通ひ来る鶴の一生二十年出水の人はこの子らと呼ぶ
暗闇に母が待つかと錯覚すハンガーに掛かる形見のコート
おほかたはスマホと書きて或るときはスマートフォンと書かるる機械
去る人へ贈る色紙に餞の言葉は下から埋められてゆく
トラックが震災による廃材を載せて往き来す臭ひ伴ひ
待ち針の色明るきが針山に刺さるを描きしフジタの小品
売る家の各所を撮すウェブサイト父母のつかひ来し便器も載れり
遺されしノートの端に俳句あり夜寒に耐ふる吾が知らぬ母
カーテンを引きたる音に鵯は素早く離る水盤の縁
履歴書に書かるる文字と文字の間(かん)その行間を人は生き来し
(永良えり子 水湧くところ 砂子屋書房)
暗闇に母が待つかと錯覚すハンガーに掛かる形見のコート
おほかたはスマホと書きて或るときはスマートフォンと書かるる機械
去る人へ贈る色紙に餞の言葉は下から埋められてゆく
トラックが震災による廃材を載せて往き来す臭ひ伴ひ
待ち針の色明るきが針山に刺さるを描きしフジタの小品
売る家の各所を撮すウェブサイト父母のつかひ来し便器も載れり
遺されしノートの端に俳句あり夜寒に耐ふる吾が知らぬ母
カーテンを引きたる音に鵯は素早く離る水盤の縁
履歴書に書かるる文字と文字の間(かん)その行間を人は生き来し
(永良えり子 水湧くところ 砂子屋書房)