気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

天気図 市野ヒロ子 いりの舎

2019-03-14 18:40:52 | つれづれ
みどり透く羽をたためるかげろふを掃除機に吸ふ朝の畳に

昼過ぎの帰り来たりしうつしみは泥のごとくに畳に沈む

葱畑は一畝ごとに立つ札のそれぞれにして「森さん」「久保さん」

夜の空にほの明りしてひとすぢの階(きざはし)は伸ぶ月の高みへ

痩せはてし牛は四肢をば踏んばれり処分場へと運ばれむとき

姫沙羅の葉むらのそよぎみづみづしみどり児ねむる窓の曇りに

昼すぎを物縫ふ手もと暗くなり雨降りいでぬ窓に聞こえ来

しろじろと月のひかりを屋根に置く家並つづく道をまがれば

「武蔵」とぞ名札かかれる犬小屋の見えて塵取りなどを入れたり

店あかり照りつらなれる路地にしてあら草繁るくらき一画

(市野ヒロ子 天気図 いりの舎)