気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

水湧くところ 永良えり子 砂子屋書房

2019-11-01 23:10:14 | つれづれ
通ひ来る鶴の一生二十年出水の人はこの子らと呼ぶ

暗闇に母が待つかと錯覚すハンガーに掛かる形見のコート

おほかたはスマホと書きて或るときはスマートフォンと書かるる機械

去る人へ贈る色紙に餞の言葉は下から埋められてゆく

トラックが震災による廃材を載せて往き来す臭ひ伴ひ

待ち針の色明るきが針山に刺さるを描きしフジタの小品

売る家の各所を撮すウェブサイト父母のつかひ来し便器も載れり

遺されしノートの端に俳句あり夜寒に耐ふる吾が知らぬ母

カーテンを引きたる音に鵯は素早く離る水盤の縁

履歴書に書かるる文字と文字の間(かん)その行間を人は生き来し

(永良えり子 水湧くところ 砂子屋書房)