気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

題詠マラソン2005(66~70)

2005-09-18 23:39:08 | 題詠マラソン2005
066:消
知らぬ間に消えし日時計眼うらをひがな一日廻りつづける

067:スーツ
四半世紀まへに見かけし省エネの半そでスーツ今クールビズ

068:四
四条河原出雲の阿国は銅像に美空ひばりは看板になる

069:花束
わがために買ひし黄バラの花束にリボン要らぬと店員に告ぐ

070:曲
折り鶴の首の曲がりの角度にて母の作りし折り鶴と知る

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特にこれという予定もなく一日を過ごす。三連休。三日あってまた三連休。

あれもこれもやらねばやりたいやるつもりおもひめぐりてまず米をとぐ
(近藤かすみ)

かくれたばこ

2005-09-16 23:33:30 | つれづれ
事務室に続ける印刷室にきてかくれたばこを吸ふのも教師

いま暫し隠れてわれは此処に居むかくれとほして一夏あれな

(小池光 滴滴集)

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夕べ、村本希理子さんのHPのいちご摘みに参加。そこで、小池さんの「かくれたばこ」の歌があったのを思い出したが、どの歌集かすぐにわからず、いろいろ調べてやっと見つけた。
深夜までパソコンの画面や本を見ていると、なかなか寝付けなくなる。昼間、結構疲れているはずなのに眠れない。すぐ寝付いていた頃もあったが、身体を横にしているだけで休養になっているから、まあええか・・・と思っている。(画像は蓋と受け皿までついたベトナム安南焼きの灰皿)

眠り草ほんに会ひたきひとの顔さがす間に間に夢ははじまる
(近藤かすみ)


題詠マラソン2005(61~65)

2005-09-13 23:30:47 | 題詠マラソン2005
061:じゃがいも
男爵の選ぶ五月の女王様じゃがいも畑の朝のにぎわひ

062:風邪
日に二回服めば必ず効くといふ風邪のクスリのやうなあの人

063:鬼
親に似ぬこの子鬼つ子ほほづきを鳴らす遊びの上手な子なり

064:科学
「科学的根拠」に護られ罪人と狂人のあはひ茫漠となる

065:城
不夜城の女あるじと召使ひ代はるがはるにレジを打ちたり

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題詠マラソン2005、私はあと16首というところまで来ている。
今年も「継続は力」と思う気持ちのみを頼りに走る。じゃあなくて詠う。
画像は鬼灯の冬枯れ。季節の花300のサイトからお借りしています。


夏、いたるところに 加藤治郎

2005-09-12 23:53:34 | つれづれ
丸めたらかたつむりにもなるだろうきみの手紙の意地っぱり、ちっ

詩集から付箋をはがす明け方のその一枚の蜻蛉の羽

ゴシックから明朝体に換えているあなたを誘う蛍のような

あたらしいカスタネットの赤と青あす逢いたいとメールは奔る

ひとりひとり母を呼ぶ声りんりんと冷凍蜜柑ちいさなみかん

(加藤治郎 夏、いたるところに 短歌9月号)

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いまごろになってやっと短歌9月号を買う。ほかの短歌総合誌も読みきれないのにまた買う。
加藤治郎さんには「うたう☆クラブ」で見ていただいた縁もあって、楽しく一連を読んだ。「意地っぱり、ちっ」が治郎さんらしい。

マリちゃんに天使が見えてユキちゃんに見えないらしい 放課後の空
(近藤かすみ)

今日の朝日歌壇

2005-09-11 22:06:27 | 朝日歌壇
よき桃をよき顔に買う朝の市旅の終わりのかくも爽やか
(名古屋市 藤田恭)

「ありがとう」われが言うべき言の葉をわれに残して母は逝きたり
(三原市 岡田独甫)

君のないこのさびしさが癒えるのを私は望むいや望まない
(小金井市 丸井礼子)

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今日は朝日歌壇らしくて、わかりやすいすっきりした歌をここにお借りした。
投票時間のギリギリになって選挙に行った。投票所には、以前PTAや地域のあれこれで一緒だった顔が並んでいる。
用紙を貰うとき、誕生日を聞かれるのだが、ついでに「娘さん大きくなられましたね」と言われる。うれしく思う反面、こういう係りの人としてはふさわしくない発言だも思う。本人持参のハガキを見ながら、家族の状況をチェックされているのかと・・・。しかし、ここで反論すれば、厄介なので「おかげさまで」と軽く返す。こういうことにいちいち反応して、なんだろうと思う。この辺りの「常識」の感覚がわからなくなってくる。名前も「かすみ」じゃないんだ。
取りあえず、家庭円満をアピールするパフォーマンスに成功。


クレーム 松村正直

2005-09-10 23:43:47 | つれづれ
さざなみのごとき電話のしずけさの思えばあれがクレームのはじまり

お茶請けの皿にはうすき羊羹のふた切れありて待たされている

問題の、これが、と言ってかばんより取り出されたる白きサンプル

霧ふかき町に来たりぬ手直しの済みたる品を荷台にのせて

呼び止めて道ゆく人にたずねれば駅舎のわきを抜ける道あり

(松村正直 クレーム 朝日新聞夕刊)

