元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

河盛好蔵「人とつき合う法」

2006-03-24 17:31:13 | 読書感想文
 いわゆる“人付き合いのハウツー本”であるが、巷に溢れるこの手の書物がどれも薄っぺらく見えるのは、書いている本人に貫禄がないからだ。いくらもっともらしいことを述べても“では、そういうアンタはどうなのだ”と切り替えされればオシマイ(爆)。

 だが、これが我が国を代表するフランス文学研究者であり文化勲章も受賞している河盛好蔵の論述になると、説得力が大幅アップする。

 作者本人が(謙遜はしながらも)相当“人付き合い”に長けた人物であることが垣間見え、しかもその“付き合う相手”とは戦後を代表する文壇・論壇のVIPばかり。これ見よがしの“オレはこんな偉い奴らと付き合ってるんだぞ”という態度は微塵もなく、自身もまたVIPであるだけに、付き合う相手との適度な距離感やまったく嫌みにならない“余裕”というものが感じられ、実に読んでいてリラックスできる。

 内容の“人と付き合う法”そのものについては別に言及するほどでもない。誰でも分かっていることなのだ。その“誰でも分かっていること”を実行するのがいかに難しいか。それを河盛のような傑物に説かれてこっちも満足げに頷くか、あるいは細木○子みたいな胡散臭い山師のようなのに説教されて無理矢理納得しようとするか、そのへんの“絶対的な差”について想いを馳せるだけでも読む価値はある。
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パトリシア・コーンウェル「検屍官」

2006-03-24 06:45:49 | 読書感想文
 人気シリーズの第一作で、数々の賞を取っているそうだ。なるほど、事件記者および検屍局でのプログラマーの経験を持つという作者ならではの精緻なディテールは読み応えがある。

 連続猟奇殺人を追う主人公・女性検屍官ケイ・スカーペッタのキャラクターも悪くない。特に身持ちの悪い妹からいつも押しつけられる姪との関係は、親密だけど所詮親子ではないという切ない状況をうまく掬い取っている。

 だが、ミステリー小説としてはまったくダメだと思った。

 何より犯人の出現の仕方はこの手の作品として失格。言うなれば読み手の“犯人捜し”の醍醐味を完全に奪ってしまう“反則技”である。さらに終盤ヒロインの自宅で三流ホラーもどきの“活劇”が展開されるに至っては脱力するしかない。

 読み終えて感じたのは、ハリウッドで濫造されるお手軽サスペンス映画と実に似た雰囲気を持っているところだ。登場人物の設定だけしっかりと押さえて、あとは御為ごかし的なプロットを申し訳程度に並べるだけ。これならいくらでも“続編”は作れるな・・・・と思ったら、御存知のように長寿シリーズになっている。逆に言えば、その中の一冊でも読めばあとはどうでもいいってことだろう。暇つぶしのお供にはちょうどいいとは思う。
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