傘寿とはめでたきことか運ばるる大鯛の目のすずしき睨み
魚(いを)の旬野菜の旬など思ひゐてやがてさびしも人間の旬
日光に月光菩薩を脇侍とし薬師如来に老いはきませず
ゆたかなる若葉青葉の透くひかり森の精気が臓腑を洗ふ
短歌なくて何が残らむ不器用で整理下手なるこのわたくしに
覚悟などあるもあらぬも天命の尽くる日は来む椿は咲きて
方言の生き生きとして若者は灯油タンクを満たしてをりぬ
踏ん張るもこのあたりまで流れきて風の随(まにま)にゆく小さき蝶
切れ切れの夢より醒めてまた眠る生とも死とも分かずおもしろ
もしもなど空しかりける言の葉を散らしつくして一木裸身
(筒井早苗 椿は咲きて 青磁社)
魚(いを)の旬野菜の旬など思ひゐてやがてさびしも人間の旬
日光に月光菩薩を脇侍とし薬師如来に老いはきませず
ゆたかなる若葉青葉の透くひかり森の精気が臓腑を洗ふ
短歌なくて何が残らむ不器用で整理下手なるこのわたくしに
覚悟などあるもあらぬも天命の尽くる日は来む椿は咲きて
方言の生き生きとして若者は灯油タンクを満たしてをりぬ
踏ん張るもこのあたりまで流れきて風の随(まにま)にゆく小さき蝶
切れ切れの夢より醒めてまた眠る生とも死とも分かずおもしろ
もしもなど空しかりける言の葉を散らしつくして一木裸身
(筒井早苗 椿は咲きて 青磁社)