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今日の夕刊の文芸欄で、松村正直さんの連作を見つけた。
松村さんは、塔の方でD・arts(ダーツ)という短歌評論誌を出しておられる。

この一連から、クレームを受けた担当者が、その処理に出向いたことを歌にしたように読める。
かばんより取り出された白きサンプルは、何かの部品だろうか。それを交換した後、荷台に乗せたものはなんだったのだろう?荷台に乗せるとしたら、嵩のあるものを想像する。
短歌は謎解きでも、ストーリーでもないから、わからない部分があって当然。辻褄の合う話になってしまってはいけないのだろう。
「駅舎のわきを抜ける道」は、人生の抜け道でもあるように思われた。

名前あれこれ

2005-09-09 23:27:02 | つれづれ
咲くやうにポスターの上にありし名の如月小春散りて雪なり

あかき橋水に映るはうつくしくいつぽん手前の橋わたりゆく

(中津昌子 夏は終はつた)

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中津昌子の歌集を読みすすむ。
付箋のつく歌がたくさんあって、本がぶ厚くなっていく。

如月小春は劇作家。2000年12月に44歳で亡くなっている。
ふと、杉浦日向子、ナンシー関という若くして亡くなった女性を思った。名前の持つ力がその人を作っていく。言霊が引き寄せるものがある。
前向きの言葉を言うと、それに引かれて出来ないことも出来る場合がある。またその逆に不吉なことを言うと、そうなってしまったりする。それなら、いい事ばかり言えばいいのだが、それもまたストレスの溜まることである。
(画像は下鴨神社)

呼ばるること少なくなりてわれの名をときをり忘る親くれし名を
(近藤かすみ)

伏見たうがらし

2005-09-09 00:29:07 | おいしい歌
伏見たうがらし水に放ちて洗ふ手のくれなゐふかき秋をかなしむ

ほならまた明日、と上げるてのひらにもの煮(た)く匂ひ流れくるなり

ビニールの袋のなかに光りゐし通りすがりの金魚の尾びれ

(中津昌子 夏は終はつた)

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中津昌子さんにお会いしたことはないが、京都の方だ。
伏見とうがらしは、万願寺とうがらしよりやや小ぶり。油で軽く炒めて砂糖醤油に浸したり、金網で焼いて鰹節をかけて食べる。
http://www.pref.kyoto.jp/nosan/yasai/index_2.html

私はメールの結びの言葉によく「ほな、またね♪」というのを使うのだが、こちらが先輩だろうか。
思えば京都の女性歌人はようけ居たはります。私はほんの新参者。自分らしさを出さんとあきませんなぁ。

ぬばたまの丹波黒豆甘納豆買ふて亭主の帰りを待たむ
(近藤かすみ)

夏は終はつた 中津昌子

2005-09-07 13:40:23 | つれづれ
かはいさうに。手が来てわれを撫でてをり体温いたくうすき手のひら

秋のはじめのつめたき茘枝 遠ざかりつつ近づくは神なるものか

引き込まれてはならぬといへど牛乳は電子レンジに回りつづける

ねぢ込まれくる静寂に耐へてゐるまひる耳とふうすき肉片

わが声にあらねばぢつと聞いてゐる電話のなかにものを言ふ声

(中津昌子 夏は終はつた 青幻社)

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府立図書館で見つけて借りてそのままになっていた歌集を読みはじめる。
中津昌子は、あちこちで名前だけ知っていたが、歌をちゃんと読んだことはなかった。京都の人のようだ。
図書館の蔵書なので、帯もない。表紙に絵や写真もなく、なんともそっけない本だ。しかし、字体(フォント)がやわらかくそれもまた魅力的。

二首目。台風が去ったいまは、神なるものが台風であるように読めてしまう。
本来自分が中心にいるはずなのに、自分を客観視して、言葉を立ててものを言うところが魅力だと思う。「一番言いたいことを言わないのが短歌の骨法」という言葉を思い出した。
短歌としてあらわれたものの向こうに、たしかな心情を伝える歌を作りたい。

小さくて気にすることもないほどの石がわたしの靴のなかにある
(近藤かすみ)

題詠マラソン(56~60)

2005-09-06 23:45:22 | 題詠マラソン2005
056:松
絃(つるいと)をよく鳴らさむと弓弾けば松脂の香は熱おびて立つ

057:制服
制服のなき高校の放課後の理科準備室を吹き抜ける風

058:剣
色紙で折りし手裏剣金と銀あくにん倒すパワーを潜む

059:十字
椎茸に十字の切れ目入れぬことだれも気づかずチゲ鍋を食む

060:影
自らの影をさがしに旅に出る男は勝手女はエステ

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大型台風が通過中でなんとなく落ち着かない。ガレージの屋根がボコボコと鳴っている。被害に遭った人も、これからその可能性のあるところもあるのに、何も手につかない。自分が情けなくなる。