気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

椿は咲きて 筒井早苗 青磁社

2019-10-18 00:37:00 | つれづれ
傘寿とはめでたきことか運ばるる大鯛の目のすずしき睨み

魚(いを)の旬野菜の旬など思ひゐてやがてさびしも人間の旬

日光に月光菩薩を脇侍とし薬師如来に老いはきませず

ゆたかなる若葉青葉の透くひかり森の精気が臓腑を洗ふ

短歌なくて何が残らむ不器用で整理下手なるこのわたくしに

覚悟などあるもあらぬも天命の尽くる日は来む椿は咲きて

方言の生き生きとして若者は灯油タンクを満たしてをりぬ

踏ん張るもこのあたりまで流れきて風の随(まにま)にゆく小さき蝶

切れ切れの夢より醒めてまた眠る生とも死とも分かずおもしろ

もしもなど空しかりける言の葉を散らしつくして一木裸身

(筒井早苗 椿は咲きて 青磁社)