元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

オーディオむかし話/消えたブランド

2006-03-17 07:00:05 | プア・オーディオへの招待
 夏に買い換える予定のアンプ(あくまで「予定」ね ^^;)を物色していたら、もはや安価な単体ステレオアンプを作っている国内メーカーがマランツとデノンとCECの3つしかないことに愕然としてしまった。高級機種に目をやってみても、アキュフェーズとラックス、それとエソテリック(ティアック)以外には最近ボチボチと単体部門に復帰してきたオンキヨーぐらいしかない(ガレージメーカーを除く)。

 昔はこうじゃなかった。アンプに限らず、選択に困るほどに沢山の国産機種が揃っていたものだ。

 ブラックパネルが売り物の、今は無きアンプメーカーの大手サンスイは、毎年モデルチェンジをして大量のラインナップを市場に送り出していた。私はサンスイの音は好きではなかったが、あの大艦巨砲主義みたいな重厚長大な物量投入は、マニアには堪えられないものがあっただろう。

 今やミニコンとカーステレオのメーカーとして知られるケンウッドは、昔はトリオ(TRIO)という社名だった。トリオは最もアンプを売ったメーカーではないだろうか。あのパワフルかつスカッと抜けた音は若者に大受けで、私が最初に手に入れたアンプがトリオだったし、周りにも所有している連中が多かった。ケンウッドという名前は元々トリオの海外向けブランドだったが、市場調査の結果トリオという名前のイメージがイマイチだったため、社名まで変更してしまった。ちなみに、ケンウッドが大衆路線を取る前に退社・独立した技術者達が作った会社がアキュフェーズである。

 トリオのアンプとよく組み合わされていたのがダイヤトーンのスピーカーである。ダイヤトーンは三菱電機のオーディオ・ブランドで、前にも書いたけど絶大な人気を誇っていた。三菱電機に限らず、80年代までは家電メーカーが積極的にオーディオ部門に進出していたものだ。

 松下電器のオーディオ・ブランドはテクニクス(Technics)である(今ではDJ機器にその名を残すのみ)。技術的には世界トップクラスだった。中でも世界で初めてダイレクト・ドライブ方式のターンテーブルを開発した時は驚いた。テクニクスがなかったら、ヒップホップで使うスクラッチも生まれなかったかもしれない(笑)。スピーカー部門も巨大なリニアフェイズ型や平面振動板、後年には漆を使ったユニットなど、まさにやりたい放題だった。正直私はテクニクスの音は物理特性はスゴいけど無味乾燥という印象を持っていたが、90年代に入るとそれが良い具合に昇華されて清涼きわまりない独自のサウンド世界に到達。だが、その後撤退してしまった。残念なことである。

 今では考えられないかもしれないが、東芝もオーディオに乗り出していた。東芝のブランド名はオーレックス(Aurex)という。テクニクスほどではないけど、プレーヤーからスピーカーまでフルラインナップをそろえていた。特に得意のプラズマ技術を活かしてカセットデッキのVUメーターにプラズマ・ディスプレイを搭載したのには驚いた。他にもセパレート・アンプはマニアに大評判。スピーカーもユニークだった。でも撤退するのも早かった(笑)。

 日立のオーディオ・ブランドはLo-D(ローディ)と呼ばれた。確かメタルコーンを商品化したのはLo-Dが最初ではなかったか。カセットデッキでも2モーター・3モーター方式を積極的に採用し、ラジカセの延長線扱いされていたカセットデッキの市場価値を押し上げた。三洋電機のオーディオ・ブランド名はオットー(OTTO)。会社自体が地味なのでこっちもイマイチ目立てなかったが(笑)、発泡メタルを振動板に採用するなど思い切ったことをやった。そしてリニアモータードライブ方式のターンテーブルはマニアや評論家の絶好の改造の素材となった。シャープも負けじとオプトニカというブランドを立ち上げたが、こっちは実績を上げていない。ただしシャープはデジタルアンプの部門で今でも独自の地位を確保している。

 NECもアンプを作っていた。A-10と呼ばれたその機種は、国産離れしたデザインと採算度外視の物量投入でファンを驚かせたが、やっぱりペイできずに生産終了となった。あの時私も買っていればよかったとマジで後悔したものだ。

 あと、コーラルやクライスラーといったスピーカーメーカー、カートリッジ専門のサテン、プレーヤーのマイクロ、テープデッキのアカイ(およびA&D)など、今では消えてしまったメーカーやブランドは数知れず。これらが今でも生き残っていればと思う。だが、オーディオ自体の市場が縮小した現在、資本提携等で不況を乗り越えたデノン(昔のデンオン)や、スピーカー生産に特化して何とか業界に地位を築いているビクターなど、現役メーカーの頑張りの方を認めるべきだろう。

 ・・・・しかしそれでも、次々と新規ブランドが生まれている欧米の状況と比べると、やっぱり寂しい。どこか大手IT企業や投資ファンドあたりが、これらのブランドを復活させてくれないかな・・・・などと夢のようなことを思ってしまう。
コメント (2)
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