこの元指揮者、薄着&裸足で厳寒の中を出歩いたり、激しく身体を動かしたり、巨乳のねーちゃん(フリーダ・ハルグレン)とよろしくやったりと、心臓に悪いようなことを平気で実行しているのには失笑してしまうが、物語は彼だけを中心に進むのではなく、群像劇のスタイルを取っているのでそのへんはあまり気にならないかもしれない。

 素人ばかりの合唱隊をかつてのマエストロが鍛え上げて国際大会参加・・・・という単純な一種の“スポ根もの”になりそうでならないところがミソである。それまで同好会気分でチンタラやっていた村人たちが、本格的に訓練に励むうち、それぞれの屈託がヘヴィな形で現出するという構図は面白い。

 権威だけを振り回していた司祭がその化けの皮を剥がされるくだりや、暴力亭主から逃げ出すカミさんの話も興味深いが、一番印象的だったのが村を仕切っているつもりの万屋のオヤジに小さい頃イジメられたことをいまだに根に持っている太った男のエピソードだ。改めてイジメという行為の理不尽さを痛感せずにはいられなかった。

 もちろん、ボイストレーニングの場面や初めて公式な席で訓練の成果を披露するシークエンスなど、音楽が持つ高揚感を示すシーンは事欠かない。60代のベテラン、ケイ・ポラック監督の素材への精通度はなかなかのものだと思う。特にDVに悩んでいるカミさん(演じるヘレン・ヒョホルムはプロのシンガーでもあるそうだ)が、ソロで歌う場面は素晴らしい。ラストの処理もハリウッド映画では思いもつかないだろう。観る価値有り。
コメント
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